第三十一話 魔力測定
七歳になる年。
王国の子どもたちは、教会で魔力測定を受ける。
魔力量。
属性。
そして将来の適性を調べるための、大切な儀式だ。
貴族も平民も関係ない。
この日だけは、同じ順番で名前を呼ばれる。
「緊張します……」
教会へ向かう馬車の中で、セシリアが小さく呟いた。
「そんなに?」
「はい。もし魔力が少なかったら、お父さんとお母さんをがっかりさせてしまうかもしれません」
「大丈夫」
リリアーナは首を横に振る。
「結果がどうでも、セシリアはセシリア」
その一言に、セシリアはほっと笑った。
「ありがとうございます」
「リリアーナ」
レオンハルトが口を開く。
「お前は緊張しないのか」
「しない」
「なぜだ」
「創造魔法が使えるから」
レオンハルトは苦笑した。
「……確かにな」
◇ ◇ ◇
教会には、すでに多くの子どもたちが集まっていた。
神官が一人ずつ名前を呼んでいく。
「リリアーナ・ローゼンベルク様」
「はい」
私は祭壇の前へ進み、水晶へ手を置いた。
次の瞬間。
水晶がまばゆい光を放つ。
「なっ……!」
神官たちが息を呑んだ。
白い光は天井近くまで伸び、教会全体を優しく照らしている。
「これは……」
「全属性が反応している……?」
「いや、そのような記録は……」
神官たちは顔を見合わせた。
誰も見たことがない反応だった。
「測定不能……」
年配の神官が静かに呟く。
「後日、改めて王宮へご報告いたします」
「分かりました」
私は一礼して席へ戻る。
「壊れた?」
小声で尋ねると、レオンハルトは肩をすくめた。
「壊れてはいないだろう」
「じゃあ?」
「お前が規格外なんだ」
「そう」
よく分からないけれど、そういうことらしい。
「次。セシリア・エヴァンズ」
「は、はい!」
セシリアは少し緊張した様子で前へ出た。
深呼吸を一つ。
そして、水晶へそっと手を置く。
ふわり、と柔らかな金色の光が広がる。
「光属性……!」
神官の一人が目を見開いた。
さらに光は強さを増し、水晶全体を包み込む。
「この魔力量は……!」
「七歳とは思えない……」
神官たちの表情が変わる。
「素晴らしい才能です」
年配の神官が穏やかに微笑んだ。
「王立学園への推薦対象となる可能性があります」
「え……?」
セシリアは目を丸くした。
「わ、私がですか?」
「はい」
神官は優しく頷く。
「努力を続ければ、きっと素晴らしい魔導士になれるでしょう」
セシリアは何度も頭を下げた。
「ありがとうございます!」
席へ戻ってくると、まだ信じられないという顔をしている。
「リリアーナ様……」
「おめでとう」
「本当に、推薦されるんでしょうか……」
「される」
今度はレオンハルトが答えた。
「その力は本物だ」
「でも、私……」
セシリアは戸惑っている。
村で育った自分が、王立学園へ。
まだ実感が湧かないのだろう。
レオンハルトは静かにリリアーナを見た。
「ゲーム通りだ」
「うん」
リリアーナも小さく頷く。
「でも、一つだけ違う」
「ああ」
レオンハルトも頷いた。
「ゲームでは、この時点でお前たちはまだ出会っていなかった」
今は違う。
リリアーナとセシリアは友達だ。
それだけで。
未来は、確かに変わり始めていた。




