第二十九話 世界に一つだけの贈り物
ある日の午後。
「リリアーナ様!」
セシリアが少し慌てた様子で部屋へ飛び込んできた。
「どうしたの?」
「お願いがあります!」
いつもより真剣な表情だ。
「お母様のお誕生日が近いんです」
「うん」
「何か贈り物をしたいんですけど……何を贈れば喜んでくださるのか分からなくて」
私は少し考えた。
前世でも、誕生日にプレゼントを贈る人は多かった。
高価な物も嬉しい。
でも。
気持ちがこもった物も嬉しい。
「一緒に作ろう」
「え?」
「お母様へのプレゼント」
セシリアが目を丸くした。
「私でも作れますか?」
「うん」
私は机に紙を広げる。
「まずは何を作るか考えよう」
◇ ◇ ◇
「これ!」
セシリアが描いたのは、小さなアクセサリーケースだった。
「お母様、指輪を大切にしているんです」
「いいね」
私は絵を見ながら頷く。
「じゃあ、作ってみる」
魔力を流す。
白い光が集まり、木が少しずつ形になっていく。
だが。
「……あ」
途中で光が揺らいだ。
角が少し歪む。
蓋もぴったり閉まらない。
「失敗」
私は小さく息を吐いた。
「創造魔法って失敗するんですか?」
「するよ」
私は木箱を手に取る。
「頭の中で完璧にイメージできないと上手くいかない」
「そうなんですね……」
「もう一回作る」
そう言って魔力を練ろうとした、その時だった。
「待ってください!」
セシリアが慌てて木箱を抱き寄せた。
「これ、いただいてもいいですか?」
「これ?」
「はい」
「失敗作だけど」
「でも」
セシリアは木箱を優しく撫でる。
「リリアーナ様と一緒に考えて、一緒に作った最初の作品です。」
「……」
「私、大切にします」
私は少し首を傾げた。
失敗した物なのに。
「嬉しいの?」
「もちろんです!」
迷いのない笑顔だった。
「じゃあ、これはセシリアに」
「ありがとうございます!」
セシリアは本当に嬉しそうだった。
その様子を見ていたレオンハルトが口を開く。
「では、本番用は私も手伝おう」
「レオンも?」
「ああ」
レオンハルトは設計図を手に取る。
「蝶番の位置を少し変えた方が蓋が閉まりやすい」
「なるほど」
「それと、この厚さなら強度が足りない」
淡々と指摘していく。
私は設計図を書き直した。
「これでどう?」
「問題ない」
もう一度、魔力を流す。
白い光が部屋を包み込む。
今度は途中で揺らぐことなく、綺麗な木箱が完成した。
蓋もぴったり閉まる。
花の彫刻も綺麗に浮かび上がっていた。
「わぁ……!」
セシリアが目を輝かせる。
「すごく素敵です!」
「今度は成功」
私がそう言うと、セシリアは完成した木箱を大切そうに抱きしめた。
「お母様、きっと喜んでくださいます」
その笑顔を見て、私も自然と笑っていた。
創造魔法は、何でも生み出すための魔法じゃない。
誰かの笑顔を生み出せた時が、一番嬉しい魔法なのかもしれない。




