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婚約破棄される予定でしたが、王太子殿下が乙女ゲームをプレイした結果、なぜか溺愛されています  作者: S@Y@


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20/61

第二十話 事情聴取(二度目の邂逅)


 私は再びローゼンベルク公爵家を訪れていた。


 理由は一つ。


 確認だ。


 あの少女――リリアーナ・ローゼンベルクに、もう一度直接話を聞く必要があった。


「お久しぶりです、陛下」


 庭園で待っていたローゼンベルク公爵が頭を下げる。


「ええ」


 私は軽く頷く。


 視線の先には、木陰のテーブル。


 そして。


 案の定。


 少女はいた。


 寝ている。


 まるでそこが定位置であるかのように、自然に。


「……相変わらずだな」


 思わず呟くと、横にいた息子が即答した。


「はい」


 レオンハルトは当然のように頷く。


 その隣で、本を読みながら少女を見守っている。


 以前とまったく同じ光景だった。


「起こすぞ」


 私が言うと、レオンハルトが首を振った。


「いえ、そのままで」


「なぜだ」


「幸せそうなので」


 理由になっていない。


 だが、これもいつものことだ。


 私はため息をついた。


 その時。


「……ん」


 少女が目を開けた。


 紫の瞳がゆっくりとこちらを向く。


 数秒の沈黙。


「あ」


 思い出したように声が出る。


「レオンのお父さん」


「そうだ」


 私は短く答えた。


 以前と同じやり取り。


 だが、以前よりも慣れている自分がいる。


「リリアーナ嬢」


「はい」


 少女は起き上がり、軽く頭を下げた。


 礼儀は悪くない。


 ただ、緊張という概念が抜け落ちている。


「前にも話は聞いたが」


 私は本題に入った。


「改めて確認する」


「はい」


「君は“前世”の記憶があると言ったな」


「はい」


 即答だった。


 迷いがない。


「それはつまり、今とは別の世界の記憶ということか」


「そうです」


 淡々としている。


 まるで天気の話でもしているようだ。


「その世界には魔法がなかった」


「はい」


「そして“ゲーム”という概念があった」


「乙女ゲームです」


「……それが、今の未来に影響していると」


「影響というか、そのままだとこうなる、って感じです」


 私は額に指を当てた。


 何度聞いても整理が難しい。


 だが、重要なのはそこではない。


「つまり」


 私はゆっくり言葉を選ぶ。


「レオンハルトは、その“未来”を回避しようとしている」


「たぶんそうです」


 少女はあっさり頷いた。


「婚約破棄とか嫌なんだと思います」


 私は隣の息子を見た。


 レオンハルトは無言で視線を逸らした。


 否定はしないらしい。


「……なるほどな」


 私は息を吐いた。


 理解したわけではない。


 だが、構造は分かった。


 息子はこの少女を基準に未来を組み直している。


 そして少女は、それを当然のように受け入れている。


「一つ聞く」


 私は少女に向き直った。


「君は、それをどう思っている」


「何がですか」


「息子の行動だ」


 少女は少し考えた。


 そして。


「変だけど」


 即答した。


「別に嫌じゃないです」


 庭園が静かになる。


 ローゼンベルク公爵が遠い目をした。


 私は小さく息を吐いた。


「そうか」


 それで十分だった。


 少なくとも拒絶ではない。


 それが全てだ。


「レオンハルト」


「はい」


「好きにやれ」


 私はそう言った。


 息子は一瞬固まった。


 そして、深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


 その声は珍しく、少しだけ揺れていた。


 私は立ち上がる。


 庭園を見渡す。


 木陰で昼寝をする少女。


 その隣で、それを守るように座る息子。


 そして、その光景を当たり前のものとして受け入れている公爵家。


「……まあいい」


 私は小さく呟いた。


「国の形が少し変わる程度だ」


 問題ない。


 たぶん。

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