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婚約破棄される予定でしたが、王太子殿下が乙女ゲームをプレイした結果、なぜか溺愛されています  作者: S@Y@


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第十九話 王妃の確認(王妃視点)


 私には息子がいる。


 可愛い息子だ。


 顔も良い。


 頭も良い。


 優秀だ。


 ただし。


 少々。


 いや。


 かなり面倒な性格をしている。


「あなた」


 私は夫を見た。


「どう思いますか」


「重症だな」


 即答だった。


 私もそう思う。


 夫から聞いた話は衝撃的だった。


 婚約者候補の令嬢の昼寝を見守る王太子。


 令嬢のために研究を始める王太子。


 令嬢に「友達」と言われて落ち込む王太子。


 全部。


 私の息子である。


「確認します」


 私は決めた。


 母として。


 確認しなければならない。


 そして。


 一時間後。


 私はローゼンベルク公爵家の庭園にいた。


「お久しぶりです、王妃殿下」


 ローゼンベルク公爵が頭を下げる。


「ええ」


 私は微笑んだ。


 そして。


 見つけた。


 木陰。


 テーブル。


 お茶。


 そして。


 寝ている少女。


「……」


 本当に寝ている。


 しかも。


 その隣。


 私の息子が座っていた。


 本を読んでいる。


「レオンハルト」


「母上」


 平然としている。


「何をしているの?」


「リリアーナを見守っています」


「なぜ?」


「気持ちよさそうだからです」


 夫と同じ答えだった。


 私は頭痛を覚えた。


 その時。


「……ん」


 少女が目を開けた。


 綺麗な紫の瞳。


 寝起きらしく、ぼんやりしている。


「おはよう」


 レオンハルトが言った。


「おはよう」


 少女が答える。


 自然だ。


 あまりにも自然だ。


 三歳児同士の会話とは思えない。


「リリアーナ」


「なに」


「母上だ」


 少女が私を見た。


 じっと見つめる。


 失礼な感じはしない。


 純粋に考えている顔だった。


「あ」


 何かを思い出したらしい。


「レオンのお母さん」


 またレオン。


 私は息子を見た。


 顔が少し赤い。


 なぜだ。


「はい」


 私は答えた。


「初めまして。リリアーナ嬢」


「初めまして」


 少女はぺこりと頭を下げた。


 綺麗なお辞儀だった。


 少し安心する。


「仲が良いそうね」


「うん」


 即答だった。


「友達だから」


 私は息子を見た。


 息子は遠い目をした。


 なるほど。


 そういうことか。


「レオンハルトはどんなお友達なの?」


 私は聞いてみた。


 少女は真剣に考え始める。


「優しい」


「そう」


「頭いい」


「ええ」


「いっぱい来る」


「……そうね」


「変」


 私は吹き出しかけた。


 息子は真顔だった。


「どこが変なの?」


「未来改変する」


 私は瞬きをした。


「……未来改変?」


「うん」


「それは何かしら」


 少女は少し考えた。


「未来を変えるんだって」


「未来を?」


「婚約破棄されないように」


 私は固まった。


 ゆっくりと。


 息子を見る。


 レオンハルトは視線を逸らした。


「……レオンハルト?」


「説明は後ほど」


 真顔だった。


 私は頭を押さえた。


 どうやら。


 想像していたより。


 状況は複雑らしい。


「他には?」


 私は続きを促した。


 少女は少し考える。


「寝ない」


 そうね。


「私のために研究する」


 そうね。


「あと」


 また考える。


「たまに変な顔する」


 私は息子を見た。


 息子は顔を逸らした。


「どんな顔?」


「嬉しそう」


 沈黙。


 長い沈黙。


 私は理解した。


 いや。


 前から理解していた。


 だが。


 改めて確信した。


 私の息子は。


 完全に。


 恋をしている。


 そして。


 少女は。


 全く気付いていない。


「……レオンハルト」


「何でしょう」


 私は優しく微笑んだ。


「頑張りなさい」


 息子は一瞬固まった。


 そして。


 小さく頷いた。


「ああ」


 その返事を聞いて。


 私は思った。


 この子達の未来は。


 案外。


 悪くないのかもしれない、と。

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