第十八話 初対面(国王視点)
私は待った。
十分。
二十分。
三十分。
少女は起きなかった。
「……」
「……」
私。
レオンハルト。
ローゼンベルク公爵。
三人で見守っている。
何をしているのだろう。
「いつもこうなのか」
私は小声で聞いた。
「はい」
ローゼンベルク公爵が遠い目をした。
「最近は二時間ほどで起きます」
「最近は?」
「以前は四時間ほど」
長い。
非常に長い。
私は息子を見た。
レオンハルトは平然としていた。
「待つのか?」
「ああ」
「ずっと?」
「ああ」
何が「ああ」だ。
私は頭が痛くなってきた。
その時だった。
「……ん」
少女が動いた。
ゆっくりと目を開ける。
紫色の瞳。
綺麗な色だ。
そして。
少女は私を見た。
見て。
考えて。
「……誰?」
そう聞いた。
護衛達が固まった。
ローゼンベルク公爵が顔を覆った。
私は瞬きをした。
普通ならありえない。
国王を見て、「誰?」はありえない。
だが。
レオンハルトは嬉しそうだった。
「リリアーナ」
「なに」
「父上だ」
「ああ」
少女は頷いた。
「レオンのお父さん」
レオン。
私は息子を見た。
レオンハルトも固まっていた。
「……レオン?」
「あ」
少女も固まった。
「ごめん」
「いや」
レオンハルトが顔を赤くしていた。
なぜだ。
だが。
「気にしないで」
少女はそう言った。
「だって長いし」
「……長い?」
「レオンハルト」
確かに長い。
私は納得した。
「そうか」
「うん」
少女も頷いた。
不思議な子だ。
王太子に愛称をつける人間など見たことがない。
だが。
嫌味がない。
打算もない。
本当に。
長いから略しただけなのだろう。
「リリアーナ嬢」
「はい」
「息子とは仲が良いようだな」
少女は少し考えた。
そして。
「うん」
頷いた。
「友達」
私は息子を見た。
息子は固まっていた。
「……友達」
小さく呟いている。
どうした。
「レオンは優しいから」
少女は続けた。
「毎日来てくれるし」
「そうか」
「でも」
少女は首を傾げた。
「たまに変」
私は吹き出しそうになった。
ローゼンベルク公爵は咳払いをした。
レオンハルトは真剣な顔だった。
「どこが変だ」
「いっぱい」
即答だった。
強い。
「急に難しい紙を書くし」
「未来対策だ」
「寝ないし」
「必要だからだ」
「手も繋ぐし」
沈黙。
私は息子を見た。
息子は固まっていた。
「……手?」
私が聞く。
「昨日」
少女が答えた。
「なんか繋いでた」
レオンハルトの顔が真っ赤になった。
「そ、それは」
「仲良しだから?」
少女が聞く。
「……ああ」
息子は敗北した顔で頷いた。
私は理解した。
いや。
理解はしていない。
だが。
一つだけ確信した。
この婚約。
たぶん。
いや。
確実に。
破談にはならない。
なぜなら。
息子が。
重すぎるからだ。




