第十五話 なぜか手を繋いでいた
目が覚めた。
朝だった。
鳥が鳴いている。
気持ちのいい朝だ。
私はぼんやりと天井を見た。
そして。
何かが重いことに気付いた。
「……?」
視線を下げる。
手。
私の手。
誰かと繋がっている。
私は瞬きをした。
もう一度見た。
やっぱり繋がっている。
「……?」
隣を見る。
レオンハルトがいた。
寝ていた。
しかも。
手を握ったまま。
「……」
私は考えた。
なぜ。
どうして。
いつから。
何も分からない。
でも。
まあいいか。
レオンハルトは疲れていた。
寝ているなら起こさない方がいい。
私は再び目を閉じようとした。
「お嬢様」
声がした。
マリーだった。
いつの間にか部屋に入ってきている。
そして。
固まっていた。
「……」
「……」
沈黙。
「どうしたの」
私が聞くと。
マリーは震える声で答えた。
「い、いえ……」
「うん」
「仲がよろしいのですね……」
「そう?」
私は繋がれた手を見る。
友達だからだろう。
たぶん。
マリーはなぜか壁を向いた。
「朝食をお持ちします」
「ありがとう」
マリーは逃げるように部屋を出ていった。
変な人だ。
私はそう思った。
その時。
「……リリアーナ」
レオンハルトが目を覚ました。
「おはよう」
「ああ……おはよう」
彼は少しぼんやりしていた。
そして。
私達の手を見た。
固まった。
「……」
「……」
長い沈黙。
「どうしたの」
私が聞く。
レオンハルトはゆっくりと瞬きをした。
「なぜ」
「うん」
「手を繋いでいる」
「分からない」
正直に答えた。
本当に分からない。
レオンハルトは黙った。
何かを考えている顔だ。
しばらくして。
「……そうか」
なぜか納得した。
何を納得したのだろう。
「離す?」
私は聞いた。
すると。
レオンハルトは勢いよく首を横に振った。
「いや」
「そう」
ならいいか。
私は欠伸をした。
眠い。
まだ眠い。
「リリアーナ」
「なに」
「昨日のことは覚えているか」
「昨日?」
私は考えた。
レオンハルトが来た。
疲れていた。
一緒に寝た。
終わり。
「覚えてる」
「……そうか」
レオンハルトは少しだけ残念そうだった。
なぜだろう。
「何かあった?」
「いや」
彼は首を横に振った。
「何もない」
「そう」
なら問題ない。
私は再び欠伸をした。
すると。
レオンハルトが私の手を少し強く握った。
「……?」
「リリアーナ」
「なに」
「私は今日から毎日来る」
「え」
「未来改変のためだ」
真剣な顔だった。
私は少し考えた。
毎日。
毎日か。
「大変そう」
「問題ない」
「そう」
ならいいか。
私は頷いた。
レオンハルトは少しだけ笑った。
その笑顔を見て。
私は思った。
やっぱり。
この人は変な人だ。
そして。
レオンハルトは思った。
今朝の寝言のことは。
一生秘密にしよう、と。




