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婚約破棄される予定でしたが、王太子殿下が乙女ゲームをプレイした結果、なぜか溺愛されています  作者: S@Y@


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第十三話 最近のレオンハルト


 最近。


 レオンハルトの様子がおかしい。


 いや。


 正確には。


 来ない。


 今までは週に二、三回はローゼンベルク公爵家に来ていた。


 多い。


 とても多い。


 しかし。


 今週は一度も来ていなかった。


「お嬢様」


「なに」


「本日も王太子殿下はお見えにならないようです」


「そう」


 私は本をめくった。


 別に気にしていない。


 たぶん。


 王太子なのだから忙しいのだろう。


 むしろ今までが暇すぎた。


 そう考えるのが自然だ。


「忙しいのかな」


「そうかもしれませんね」


 マリーが微笑む。


 私は頷いた。


 それで納得した。


 ……はずだった。


 しかし。


 本に集中できない。


 一ページ読んだ。


 内容が頭に入らない。


 もう一ページ読んだ。


 やっぱり入らない。


 私は本を閉じた。


「面白くない」


「その本がですか?」


「違う」


 そうじゃない。


 理由は分からない。


 ただ。


 なんとなく。


 静かだった。


「お昼寝する」


「はい」


 マリーが毛布を用意する。


 私はベッドへ潜り込んだ。


 寝れば忘れる。


 だいたいのことは寝れば解決する。


 私はそう信じている。


 目を閉じる。


 眠くなってきた。


 その時だった。


「お嬢様!」


 扉が勢いよく開いた。


 使用人が飛び込んでくる。


「どうしたの」


「王太子殿下が!」


 私は目を開けた。


「来た?」


「はい!」


 私は起き上がった。


 なぜか少しだけ安心した。


 いや。


 安心する理由はない。


 たぶん。


 そんなことを考えている間に。


「リリアーナ!」


 聞き慣れた声が響いた。


 次の瞬間。


 レオンハルトが部屋に飛び込んできた。


「……どうしたの」


 私は思わず聞いた。


 変だった。


 明らかに。


 目の下に隈がある。


 髪も少し乱れている。


 顔色も良くない。


「問題ない」


「あるよ」


「ない」


 ある。


 絶対にある。


 レオンハルトはふらふらと椅子に座った。


 そして。


 大量の紙を机の上に置いた。


 どさり。


「なにそれ」


「未来対策」


「へえ」


 私は一枚取った。


【セレナ・ルミエール対策】


 意味が分からない。


 次。


【学園内勢力予測】


 もっと分からない。


 次。


【婚約破棄阻止計画】


「……何してるの?」


 私は素直に聞いた。


 レオンハルトは真剣な顔をした。


「未来改変だ」


「ああ」


 まだやっていたらしい。


 真面目である。


「寝てない?」


「三日ほど」


「三日?」


「ああ」


 問題しかなかった。


 私は少し考えた。


 そして。


「寝る?」


「……何?」


「眠いんでしょ」


「だが」


「私も寝る」


 なら問題ない。


 私はそう判断した。


 しかし。


 レオンハルトはなぜか固まった。


「一緒に?」


「うん」


「……」


「嫌?」


「嫌ではない!」


 大きな声だった。


 私は少し驚いた。


 怒られたのかと思った。


「じゃあ寝よう」


 私はベッドへ戻った。


 毛布を被る。


 柔らかい。


 最高だ。


 隣を見る。


 レオンハルトがまだ立っていた。


「寝ないの?」


「……寝る」


 なぜか真面目な顔だった。


 そして。


 恐る恐るベッドの端に腰を下ろす。


 広いベッドだ。


 二人でも余裕である。


「おやすみ」


「あ、ああ……」


 私は目を閉じた。


 眠い。


 とても眠い。


 最後に見えたのは。


 なぜか顔を真っ赤にしたレオンハルトだった。


 変な人だ。


 本当に。


 そう思いながら。


 私は眠った。


 その後。


 レオンハルトが三十分ほど身動き一つできなかったことを。


 私は知らない。

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