第8話 ここは採用する人種の幅が広いな
さらに3日が過ぎた。今日は、事務員としての契約と説明がギルドハウスで行われる。
俺は布を巻いた地杖を背負って、向かった。
ギルドハウスに来ている魔術師から、修理にお勧めの素材を聞くためだ。こっちに来てからの修理は初なので、経験者の意見を参考にさせてもらおうと思っている。
「クシュルさんですね。どうぞこちらに」
クエストカウンターで受付をしている羊の獣人の女性に手紙を見せると、俺を円卓会議室へと案内してくれた。
野外で魔物の大量発生やドラゴンの出現の際、勢力を上げて指揮を執る為に使われる作戦室だ。ギルド職員にとっては厳かな場所ではなく、定例会で日常的に使われる部屋らしい。
「マスター。クシュルさんがいらっしゃいました」
「そうですか。入ってください」
相変わらずの淡々とした声が耳に届いた。
「失礼します」
恐る恐る入ると、大きな円形の机を中心に椅子が並ぶ中、ラシエラさんと2人の女性がいる。彼女達の前には冊子がそれぞれ置かれている。
「彼女達の隣の席へ座ってください」
「は、はい」
てっきり魔物の解体には男性が採用されると思っていたけど、女性か。心の中で驚きながらも俺は冊子が置かれている席へ座った。
1人は足長族。クリーム色の髪を丸くまとめ、赤いリボンで結んでいる。赤茶色の丸い瞳に、緑のワンピースには花の刺繍があしらわれ、かなり上質な素材が使われているのが見て取れる。
小柄と言うより、幼い。前にいたパーティの女性陣よりもほんの少し下、14歳くらいかな。
もう1人は……なんだろう? 初めて見る種族だ。
俺よりも、いや街で暮らす男達よりも遥かに身長が高い。多分、2mはある。
肌は、全体的にくすんだピンク色のような独特な色合いだ。体つきは全体的にがっしりとしていて、丸太の様な腕はワーフたちと引けを取らない。服は毛皮と布を合わせた様な民族衣装だ。
短く切られた黒に近い焦げ茶色の髪に、黒い瞳。先がやや尖った耳。額から10センチくらいの二つの黒い角が生え、顔立ちから若そうに見える。でもエルフに似た長命種かもしれないから、実年齢は測れないな。
女性をじろじろ見るのは失礼だから、この辺りで辞めたいが……あの14歳くらいの子、雇用して良いのか?
「クシュルさん。どうかされましたか?」
俺の視界を遮る様に、ラシエラさんが冊子を差し出した。
「えと、足長の成人年齢っていつだったかと思って……すいません」
俺はそれを受け取り、反省しながらラシエラさんに素直に答える。
「レムアさんが気になったのですね。彼女は隣町の冒険者ギルドで活躍する鑑定士の御令嬢です。こちらで修行されます」
「そう言うことでしたか! 失礼しました」
俺はラシエラさんとレムアさんに改めて謝罪をする。
鑑定士は経験者優先、要望があれば未成年も可能だと求人の紙に書かれていた。レムアさんは、どちらに解釈しても良い人材だな。
職種によって成人前から修行するのは、どの種族も同じようだ。
「折角の同期ですから、自己紹介をしましょうか」
ラシエラさんはそう言って、レムアさんから自己紹介をする様に促される。
「えと、レムアです。先程ギルドマスターが言った通り、隣町アリエに鑑定士を務める父がいます。家を継ぐために今回応募して、採用されました。今後は正職員になるために頑張ります。宜しくお願いします」
次は俺だ。
「俺は、クシュルと申します。アルバイトからギルドの正職員になる予定です。見ての通りのエルフです。事務を担当します。こちらの大陸に来て半年とちょっとで、世間知らずではありますが、よろしくお願いします」
そして最後の1人。
「……メディギス。種族はオーガ。解体業に就いた。沢山覚えていく予定なので、よろしく」
少し発音に癖があり、たどたどしい感じがする。他人種の集まる土地に来て日が浅く、まだ共通語を話すのに慣れていない様子だ。俺も国を出た当初は似た様なものだったので、〈やっぱりそうだよな!〉とちょっと親近感が湧いた。
それにしても、オーガか。その名前、良いのか??




