第9話 世界は変化しているな
ハーフフットやエルフなどの種族名は世界共通語による訳だ。実際の母国語による呼び方は違う。発音のし難さや、別の意味合いで既に共通語にある等、様々な理由で今の名前に落ち着いたと歴史で学んだ。
問題は。オーガは魔物でも使われる名前であることだ。
魔物のオーガは亜人種に分類され、俺達の様に二足歩行をする。肌の色は赤みがかった灰色、髪は黒が多いとされる。身長は平均2から3m。総じて筋肉が発達し、腕も足も丸太のように太い。骨格は類人猿に近い。性格の傾向は凶暴で残忍であり、体格に見合う大食漢。俺達人間種も食べてしまう肉食でもある。腰布を巻く、戦利品を紐で結び首飾りにする等の文化を持つが総じて知能は低く、会話は不可能。こん棒などの鈍器を扱い、種類によっては群れを作るので、戦闘の際には注意が必要だ。
……思ったより共通点、あるな?
口伝で語られる中で、混ざったか?
ともかく、メディギスさんは魔物側ではない。明らかに人間種に属する知性がある。角も、魔物側には無い特徴だ。清潔感があり、服も文化的な刺繍が施されているし、腰に携えられた短刀の鞘は職人の技が光っている。
なにか歴史的な背景がありそうだな。気になるが、訊いては失礼かもしれないし……
「メディギスさんの人種は、近年〈人間種〉として認定されたばかりです。それまでは魔物と間違われる事が多く、迫害をされていました。しかし、極東の島に住む鬼人族の国が開国されると共に、認識が改められました」
「鬼人族と、共通点があったのですか?」
ラシエラさんの説明に、俺は思わず食いついた。
エルフの国って変化が緩やかだから、二転三転とどんどん変わる話は好きだ。
「はい。彼らは額に角が生え、中にはメディギスさんと同じ大柄な方もいたと報告されています。その共通点から再調査が開始され、大昔に島から大陸に渡った鬼人を祖としていると判明し、認定に至りました」
世界に数本しかないとされる魔力を産み、生命を育む世界樹。その内の一本を中心に形成された樹海の列島が〈極東の島〉だ。独自の生態系と理があり、世界各地にいる足長族すら住むことが困難な高濃度の魔力に満ちた土地だ。
そこに唯一適応したのが、角の生えた人間種〈鬼人族〉だ。
確か開国は10年くらい前だ。そこからの調査で判明し認定に至るなんて、凄い速さだ。
有力者達が、世界樹の恩恵を受けようと鬼人族に良い顔をしたかったのか?
まぁ、迫害から一転して、人種認定に至れるのはとても良い事だよな。
「今後はオーガの名も変わるでしょう。メディギスさんは、新たな種族として共生する第一歩を歩みだした方です。ギルドの一員として、共に頑張っていきましょう」
「よろしく、お願いします」
ラシエラさんの言葉に合わせて、メディギスさんは改めて挨拶をする。
この感じからして、後援をしているみたいだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
俺とレムアさんも改めて挨拶をした。
2人ともそれぞれに事情があり、志も高い。訳あって冒険者からの転職だが、なんだか恥ずかしくなってきた……
いや、真面目に誠実に勤めれば良いんだ!
こんな所で気落ちしてる場合ではないぞ、俺!




