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田舎者のエルフは冒険者ギルドに就職します!  作者: 片海 鏡


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第5話 世間知らずと地味に痛感する

「クシュルさんは、星3ランクに昇格したばかりですね。パーティをつい先日脱退されていますが、今後も冒険者として活躍できるとお見受けします。なぜ、今回の求人に応募したのでしょうか?」

「安定した職場で、協力して働けると思ったからです。あと給料が高くて、保証が充実しているのが魅力的だと思いまして……」


 きらきらした夢を見る若者って感じの理由は無いので、正直に話した。


「協力と仰いましたが、パーティの脱退理由にはメンバーとの不和が生じたからですか?」


 一番聞かれたくないけど、脱退して直ぐに応募してきたら気になるよな。ここは正直に話そう。


「俺に魔術の扱いが悪く、エルフらしくないから態度を改めろと言われたんです」

 思い出しつつ、俺は説明をする。


「最初の頃は協力し合えていたのですが、ずっと魔術頼りになって行きまして……そのうち雑用とか色々と押し付けて来ました。今思えば、何処かの段階でちゃんと話し合って解決すべきでした。俺はあいつらを甘やかしてしまったんです」

「子供扱いしてしまった、と自覚があるのですね」

「成人年齢を考えれば同等だったのに、つい……」


 人類の中でもエルフは長命だ。寿命は700歳くらいだ。心身の成長も他の人種に比べて遅く、定められた成人年齢は80歳だ。足長やハーフフットの成人年齢を聞くと〈赤ちゃん!?〉〈幼児!?〉〈子供かよ!!〉と驚いてしまう位に差がある。

 俺も例外には洩れず、彼らを大人扱いするべきなのに、世話を焼いてしまった。


「その点は俺も反省するべき点です。ですが、彼らはやってはいけない方向にまで行ってしまいました。五等分すべき報酬を俺だけ若干少なくしたり、わざとローブを踏んだり、杖を曲げる悪戯をされました。リーダーはパーティの費用から魔力回復のポーションを買うのも渋りましたし……パーティの皆にとやかく言われた際、脱退した方が身のためと思い、行動に移しました」


 怒ってはいたが、最終的に諦めが上回った。脱退すると宣言して手続きを行った事に、後悔は全くない。脱退してから二日間は〈食事ちゃんと食べてるか〉〈新しい魔術師見つけられたのか〉と心配したが、今は完全に無くなった。荷が下りたとすら思うほどだ。


「脱退理由を教えてくださり、ありがとうございます。自分を省み、限界を自覚できるのはとても良い事だと思います」

「は、はい」


 関係改善に取り組むべきだ。パーティの年長者が責任を放棄するなんて。話し合えば分かってくれる。

 そんな言葉が出て来るのでは、と身構えていたが少し拍子抜けした。

 こういう話はギルドマスターからすれば日常茶飯事なのだろう。ちゃんと聞き入れてくれているが、ラシエラさんは俺の話に感情移入をしていないのが分かった。

 ラシエラさんに齎された情報は俺だけだ。それだけでパーティの問題を判断できないから、中立の姿勢を取っている。

 第三者の立場から、親身になっているが境界線を越えていない。絶妙なバランスだ。


「クシュルさんからは、何か質問は有りますか?」


 質疑応答が続き、ラシエラさんは俺からの疑問に答える姿勢を見せる。


「質問……あっ、保障の中で気になったのですが、産休育休制度の育休ってなんですか?」


 表情を一切変えないラシエラさんは紙をローテーブルの上に置いた。

 凄い手厚い!! と思ったが、いまいち分からなかったのがこの制度だ。


 俺はまだ独身だけど、エルフの少子化問題を学校で度々聞いていたので、自然と興味が湧いていたんだ。


 産休の方は、多分妊娠から出産後の休みって意味だ。

 それの重要性は、若い俺でも良く知ってる。

 俺がまだ子供だった50歳の時、近所の姉ちゃんへ出産祝いを持って行ったことがある。疲れ切った姉ちゃんは、俺に〈クシュル君は分かる男になるんだよ……〉と妊娠と出産後について教えてくれた。今思えば、愚痴であり弱音だった。すすり泣きしながら言う姿に、当時悪ガキだった俺は〈旦那は何処だ!!〉と村を走り回って、絶賛浮気中の姉ちゃんの旦那を発見してボッコボコに……話がズレた。

 ともかく、妊娠と出産は大変で、赤ん坊の世話はそれ以上で、何もかもに余裕が無いから産後は休みが必要なんだ。

 でも〈育てるために休む〉が分からない。


「まだクシュルさんには、馴染みがありませんね。育休とは、私が子持ちの職員の意見を取り入れ作成した休業制度です」

「……え? 休業? もしかして、これまでは出産や育児の為に仕事をやめる必要があったのですか?」

「えぇ、私が就任する20年前までは、女性は総じて辞めていました」


 故郷では、農家や林業などの自営業が多かったから、辞めるなんて概念が無いに等しかった。けれど俺がパーティを脱退したように、限界が来て仕事が出来なくなるのは、あり得る話だ。

 少し考え、角度を変えて見れば分かるのに、今まで気づかないなんて、世間知らずが過ぎる。俺は俺に呆れた。


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