第31話 罠はあるよなぁ
「俺達だけでは手に余るけど、ノーム達としては時間が無いってわけか」
カインは腕を組みつつ、眉間にしわを寄せる。
「ギルドハウスへ連絡は?」
「やった。助けが来るのは、早くても3時間は掛かると考えた方が良い」
パーティの選別に出撃の準備、街から森、山への移動を考えると、それくらいは必要だと思う。
「俺達は待てるが……」
カインがちらりとノームを見ると、ビタン、ビタンと彼等は尻尾を使って大きな音をあえて立てている。早く行くぞと態度で表している。
相手は4人。人数だけならこっちは有利だが、相手はドライアドさん達を媒介にして爆発事故を起こせるだけの魔術の知識と実力の持ち主がいる。
やつらに辿り着くまでに罠は当然あるし、対峙した瞬間にゴーレムの揺り籠を爆破させ、俺達に濡れ衣を掛けて逃走されかねない。
「罠と敵の居場所は何処だ? 作戦を作れない」
メディギスさんは、山の下に広がる森を見つめながら言った。
どうしようって悩むよりも、まずは情報を集めた方が良いな。見習おう。
「書き出してみる」
俺はリュックから地図を取り出し、ノームに聞きながら印を付けていく。
敵は、森の北側にいる。山からの水が湧く小さな泉があり、そこに簡易拠点を作っているようだ。罠に関しては、魔方陣が地面に20か所隠されている。特定の大きさの生物が魔方陣内に侵入すると発動するらしい。ドライアドさん達が被害に遭ったのは、これだな。置き方に規則性は無い。前より数が減ったとの話なので、ドライアドさん達が逃げ、一向に人間が来ないから再度設置はしなかったようだ。
今の南東の森はスライム大量発生で冒険者が集まるが、それより奥には誰も足を向けていない。向かったところで何も得るものが無いから、行きたがらない。
冒険者はギルド側が囲っている人を除けば、その日暮らしが多い。副業なり、本職がある人もいるが、金になる話でなければ無視されやすい。
やりがいや大義名分があれば、なんて言ってはられないのが現実だ。
そういう時にギルドが依頼したり、俺達の様に職員を派遣して対処をするわけだ。
「できた。2人とも、見てくれ」
よし、いい感じに書けた。
問題なのは、この20か所の魔方陣がドライアドさん達の被害に遭ったものだけかってところだ。
7割燃えたらしいからな。俺達に攻撃はしないが、周囲に火の手を回させて逃げ道を塞ぎ、事故に見せかける……なんて事も有り得る。
俺が解除できれば良いが、どんな術式かきちんと全貌を見ないと危険だ。こういう罠系の魔方陣は、解除されないように妨害であったり、術者に報せる細工がしてるのが常だ。今回は、避ける前提で行こう。
「罠の数は少ないが、威力は高いと思う。ノームに知らせてもらえるように頼んで……」
2人に地図を見せつつ話をしていると、チャチャさん達が到着した。
これまでの状況を説明し、2人に見せた地図をチャチャさん達にも渡す。
「下手をすれば星4相当の危険な状況だね。爆発したとしても、その後がどうなるか未知数……連絡して正解」
地図と照らし合わせながら、チャチャさんは周囲を確認する。
クエストの星1から5と白星には基準がある。星4は一定の範囲の地形が変わるほどの災害の恐れがある地域の調査や、人間の大きな町や港を襲う大型の魔物(群れを含む)の討伐などの高水準の経験と知識、技量が必要となる依頼ばかりだ。
今回は森が消え、一歩間違えば俺達のいる山も消し飛びかねない。だから、星4だ。
「クシュルは、どう考えてる?」
「犯人4名は出来れば、殺さず確保をしたいですね。魔術師がいるなら、死と同時に呪術を発動させる懸念があります。ゴーレムの揺り籠については、ノームとドライアドの力を借りて俺が安定化させます。ノームが位置を把握していますし、安全地帯と時間を貰えれば、なんとかします」
「えっ」
斥候の女子が声を漏らした。
思わず彼女の方を向くと女子3人だけでなく、カインやメディギスさんまで三者三様の驚き方をしている。
なんだよ。失言してないだろ。
元パーティの連中は、盗賊との戦闘経験だってあるだろ。あれで殺す、殺さないの決断や経験は培っているんだから、驚かれる筋合いないぞ。




