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田舎者のエルフは冒険者ギルドに就職します!  作者: 片海 鏡


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第32話 思ったよりこいつら大変な目に遭ってる

「へぇ、クシュルくんは安定化させた経験があるんだ?」

 あ、そっち。魔術の方面か。


「ゴーレムの揺り籠は流石にありませんが、魔術の安定化を応用すれば、いけると思います」


 俺が小さかった頃、〈魔力を扱うには器用さが必要だ〉と言って故郷の森のゴーレムがある玩具を作ってくれた。

 長方形やひし形、楕円など様々な形の欠片を組み合わせ、四角の立方体にするパズルだ。

 触れるにも動かすにも魔力を通す必要があって、過剰に流し過ぎたり、制限時間が来るとポンっと音を立てながら光ってバラバラになる。

 俺は兄さん達と違って中途半端な学習しか出来なかったから、この遊びを通して精密な魔力の扱いを学んだ。

 魔術は詠唱や魔方陣によって発動するが、魔力の配列が盤石であれば安定する。逆に乱れやバラつきがあると、効力が弱くなったり、過剰な火力が出て魔力を無駄に消費したりと暴走しやすくなる。

 ゴーレムの揺り籠の安定化も、それらに倣えばできる筈だ。


「安定化させれば、ゴーレムは産まれられます。そうすれば応急処置で安定化させた揺り籠を、本来の意味で力を失わせることが出来ます。犯人達の悪事を食い止められます」


 忘れがちだが、ノームは〈モウスグウマレル、ハズダッタ。デラレナイ〉と言った。

 核が完成したゴーレムが、まだあの中にいる。

 生まれようとしているゴーレムは、殻を破れない雛に似た状態だ。それを揺り籠の安定化と共に補助をする。ここの揺り籠の規模は消耗されたせいで把握が難しいが、一体のみに器の大きさを縮小させ、ゴーレム誕生と共に消滅、自然に還元の流れまで持ち込むんだ。


「揺り籠は消えても良いのか?」

「あれは魔力の溜まり場だ。森が消えない限り、何百年か何千年後にまた発生するから、心配はいらない。今あるものは、悪用されない為にも消えた方が良いんだ」


 魔術にあまり詳しくないカインは〈そういうものなのか……〉と呟いた。


「暴走や爆発が発生するよりは、ずっと良いね。詳しいクシュルくんに、任せよう。精霊や妖精が付いていてくれるなら、安心できる」

「ありがとうございます!」


 皆も賛成してくれた。

 そして、チャチャさんは作戦を立てた。

 先程と同じく二手に分かれる。今回は、俺とカイン、妖精精霊チーム。そして女性チーム。罠避けに女性チームにノームを数匹来てくれることになった。回復魔術の子は、森では術式が使えない恐れがあるので、増援と合流する為の目印役として山の頂上に残ってもらう。

 チャチャさん達女性チームが犯人達へ、奇襲を行い戦闘。その騒ぎに乗じて俺達は隠れて動き、魔力の安定化とゴーレムの誕生を補助する。

 今回カインが選ばれ理由は、総合的な戦闘力と盾役、そしてリーダーとしての視野の広さがあるからだ。チャチャさんとププ達の戦闘力は犯人の方へ回したい。メディギスさんでは身体が大きいので隠れて行動できない。斥候の女の子は視野が広く潜伏も出来るが、防御面に劣り盾役が出来ない。目的地まで移動、殆ど動けなくなる俺を警備出来るのは、あいつだけだ。


「なぁ、おまえ達は俺がパーティを抜けた後、どうしていたんだ?」


 ドライアドさんとノームの案内の元、俺達はまず山を降りている最中だ。

 犯人達のいる場所はかなり遠いので、カインに訊いてみた。


「どうって、クエスト三昧だ。おまえの上司に、こき使われてる」

「ゼルレオスさんに?」

「……そうだよ」


 眉間にしわ寄ってるし、なんか歯切れの悪い返事だな。

 ゼルレオスさんって誰かをこき使うイメージ全く無かったな……頭数不明の蝙蝠を操る強者ではあるけど、威圧感はあまりないし、話せば温和な印象を受ける。まだアルバイト入社一か月の俺は簡単な仕事だろうが、渡されるのは今日中に終わる量だ。きちんと従業員へ仕事の配分させられる凄腕だと思う。


「あの人から斡旋されるクエストは、命に関わる危険度こそ星に準じてるけど……かなり容赦ないぞ」

「昇格試験受けられるようになったのは、そのお陰だろ?」

「そうだけど、なんか、うぐぅ……」


 どうした。突然苦しげに唸って、何があった。


「……聞きたいか?」

「聞いてやるよ」


 女の子ばっかのパーティのリーダーだと、やっかみを受けて同性の友人作るの難しいだろう。仕方ない奴だな。


「超大型の集団討伐依頼に強制参加させられて、3日間ずっと物資の補充係として走り回った」


 初っ端からどういうことだよ。

 そんなクエスト初耳だぞ。


「これも集団討伐なんだが、海でデカい船に乗せられて、星3以上の先輩らが触手? みたいなの相手してる中、ずっとデっかい篝火の番をさせられた」


 よ、夜に灯りに集まるイカを獲る漁の、超大型魔物バージョンか……

 火の番で戦闘が無いとはいえ、女の子達もひっどい目に遭ってるな。波とかこれでもかって位に船を襲って、ずぶ濡れなのが目に浮かぶ。


「きちんと整備された山道があるとはいえ、雲にまで届く高い山まで登って、5種類の薬草を採取したり……色々やらされた。最初は文字の読み書き教室を紹介してくれて、良い人だと思ったんだ。沢山稼げるって斡旋してくれたクエストは、きっと優しめだと思って……結果がこのざまだ」

「濃密な一か月だったんだな」


 あー……なるほど。ゼルレオスさんは、命の保証ありの過酷なクエストやらせたのは、たぶん意味があるな。

 俺の見立てだが、カイン達の様に成人したての若い冒険者は、ノウハウや決まり事、世渡りを教えてくれる先輩(ギルドからの紹介される位に評価の高い人)と一緒にパーティを組む場合が多い。新人育成の為であり、若者を非行に走らせないための受け皿だ。

 カイン達みたいに、若者だけのパーティは兎に角珍しい。きっと俺の脱退後に、ゼルレオスさんの蝙蝠に監視されていたな。竜の翼パーティは俺が想像するよりも、かなり危なっかしかったんだ。

 遠征ばかりなのは、美味しい話には裏があるって騙されないようにする練習だけでなく、多くの上位の冒険者と交流させて、世の中を知り、経験を積ませるためだ。


「おまえがどれだけ優しかったか身に染みた!」

「それは、ちょっと違わないか……?」


 別に俺が選んだクエスト自体は、皆の腕前に合わせたとはいえ、他の冒険者も受けるようなモノばかりだ。達成できると確信しても、別に優しくはないはず。

 俺への仕打ちをした事に対して反省の色を見せてくれるのは、喜ばしいけど……なんか方向性がおかしくないか? 目が座っているぞ? こいつ、大丈夫か?

 どれだけゼルレオスさんの斡旋したクエストは、過酷だったんだ???


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