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田舎者のエルフは冒険者ギルドに就職します!  作者: 片海 鏡


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第28話 乗り物酔いする暇さえなかった

 俺達は急いで戻り、チャチャさんと合流した。


「妖精側のドライアドに、森の謎の火災ね。自己判断で勝手な行動しないで正解。調査しよう」


 即決。


「増援呼ぶにも、状況を把握しないとね」


 相手の目的を調べるためにも慎重に行動しないといけないな。


「さっきの威嚇で相手が動きを止めている今がチャンス。足の速いアタシの子達の助けを借りる」


 チャチャさんはそう言うと、シャツの中に隠していた銀色の笛を取り出し、吹いた。

 あれは、犬笛だ。


「なにか来る」


 最初に反応したのはメディギスさん。遅れて、俺。

 四足歩行の大型の動物。おそらく猟犬が二頭こっちに走ってくる。


「紹介するよ。魔狼のププとミミ」


 見た目の特徴は狼と変わりないが、頭胴長がかなり大きい。ププと呼ばれた虎毛の雄は約150㎝。ミミと呼ばれた白毛の割合が多い雌は約135㎝もある。

 前と後ろ足の筋肉の盛り上がりが、はっきりと見える。強い。


「チャチャさんはテイマーなんですね」


 俺は感心しつつ、二匹にあまり近付き過ぎないよう心掛ける。

 魔狼は種類によるが、小さな頃から適切な環境で育てると人間でも飼える、と本で読んだことがある。気難しく上下関係に厳しいが、主人と認めた相手には従順らしい。

 カッコいい! と純粋に思うが、二匹の命を預かる責任と義務をひしひしと感じた。

 この子達の一生を貰って最後まで面倒を見るんだ。生物を飼うって簡単な話じゃないんだよな。


「そうだよ。この子達がいるから、星4でやっていけるんだ」


 生物を使役する職〈テイマー〉は、星に応じて従えられる種類が決まっている。テイマー自身に知識、責任能力、そして其の生物が暴走した際に制圧できる実力が備わっていなければならないからだ。

 魔狼二匹も従えられるなんて、相当な実力だ。ハーフフットは小柄で非力だとよく言われるが、見た目だけでは判断するのは浅はかだな。


「よし。クシュル」

「はい。なんですか?」

「ププに乗って」

「はい?????」


 これだけ大きければ乗れそうだが、なぜ????


「ドライアドと対話が可能なのはクシュルだけなんだから、斥候も担当して」

「俺1人で……?」

「当然。身を守れるくらいの戦闘能力はあるでしょ?」

「杖は鈍器にもなるので、多少はありますけども」


 ププが俺の前にのそのそ歩いて来て、匂いを一通り嗅ぎ、こっちを見上げて軽く尻尾を振った。

 ……でかくて可愛いなぁ。この子が、ここから一山分を全速力で走るのかぁ。


「乗って」

「はい」


 皆に状況説明できる人が必要だ。魔術は俺しか分からない知識もある。

 俺に拒否権は無い。


「よ、よろしくお願いします」


 乗馬する感じで、ププの胴体に乗る。

 すっごい筋肉だ。馬に乗っている感覚に近い。俺が乗っても全くビクともしない。


「できるだけ前傾姿勢になって、振り落とされないように首に軽く手を回して」

「は、はい」


 固いがしなやかな毛に覆われた首へと手を回す。

 人間大砲させられるような感覚。怖いって。


「よし。行け!」

「ひぃぃいいいい!!!?」


 身体が一気に持ってかれる。

 視界が?!

 一瞬で皆が見えなくなった!?

 ゆ、揺れてるから、ププは走ってるんだよな!?

 息する間も無い! ふ、振り落とされないようにしないと!!!


『!!!????』


 ドライアドさーーーーん!!!!??

 ププ知らないから通過し……あれ、飛び跳ねた感覚無いぞ。は? もしかして、水面走った?

 訳が分からないまま、どんどん進み。


「ごはぁ!?!!」


 急停止の勢いで、俺は思わず手を離し、慣性の法則にやられて前方に飛んだ。その勢いで半回転して、背中から地面に落ちた。

 杖が背中に……いったぁ、何なんだよ…………


「ヴァン」

「あ、えーと、ありがとうございます」


 一声と共に視界にはププの顔面。ひと舐めされて、冷静になった。

 起き上がって状況把握だ。目の前に広がるのは、鬱蒼とした森だ。植物の種類が少し変わったかな。ここは平らだが、周囲に斜面が見て取れる。

 うん。ここは山だな。

 雲の高さ、空気から、山頂近くだ。隠れる場所の少ない頂上を避けてくれたようだ。何分で辿り着いたんだ? 魔狼ってここまで足が速かったか?


〈どうした??〉 

 カラカラと音が聞こえたかと思うと、木の上からドライアドさんが登場した。

 こちらも凄い速さだ。


〈何があった??〉


 困惑しますよね。俺もですよ。


〈仲間に話した。手伝うことが決まった。後を追うから、先に行って状況を把握してくれと頼まれた〉

〈そうか。感謝する〉


 ドライアドさんは、上半身のふさふさした葉っぱの衣から、何かを取り出した。

 木の葉の包みを俺に渡した。


〈待っている間に作った。人間は怪我をし易い。傷付いた時に舐めると良い。回復に役立つ〉


 開けてみると、木の実や薬草をすり潰して丸く固められた団子があった。

 ドライアドさん式傷薬か。

 ここまで妖精に気遣ってもらえるなんて。優しい人だ……

 つい先ほどすり傷を負ったから、試しにちょっと摘まんで舐めるか。


「うっ!?」


 にっっっが!!! 


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