第27話 規模の大きい話になって来たぞ
妖精は千差万別だが、自然と共に生きるタイプは人前に滅多に出ては来ない。
森と共に生きるドライアドなら猶の事だ。訳がありそうだ。
「対話する。少し待っていてくれ」
「わかった」
「頼んだぞ」
よし。改めて、ドライアドさんと対話だ。
久しぶりで緊張するが、ここが頑張りどころだ。
〈貴方の言葉はわかる。俺達は、貴方に敵意は無い。森の異変を調べてに来た〉
そう伝えると、また首を傾げてカララと短い音を立てる。
彼等の感情表現っぽいな。
〈古き樹の民。おまえに頼みがある〉
〈なに?〉
〈俺達の森を取り戻す手伝いをして欲しい〉
ここが住処じゃない? 俺達って??
〈詳しく理由を教えて欲しい。貴方の仲間と一緒に、別の森から来た?〉
〈山を越えた先に、我々が住んでいた森があった。人間によって母の木もろとも燃やされ、我々はこの森に逃げてきた〉
彼が答えると、奥の森に何人もの人影が動いた。
大きな布状に繋ぎ合わせた葉っぱを頭から被り、ペストマスクに似た木の面を被っている。身体も覆い隠されているな。目の前の彼とは全く違う格好のドライアドだ。頭からベールを被った魔術師って感じだな。
〈いつ頃に燃やされた? 原因は?〉
川を超えた森のさらに奥には山がある。標高は有るにはあるが、森林限界では無いから木々が鬱蒼としている。
人間種には分からない森の境目があるとしても、山火事や森林火災の話はこの一か月間に耳にしていない。彼等の発見された日、移動距離を考えれば、火事の発生は遅くても3日前になる。ドライアドが逃げ出す程なら、相当な規模だ。レファースの街の役場や冒険ギルドが、それを見過ごす筈が無い。
〈3日前に燃えた。原因その男と同じ、丸い耳の人間〉
カインと同じ足長族か。
襲い掛からない辺り、この人はちゃんと分別が出来ているな。
〈そいつらは突然やって来て、燃やし始めた。まだ、いる〉
木の上で鳥達と一緒にいたのは、燃やされた森の偵察を彼等に頼んでいたからか。
どうやって隠蔽したんだ? 燃える時の煙や焦げ臭いって隠せるものか?
〈あいつらを退治し、森を取り戻したい。手伝ってはくれないか?〉
〈俺だけでは決められない。仲間に相談したい〉
〈……わかった。ここで待つ〉
ドライアドさんはそう言って、橋の上で胡坐を掻いた。
この人……切羽詰まっている状況なのに、俺にも配慮してくれている。
助けたい気持ちはあるが、もし本当なら星2相当と3だけでは解決できない問題だ。
「あいつ、何だって?」
2人の元へ戻って来ると、カインがすかさず聞いて来た。
「彼は山の向こう側にある森に棲んでいたらしい。そこが3日前に人間達に燃やされて、しかも居座られている状況なんだ。それをどうにかして欲しいって、頼まれた」
「そんな話、聞かないぞ」
カインも知らないか。ちらっとメディギスさんを見ると、軽く首を振った。
「俺も、ギルドハウスで聞いた覚えがない。でも彼が嘘を言っている様には思えないんだ」
偵察に蝙蝠が役に立つか? と思ったが、この子は連絡用だし、俺は製造者じゃないから無理だ。いや、ここでゼルレオスさんの意見を聞くか?
「まずは、戻ってチャチャさん達と合流した方が、良いんじゃないか? 今回の調査で目撃情報の謎生物は、あいつだったんだろ」
「そうだな。報告して、相談してみよう」
カインの言う通り、まずは先輩であるチャチャさんの意見を聞くのが先決だな。
ドライアドさんに仲間が別の場所にいると話し、俺達は一旦その場を離れた。




