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田舎者のエルフは冒険者ギルドに就職します!  作者: 片海 鏡


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第24話 貴重な証言だけど、謎だ

 街の南にある馬車乗り場に到着した俺達は、駅馬車に乗った。

 馬車にも種類がある。街の中を一定の軌道で走行し不特定多数が乗車できるのが乗合馬車。運賃を払えば目的地まで行ってくれるのが辻馬車。そして町から街へと長距離移動するのが駅馬車だ。

 長距離を移動するとあって、馬の体格が良く、幌馬車には結界の魔方陣が大きく描かれている。


「7人です。領収書の宛名は、冒険者ギルドで」

「まいど」


 手馴れた様子の足長族の男性が、肩掛け鞄から紙の束を、胸ポケットから鉛筆を取り出した。

 鉛筆は、黒鉛と粘土の混合を焼いて固めた黒い芯に、木の板を挟んで加工したものだ。黒鉛が採掘される山が限られるので、混合の芯であっても高値で取引されるらしい。ダンジョン産が見つかればもっと安く、なんて話もあるがまだ無いらしい。

 街の規模が大きいと人の出入りも激しい。道中の危険は多いが、駅馬車はかなり儲かるようだ。


「南東の森の付近で降りると、運賃はどれくらいになりますか?」

「えー……ギルド換金制度を利用しないなら、全員で銅貨8枚ですかね」

「人数のわりに安くないですか?」

「護衛分の割引ですよ」


 魔物避けがあっても来る時は来る、と言った様子の男性に対して、チャチャさんは納得した様子で布袋から銅貨を取り出した。

〈ギルド換金制度〉とは、冒険者ギルドの報酬である〈金貨〉〈銀貨〉〈銅貨〉をその国ごとの貨幣に代える制度だ。これは傭兵ギルド、商人ギルドにも適応されている。

 物の価値、単価は国によって違う。

 レファースはダンジョンの街なので、国の貨幣とギルドの硬貨どちらも使えるが、冒険者が居なくても成り立つ国は存在する。また金貨や銀貨を適応できる余力のない国も存在する。他にも独裁国家とか、鎖国していた国とか。

 金貨や銀貨が無価値な其の国であっても、冒険者達は遠征や旅の途中で訪れる。彼等が旅立つ準備が出来るように、ギルドは換金制度を作り、ライセンス発行と共に銀行口座の開設するのを義務付けた。

 まぁ、それを悪用する奴と其れを取り締まる部署も登場したり、色々あったらしいが……便利なのは確かだ。一気に手元に来ないので散財したり、全財産盗まれるリスクが減る。冒険者ギルドが無い国でも、商人ギルドに手続きをすれば引き出せる。さらに冒険者を引退しても、口座自体は使える。

 アルバイト職員になって、ようやく俺もその便利さとありがたさが分かるようになった。


「さっさと乗っちゃおうか」


 領収書を貰ったチャチャさんに言われて、俺達は駅馬車に乗った。

 俺達以外にも6人が乗車した。足長族の商人4人と親子連れ。2人は里帰りかな?


「出発しまーす」


 馬車がゆっくりと動き出し、スピードに乗ると軽快に走り出す。

 ガタガタと一定のリズムを刻む振動が、全身に伝わる。旅立って、街に滞在するようになって以来か。ずっとダンジョンに潜って、外のクエストをして来なかったから懐かしいな。

 ふと視線を感じてその方向を見ると、おとなしそうな男の子は興味深そうにメディギスさんをじっと見ていた。俺の動作で気付いたのか、母親が〈失礼よ〉とその子を軽く叱った。


「おまえたち」

「ちょ、メディギスさん」


 男の子を気にも留めていない様子の彼女だが、言葉が若干強いので俺は慌てて間に入る。


「南東の森について教えて欲しい」

「俺達は冒険者ギルドからの依頼で、森へ調査に行くところなんです。知っていることがあれば、教えていただけませんか?」


 驚いた商人達と親子だが、俺の説明を付けたすと納得をしてくれた。


「スライムが大量発生ってことしか、俺は知らないな」

「俺もだ。専門外でね」

「大量発生したせいで、他の森に魔物や動物が移動した、とかか?」

「俺も特にないなぁ」


 昨日の今日で、流石に情報は無いか。


「僕、知ってるよ」


 おずおずと男の子が発言し、一斉に視線が集まった。


「あら、もしかして2日前に話していたこと?」


 母親の方も知っている様子で、男の子は頷いた。


「僕ね。レファースのおばあちゃんの家に遊び来たの。来る時に馬車から外を見ていたら、木の上に人がいたんだよ」

「木の枝で休んでいたお猿さんかな?」

「ううん。人だよ。鳥さん達と一緒に、上にいたの」


 俺の問い掛けに男の子は首を振って答えてくれた。


「とーーーっても足が細長くて、ふさふさで、鳥さんと仲良くしてたの」


 細長い足を認識できるなんて、そいつは木の上に立っていたのか?

 どんな種族でも木の頂点やその周辺に立つのは難しい。落下の危険があるから、しがみついたり、跨いだりで足を固定しなくてはいけない。命綱があっても、頂点は木の枝が細いから無理だ。

 鳥が使い魔とするなら、木については魔術師が空中に浮かぶ魔術を使っていたと考えられる。でもゼルレオスさんを思い返すと、目撃されかねない場所に術者本人わざわざ出て来るかって話になるんだよな。見張りなら、鳥だけ飛ばして、自分は安全な場所で待機している方が良いはずだ。

 脚が細長いってのも、案山子みたいな作り物って線も有り得るな?

 やっぱり、妖精か? 

 姿を晒しに行くような奴、いるか?


「何か分かりそう?」

「なんとも……」


 可能性だけ湧くだけで、チャチャさんに何も言えない。

 ふさふさが一番分からない。毛皮か? それとも鳥モチーフの上着とか?

 そんな魔術師はレファースで見たことないし、隣町か?

 候補が多すぎる。


「本当だよ?」

「うん。信じているよ。その人がどんな姿なのか、気になっちゃっただけなんだ」


 男の子は俺の答えに安心したように、少しだけ笑顔を見せてくれた。

 そうして、問題なく一時間ほど馬車に揺られていると、道沿いに木々が増えてきた。やがて俺達は誘われる様に、気づけば森の前まで到着していた。


「冒険者さん方、南東の森に到着しましたよ」


 ゆっくりと駅馬車は停車し、俺達は降りた。


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