21話 ここが俺の新しいお城だ
昼休憩の後、2人と別れて仕事を再開。
ずーっと書類の仕分けをして、夕方になった。成果は3山と半分くらい。仕分けの合間に、冒険者が請け負ったクエストの処理や、完了後の書類の保管の流れも教えてもらった。受付は担当者がいるが、その人が急病など何かあった際、その代わりを誰でも出来るようにする為だ。今回は流れだけなので、実践はもっと先だ。
「今日はここで退勤ね」
夕方になり、ゼルレオスさんが起きてきた。
「寮の場所は分かっているよね?」
「はい。大丈夫です」
「それじゃ、お疲れ様」
「お疲れ様でした」
夕方から早朝にかけて務める職員さんと交代し、俺はギルドハウスの裏手に建っている寮へと向かった。もともとはこっちが宿屋だったが、ギルドハウスの再建と人員の増加で寮になったらしい。女性寮は、ここから二軒先だっけ? 行く機会のない場所だから、ぼんやりとしか覚えていないな。
「こんばんは」
「おっ、新人。おかえり」
玄関先に置かれた鉢植えに水やりをしていたハーフフットの男性が、俺を見てにこやかに歓迎してくれる。
「体、大丈夫か? 大変だったな」
「えぇ、まぁ……動けるまで回復したので、平気です」
「そかそか。マスターは次元が違うから、無理するなよ」
管理人さんはそう言って建物の中に入ると、管理室と思しき部屋から鍵の束を持って来る。
「んじゃ、部屋に案内するから付いて来な」
「お願いします」
階段を上る。一階を含め合計で10部屋あるが、人の気配が全くない。
「俺以外に使っている人はいますか?」
「一応4人いる。鍛冶と解体に1人ずつ、それとゼルレオスさんとマスター」
「へぇ、あの2人も」
「物置代わりだから、住んでるとは言い難いけどな」
一応って言ったのは其れが理由か。なるほど。
人気が無いのは仕事初日の俺が、他の人より早めに帰宅しただけだな。
「はい。それじゃ、ここがクシュルくんの部屋ね」
鍵が開けられ、俺は部屋に入った。新品のシーツが敷かれたベッド、椅子二脚とテーブル、壁面には備え付けのクローゼットまである。1人で暮らすには、充分過ぎる空間だ。
魔術道具屋の屋根裏も好きだけど、自分の新しい部屋を貰った時みたいなワクワク感がある。
「でかい家具を入れたい時は要相談で。壁や床の修繕については状況や原因次第で払ってもらうから。ペットは飼育不可。でも、ゼルレオスさんの使い魔みたく生物じゃない場合は要相談で。あ、それとゴミ出しについては、一階の管理部屋横の掲示板に貼ってあるから、ちゃんと読むんだぞ」
あのコウモリ、やっぱりあれは本物じゃないのか。
仕事ができた満足感で忘れていたけど、訊いておけば良かった……!
「わかりました」
「何か気になったら、いつでも訊いてくれ」
管理人さんは鍵を渡してくれると、すぐに部屋を出て行った。
杖と鞄を置いた俺はベッドに座り、一息つく。
魔術道具屋の屋根裏にある荷物は、休みの日に移動させよう。使っていたシーツとか布製品は破棄するべきか? あっ、掃除もしないと。綺麗に使う様に心掛けていても、埃は貯まるからな。
でもまずは夕食だ。ギルドハウスに戻るか、夜の広場の屋台で買うのも良いよなぁ。食堂はタダだけど、屋台でしか売っていない魔猪の特製ミンチステーキも捨てがたい。
そんな事を考えているうちに、俺は眠ってしまった。




