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田舎者のエルフは冒険者ギルドに就職します!  作者: 片海 鏡


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20/24

第20話 エルフってだけでこれだよ……

 声のする方向を見ると、そこには中年の足長族とハーフフットの3人組の男達がいた。

 にやにやと悪趣味な笑みを浮かべて、こちらを挑発している。


 いるんだよ。こういうの……


 パーティーに所属していた頃に、女の子に魔物の解体が終わる時間を伝えていたら、似た様に他の冒険者から揶揄われた。

 エルフの見た目は、特に足長族からすると〈美形〉に属するらしい。きめ細かい肌に、儚げな中性的で整った顔、男とも女とも取れる華奢な体はとても魅力的、だとか。

 まぁ、それは王都のエルフだけど。

 足長の女性からは全体的に人気だが、一部の足長の男からは〈なよなよしてる〉〈女々しい〉等と見下される。ドワーフから見ても似た印象らしいが〈不気味〉とも言っていたな。


 エルフと足長は骨の太さや筋肉の付き方が全然違うし、俺には美形の概念がいまいちわからない。こっちに来てからは〈足長からすると整っているだろうな〉で見た目を判断してるけど、彼等は地方によって顔の造形や肌の色が違うし、分かり難いんだよな……


 それにエルフがモテるってのは、彼等から見た造形だけじゃなくて、いちいち身体を触ったりせず、〈胸がデカい〉とかおかしな誉め言葉を相手に向かって多用しないからだ。エルフは手入れの行き届いた髪のように、本人が磨き続ける部分に価値を見出し、褒める傾向が強い。だから、足長などの女性と相性が良くなりやすい。

 エルフもエルフでおかしい奴はいるが、別大陸に基本来ないので略す。


「どうした? なんか言い返したらどうだ?」

「女の前だぞ? 良い所見せてみろよ」


 放っておきたいが、つけ上がって2人を悪く言われかねない。

 呆れながら動こうとした時、俺よりも先にメディギスさんが立ち上がった。


「えっ、メディギスさん」

 彼女はずんずんとそのまま男達の方向へ歩き出し、俺は慌てて後を追う。


「な、なんだよ」

 足長の1人が怖気づきながらも言った。


 成人男性の平均身長185㎝の足長族でも、二mを越すメディギスさんは圧倒されている様だ。

 メディギスさんは無言のまま、持っていたフォークを男達の前へと差し出す。


「は? フォークがどうしたんだ?」


 もう一人の足長の男が言ったと同時に、メディギスさんはフォークを持っている方の右手……その一指し指で柄を軽く押して、フォークを簡単に曲げた。

 あっと言う間過ぎて、俺も理解が追い付いていない。紙や枯葉を僅かな力で何気なく曲げるような、本当に軽い動きで、金属製のフォークをいとも容易く曲げてしまった。


「は……?」

 あっと言う間の出来事に、男達も呆気に取られている。


「うるさい。こうなりたくなかったら、黙れ」


 オーガは女性であっても、その力は足長やドワーフの男の比ではない。それを示す行動だ。

 偉そうにしたり、相手を小馬鹿にするのではなく、自分の強さだけ見せつけている。

 かっこいいな。


「そ、そんな熱くなるなよ」


 足長の男の1人が顔を引きつらせながら、愛想笑いをする。

 見る限り、足長は前衛の剣士か戦士枠。ハーフフットは後方支援系だ。力ではメディギスさんに勝てないと悟った様子だ。


「女の影に隠れて軟弱なやつ」

「魔術師が前衛職の後ろにいるのは常識だろ。頭使いなよ」


 もう1人の足長が性懲りもなく言って来たので、俺は言葉で応戦した。


「術者がただ茫然と突っ立っているとは、思わないことだ。帰り道、気を付けなよ」


 呪いは嫌いなので専門外だが、魔術師なのでそれっぽく脅してみる。

 案の定、ハーフフットの男が顔を青くし、立ち上がった。


「俺は悪くないからな! か、帰る!!」

「おい!?」


 古代の長命種は、魔術の基盤を作る為に多くの短命種を実験体として消費したとされる。

 その実験と研究があって今があると言えるが、医療同様に行き過ぎて危険な代物が幾つもあった。肉体魔術の術式を短命種の身体に刻み込んだり、未完成の治癒系の魔術を使用したりと、かなり外道な事もやったらしい。

 その長命種がエルフかどうかは定かではない。エルフが持っていた記録は写本であり、長命種の実験も記載されていた事から主犯とは言い切れないからだ。

 けれど、現代で世界的に周知される中で、最も長生きするのはエルフだ。

 魔術と言えばエルフ。危険な術を隠し持っていると思われやすい。


「ギルドハウスで喧嘩はご法度だろ。サブマスターが起きないように、大人しくしてくれよ」


 ギルドマスターであるラシエラさんが不在の今、冒険者側に立つサブマスターのゼルレオスさんの権限が強い。多分、俺が前に見た乱闘をする冒険者たちを一捻りしたのは、彼だ。ああいう輩はその手の話しに詳しいだろうから、虎の威を借る狐で言ってみる。

 2人は何か言いたそうにしたが、立ち上がり、ギルドハウスから出て行った。


「俺のせいで嫌な思いをさせて、ごめん」

「あっちが悪い」

「そうですよ。クシュルさんは悪くありません」


 素直に謝ると、2人は擁護してくれた。俺のせいで巻き込まれたのに、良い人達だな。


「ありがとう。料理が冷めないうちに食べちゃおう」


 サンドイッチを手に取ろうとした時、皿の横で見覚えのある小さなコウモリが林檎を齧っていた。

 起きていなくても、この子達の目があるのか。

 ゼルレオスさんも恐ろしい人だな。


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