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田舎者のエルフは冒険者ギルドに就職します!  作者: 片海 鏡


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第17話 価値観が違うのでは?

 …………………………

 …………

 ん? なんか頭が痛いな?


 全身も痛い。これは……筋肉痛だな。

 あぁ、そうだ。ギルドマスターのラシエラさんに引っ張られながら最難関ダンジョン行って、それで十階層まで降りて、杖を修理して……


「あ!?」


 俺どうした!?

 !!!?

 からだすげぇいってえぁあああああああ!!?


「気づいたか」

「いっ……え? あれ? メディギスさん?」


 勢いよく起き上がり、激痛に声が出なくなっていた俺に声を掛けたのは、メディギスさんだった。

 なんで?


「こ、ここは……」

「医務室に併設してる病室」


 消毒の匂いが漂う空間には、8つの清潔なベッドが並んでいる。

 まさかアルバイト職員になって最初に利用するのが、病室とはな……

 あっ! 杖は!?


「杖なら、おまえの横だ」


 俺の寝かされていたベッドの横に、布で包まれた杖が立てかけられていた。

 激痛に耐えて中身を確認してみると、修理が終わった俺の杖がちゃんと入っていた。


「交代でクシュルの様子を見に来た」

「あ、ありがとうございます。ええと……どうして俺はここに居るんですか?」


 意識を失った経緯を知りたくて、メディギスさんに訊いた。


「外のサブマスターの帰還魔術はきちんと出来た。帰って来たら、クシュルが気絶していた」


 魔術の発動直後かその後に俺が気絶して、ギルドハウスに到着した時に倒れ込んで、皆さん大慌て……って流れかな。

 体力が限界だったのもあるが、ようやく帰れるって緊張の糸が切れたんだろう。皆さんに迷惑をかけてしまった。


「どれくらい眠っていましたか?」

「一日」

「一日!?」


 そんなに!? あっ、交代って見舞いのことか!

 えっ、俺って、そんな長く眠るほど疲れていたのか??

 異世界みたいなダンジョンとはいっても、目的地は初級ダンジョンの最下層よりも浅かったんだぞ。

 戦闘はしていないし、魔力を使ったのも杖の修理位だ。移動で体力は消耗したし、環境の変化で負担は確かにあったが、そんなに眠る程だったのか……?


「彼は起きたのかな?」


 医療部門のサブマスター、犬系の獣人族であるヨーカさんが病室の出入り口から顔を出す。

 全体が赤茶色の短い毛で覆われ、清潔な白衣を着ている。獣人としては狼の部類だが、ヨーカさんは目が丸くて大きめで、故郷にいた猟師さんが飼っていた猟犬を思い起こさせる。なので〈犬系〉と個人的に思っている。失礼になるので、絶対に口が裂けても言えない。

 獣人が医者なんて、と偏見は勿論持っていない。ただ、挨拶の時に変な薬を飲んで語尾がおかしくなっていた姿に不安が過る。


「起きた。意識は問題ない」

「それは良かった」


 語尾が消えたヨーカさんは近くに置かれていた丸椅子に座った。

 俺の手を取ると脈を計り、首や鎖骨辺りに聴診器を当て、診察してくれた。


「メディギスさんから聞いていると思うけれど、君はダンジョンから帰還した時には気を失っていたんだ」

「迷惑をおかけしました」

「これ位、どうってことない。むしろ、回復が早いと驚くほどだ」


 早い???


「問題はなさそうに見えるが、どこか体に違和感はあるかな?」

「筋肉痛くらいですね」


 俺の回答にヨーカさんは目を丸くする。

 えっ、なに? 俺、何かまずいこと言った?


「き、筋肉痛以外は? たとえば、視界が歪んでいたり、方向感覚がおかしくなったり……」

「起きた時に頭痛が少しありましたが、会話している内に治りました」


 なんか嫌な予感。


「素晴らしい! やはりエルフは耐性があるんだな!!」


 声高らかに言うヨーカさんの尻尾が、左右に勢い良く揺れてる。


「た、耐性??」

「神秘に対する耐性だよ。簡単に言えば、神秘は高濃度の魔力だ。綺麗すぎる環境では生物が育まれないように、神秘の領域は我々人間種にとって毒ともなりえる。あの領域に生息できるのは精霊か竜族、一部の幻獣種のみであり、人間種は不可能とされる。だが、エルフはかつて世界樹の種を大地へと蒔いたと伝承が」

「はいはい。その辺りにしようね。いきなり話しても、頭が追い付かないよ」


 熱弁をするヨーカさんを諫めながら、ゼルレオスさんがやって来た。


「無理をさせてしまって、ごめんね。マスターはあれでも親切にしようと頑張ってはいるんだ」

「え、えぇ、貴重な体験と良い修理素材を貰いました……」


 無理させられたが、貰ったのが幼木とはいっても世界樹だ。

 市場で取引されるなら、豪邸が何件も建つレベルだろう。筋肉痛と一日寝込むだけで貰えるなら、安い。

 ……思う所は有るし、気になる事も一層増えた。


「マスターはどちらに?」

「二時間前に、魔術塔からの依頼で南大陸へ向かったよ。緊急で連絡が来たから、辞退できなくてね。君に直接謝罪できないと申し訳なさそうにしていたよ」


 魔術塔。世界最高峰の魔術研究機関。実際にあるのか。

 学校で魔術の先生が〈神話に足を突っ込んでいる〉と言っていたから、本当にあるのかと疑問に思っていた。さらっと日常会話で出る程、白星は繋がりがあるんだな。

 白星の冒険者は世界中を飛び回っていると聞くし、これは仕方ないか……


「お詫びに、これを渡すように頼まれた」


 ゼルレオスさんから手渡されたのは、何かが入った小さな布袋だ。

 開けてみると、直径約5㎝の竜の鱗が入っていた。

 半透明の薄緑色の鱗は羽のように軽いが丈夫で、風を纏っている。


「何の竜の鱗ですか?」

「風王竜の逆鱗」

「はぁ!? いっってぇ!!!!?」


 驚いて思わず逃げそうになった俺は、筋肉痛による激痛で悶え苦しんだ。

 た、確か風王竜は星5に該当だぞ。その逆鱗って……


「へん、きゃく、します……」

「そう言われてもなぁ」

「へんきゃくします!!!」


 世界樹の幼木だって大概なんだぞ! 

 俺の手には余る代物を寄越さないでくれ!!!


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