表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎者のエルフは冒険者ギルドに就職します!  作者: 片海 鏡


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/23

第16話 杖の修理できた。疲れた

「地上に持って行けないって事は、ここで修理……ですよね?」

 念の為、訊いてみる。


「そうです。ここは魔物が発生しないように調整されていますので、気兼ねなく修理に集中してください」

「は、はい」


 俺の不安をよそに、ラシエラさんは世界樹の若木や周囲の植物の世話を始めた。全部は分からないが、庭園の植物達は希少種ばかりだ。

 ガラスみたいな葉っぱと花を咲かせている高山植物、スズランのような花がほんのりと光る植物など、図鑑でしか見た事のない種類ばかりだ。

 近くで見たいし、どうやって手に入れているのか気になるが、我慢だ。

 護衛兼案内役であるラシエラさんが傍にいない以上、たとえ安全地帯でも何が起こるのか分からない。ダンジョンコアがラシエラさんと協力関係なら、俺が変な事をしたら速攻で制裁を加えて来るはず。

 死なないだろうが、何が起きるのか全く予想が付かない。杖の修理に集中だ。


「よし……」


 俺は庭園の石造りの壁際に座り、折れ曲がった杖を包んでいた布を解いた。

 まずは俺の魔力を流して生きている枝と蔓を確認。

 これ以上折れ曲がらないように、あえて残していた死んだ枝と蔓を慎重に取り除く。

 次に、俺の膝の上に置いた杖へ先程よりも多めの魔力を流して、真っ直ぐにする。杖に使用される木材は、魔力を流すと軟化し加工しやすくなるからだ。

 そして、世界樹の幼木にも魔力を通しつつ、杖へ丁寧に編み込み、整形をしていく。

 単純で簡単そうな作業に見えるが、技術がかなり必要だ。

 魔力の流す量の調節と編み込む時の力加減が難しいんだ。

 流し過ぎる木材が余計に固くなったり、ひび割れが発生する。しかも流す量は木の種類だけでなく個体差、さらに言えば軟化具合や強度の差もあるので、簡単にポキッと折れてしまう。

 俺は焦らずに幼木を一本一本確認しながら、杖の木や蔓と丁寧に絡ませ、編んで行く。


「これで良いかな」


 ようやく杖の修理が終わった。多分、二時間は掛かってる。

 俺は立ち上がり、杖の加減を確認する。

 老人や脚の骨折した人のように体重をかけて支えにしても、充分なしなりと問題の無い強度が確保されている。握った感じも良い。大きく振ったり回転させても、編んだ部分は解けない。

 うん。良い感じだ。

 世界樹の幼木は、繊細さは有るが思っていたよりも扱いやすかった。幼いからか、編み終わった後も他の枝や蔓と喧嘩をしていない。

 亡くなられたひい祖母ちゃんの杖に、一歩近付いた気すらする。

 あとは、試しに魔術をやってみるだけだ。


「灯りよ」


 死んだ枝や蔓を片付けた後、ダンジョン用の魔術で光の玉3個を作ってみる。

 浮き上がり方、ゆっくりとした動き、灯りとしての安定感…………うん。消え方も静かだ。魔術はちゃんと発動している。大丈夫そうだ。


「終わりましたか?」


 庭園の奥から、上着を抱えたラシエラさが出てきた。白い手袋には土汚れが付き、髪をポニーテールに結び直しているのを見るに、熱心に世話をしていた様子だ。

 魔術でパパッと完了、みたいな想像をしていたが、地道に作業をしているんだな。

 農家の三男坊としては親近感が湧く。


「はい。お陰様で、杖が直りました」


 ラシエラさんは手袋を外しながら、俺の杖を上から下へとしっかり目に観察する。


「見事ですね。曲がっていたのが嘘の様です」

「ありがとうございます!」


 頑張りを褒められるのは、気持ちが良い。疲れが和らいだ気がする。


「休むのは、地上に帰ってからにしましょう」


 裏返しにした手袋をズボンのポケットへ仕舞い、ラシエラさんは上着を羽織り直した。


「帰還魔術がありますので、ご心配なさらず」


 身一つで来たから、どうするのかと気になっていたんだ。

 初級や中級は、休憩スペースや最深部の手前に、帰還魔術の魔方陣が地面に描かれている。その上に立ち、魔術師が魔力か魔石を使って発動する仕組みだ。

 ここはラシエラさん専用の階だ。階段近くや庭園周辺にはそれらしい魔方陣は無かった。

 どうするのだろうか。


「出て来なさい」


 ラシエラさんのワイシャツの胸ポケットから顔を出したのは、茶色い毛玉の様な小さく丸い生物。鼠かと思ったが、その生物はラシエラさんの手へと特徴的な前足を使って移動した。


「コウモリ?」

「えぇ、帰還魔術の術式が組み込まれた使い魔です」


 使い魔。召喚し、使役する生物の呼び名だ。

 方法は3種類。

 1つ目は魔物や精霊、妖精を含む生物を支配または服従させ、操る。条件が複雑で、魔力切れを起こすと反旗を翻される危険性がある。

 2つ目は一から育てる。凄い時間と労力が掛かる上に、信頼関係が無いと成り立たない。

 3つ目は一から作る。用途や見た目に拘ると費用が掛かるが、最低限の動きならこれで足りる。魔力切れを起こしても機能が停止するだけで安全に見えるが、別の誰かに操られないように注意が必要だ。

 使役している魔術師を何人か知っているが、使い魔を間近で見るのは初めてだ。どれに当てはまるのだろうか。すごく気になる。


「この子はゼルレオスの使い魔です。彼が帰還の座標となっています」


 事務の〈外〉担当のサブマスターであるゼルレオスさん。俺の上司になる人だ。日中はクエストカウンター奥の事務所で眠っていて、夜から朝にかけての業務を担当している。

 ダンジョンから地上へ戻る為の座標として、ギルドハウスにずっといるあの人は確かに打ってつけだな。職員の人なら、猶の事だ。

 よし。帰ったら、使い魔について訊いてみよう。ずっと前から興味があったんだ。


「魔術を発動させるので、私の隣に立ってください」

「よろしくお願いします」


 俺がラシエラさんの隣に立つと、コウモリが翼を広げて飛び立った。俺達の頭の上をぐるぐると飛び回り始めると、魔方陣が浮かび上がる。

 魔方陣が光って……

 そこで俺の視界は真っ暗になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ