第12話 異世界に落とされでもしたか?
最難関のダンジョンは、星5以上の冒険者しか入れない。
俺はまだ星3になったばかりだ。あきらかに力不足。死ぬ。
白星のラシエラさんなら何時でも入れはするが、発言からの即行動で充分に装備が整っていない。初級ダンジョンでも食糧、水、傷薬は必須なのに、着のみ着のままだ。
何とかして止めようと身をよじっても、物に掴まっても、一切ラシエラさんは意を介さず前へ前へと進んでいった。
「着きました」
途中から諦めた俺を街中で引き摺りながら、ラシエラさんは最難関ダンジョンに到着した。
滅茶苦茶注目されて、恥ずかしかった!!!
誰か止めろよ!!!!
「あれっ、マスターと……新人さん?」
ダンジョンの門番である足長の男性が、驚いた様子でこちらを見ている。
レファース街の四方の内、最難関または最高難易度と呼ばれるダンジョンは北にある。口を開けて待っている4つのダンジョンだが、最難関ダンジョンの出入り口は他に比べて神殿の様な石の柱や竜の石像で厳かで豪華に飾り付けがされている。あえて人工物で固めて違いを表すだけでなく、人を配置し易くすることによって、不法侵入を未然に防いでいるんだ。
「素材を取りに行ってきます」
「そうですか。いってらっしゃいませ」
おまえもか!!! 止めろよ!!!!!
何であっさり通した!? 上司だからか!?!! 俺を見ろおぉお!!!!
「新人さん頑張れー」
にこやかに言う男性を見て、俺は有る仮説を立てた。
ガンデンさんのあの一言からして、〈恒例行事〉みたいな疑惑が出てきた。
「マ、マスター!! 俺、杖以外持っていないです! 服だって、ダンジョン用ではないです!!」
「大丈夫です」
なにがだよ!!!!!!!
何を言っても聞いてもらえず、俺は引き摺られ続ける。
そして翼を合わせて六本の足を持つ竜が象られた巨大な門をくぐり、最難関ダンジョンへと足を踏み入れてしまった。
石階段を降りると、空気が一気に変わる。
果てなく草原が広がり、天から淡い光が降り注ぐ。
巨大な大理石を彫って造られた人型の石像が草原内を………………闊歩してる!?!
ゴーレムが地下一階から!!?
「あぁ、彼等は刺激を与えない限り攻撃してきませんので、お気になさらず」
「そ、そそ、そうですね……」
低い奴でも4メートルは有るぞ。
うわっ、一番デカいのが俺達を跨いで行った。
俺達を踏みそうにならないから、認識してくれてはいるのか?
ゴーレム。妖精の類とも言われる有名どころの魔物だ。
基本の大きさは3m。顔らしき部位に目は有るが口が無い事から、魔力を主食としていると考えられている。陸上生物の形を模し、人里に近いと何故か人型っぽくなる。温厚な性格で、ラシエラさんが言うように彼等の縄張りを荒らさなければ襲ってはこない。
地上で発見される土や岩で形成されたゴーレムは、要保護対象。その理由はゴーレムの生息する山や森では、魔物や大抵の亜人種がおとなしくなり、抑止力として活躍するからだ。討伐クエストの発行されるのは、火災や戦争で住処を無くすなど訳アリかダンジョン産がほとんどだ。
故郷の森に暮らしていた子は、小さい俺の遊び相手をしてくれて、杖の材料を一緒に集めてくれたな。懐かしい。
いや、現実逃避している場合じゃない。
芸術品みたいなゴーレムだけが闊歩する草原なんて、初級ダンジョンでは有り得ないせいで、頭が理解を拒んでいた。
初級ダンジョンは地下洞窟みたいな作りで、皆が思い描く様な場所だった。閉ざされた空間に響く足音と声。少し湿った空気。何処に何が潜んでいるか分からない緊張感が身体を巡る。はじめて挑戦した時は、冒険をしていると強く実感できてワクワクした。
なんだろうな。ここ。異次元と言うか、もう世界の理とは違う代物。
星5以上の冒険者は街に滅多に来ないので、ここが地下何階層まであるか不明だ。
俺は耐えられるだろうか。
「彼等に気を遣わせているので、急いで行きましょう」
「は、はい……」
ダンジョンの魔物達が気を遣うって、なに??
この人は、この人で何なんだ……




