第11話 これが誘拐ってやつか
「減る事なんてあるんですか?」
「何言ってんだ。工房が一つだけになったら、減るに決まってるだろ」
工房?? なにそれ?? 編む杖に、わざわざ???
「これは術者が自作するのが決まりですよ。若木が大樹になるように、一本一本時をかけて大地の恵みを編むんです。杖と共に成長するのが俺達エルフだって、作り方を教えてくれたひい祖母ちゃんが言って……ました」
いつの間にか言葉に力が籠っていた。我に返った俺は、周囲の視線に怖気づいた。
杖を修理するために金で素材を買おうとしている時点で、今の説明は本末転倒なんだよな。説得力が余りにも足りない。
と言うか、この杖はマイナーなのかよ!
これじゃ先輩魔術師からお勧めの素材を聞き出せない。自分で手当たり次第に買って、修理するしかないかぁ……
「はっはっはっ!!! 古き森の民らしい良い心構えじゃねーか!」
「うぉおあ!?」
ガンデンさんは何故か喜んで、大きく笑い声をあげながら俺の背中を思いっきり叩いた。
痛すぎる!!!
木の板でぶっ叩かれたみたいに全身に痛みが走って、倒れかけたぞ!!!
「気に入った! 就職祝いに素材をタダでくれてやる!」
「えっ!?」
喜びの声を上げたった俺だが、ラシエラさんの真っ直ぐすぎる鋭い視線が杖に注がれていて、行動に移せない。
「マスター。どうした?」
「この杖、生きていますね」
「あぁ、生きている。これは、そう言う杖だからな」
同じ表現する人もいるが、ラシエラさんには何が見えている様な気がしてしまう。
一般的な手杖や地杖は、木材と芯になる素材で作られる。本体である木材は、杖の基本的な性質・特性や得意とする魔術分野に影響をする。芯は木材へと術者の魔力を送る供給源であり、杖の力を引き出すだけでなく、総じて全属性を操れるが得意な魔術や扱いやすさを変化させる。
たとえば水属性が得意な木材に風属性の芯を合わせると、雨を降らせる等の広範囲の魔術の威力が上がる。これにも相性があり、水と火、風と土は喧嘩をし易く、作る場合はかなり吟味しなければならない。
そして杖は、〈自我〉〈意志〉に似た反応を示す。
剣士が魔剣や聖剣に誓いを立てるのと同じく、杖への宣誓を破った場合、魔術の威力が弱まる。日頃から手入れを行い、誠意をもって扱うと威力が強まる。などなど、精霊や妖精に近い存在へとも言えるので、魔術師は杖を粗末に扱ってはいけない。
「エルフの住む土地は、魔力を持つ植物が多く自生しています。ここでは、その杖に見合う素材は見つからないでしょう。私が提供します」
「ありがとうご」
お礼を言おうとした瞬間、何故か思い切り右手首を握られた。
ガンデンさんは〈やべっ〉と言葉を漏らした。
えっ、なになになに????
「マスターの悪い癖だ。まぁ、頑張れ新人」
「えぇ!?」
悪い癖ってなに!?
「では行きましょう」
どこへ!?!?
慌てて体重をかけて必死の抵抗をしようとしたが、無意味だった。
エルフは足長よりも平均身長が低く、それに合わせて細くて体重も軽い。あくまで比較なので、重さは有るには有るんだ。
なのに、ラシエラさんは子供がぬいぐるみを連れていく感覚で、俺をいとも容易くズルズルと引き摺っていく。
筋肉の塊なのか???
「あ、あの! 何処へ行くんですか!?」
ギルドハウスの出入り口へ真っ直ぐと向かうラシエラさんに、俺は訊いた。
「最難関のダンジョンです」
「は?」
は???????
「最難関のダンジョンです」
え? は? なに、どうして????
凄い良い素材あるのは確定だけど、無謀だろ!!!?
「お、おお俺は星3で、い、行くのは無理ですよ!? 俺が死にます!?!!」
「私が貴方を守ります」
さらっと何かカッコいいこと言ってるが、安心できるはずがない!!!!
うわああぁああああ!!! 誰かああああああ!!!!!




