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魔法屋
”魔法”
それは無から火を生み、傷を治し、天候すら操る。
正に神の奇跡だ。
しかし、その天からの”贈り物”は人間の欲によって穢されていった。
”魔法”が一部の人間に独占されるようになったのだ。
血統、知識、金、時間。
全てを持った貴族に、平民は縋るしかない、そんな世界。
「女神よ…。これがあなたの望んだ世界ですか…?」
そう嘆く者も、時とともに姿を消した。
数百年あと。
とある貴族の家に一人の娘が生まれた。
夜を閉じ込めたような黒髪と神秘的な紫の眼を持つ、聡明で美しい子供だった。
だが、その聡明さと純真さが仇となった。
「女神様の奇跡である”魔法”は人類全員で享受すべき。」
そんな彼女の思想は、貴族にとって受け入れがたいものだった。
なにせ、この世界の社会構造を破壊しかねない。
いくら聡明とはいえ、しょせんは世界を知らない子供だ。
結局、彼女はあっけなく貴族に嵌められ、その身分すら奪われてしまったのだった。
さらに数年後、平民の間で奇妙な噂が流れていた。
『魔法を売って歩く行商人がいるらしい。』と。




