第61話 答えは風の中に
出発してから気づいたのだが、あのエイドは思ったより海に近かったらしい。
夜間の山の印象が強かっただけに、目の前に広がった海岸線を目にした時は異世界へ迷い込んだかのような感覚だ。
大勢の足音に交じり、波の音が一定のリズムで重なる。
それが、まるで自然のメトロノームの役割をしているかのように、参加者の足音が調律されていく。
『おぉ〜!』
『キレイ!』
不意にそこかしこから歓声があがる。
見ると、水平線から朝日が上がってくるところだった。
みんなが出発を急いでいたのはこのためだったのだろう。
まるで、自然からのたどり着いた参加者へのプレゼントのようだとガラにもなく感動する。
同時に、光とともにムワッとした風を感じ、疲れた身体に気温上昇という自然からの新たなる試練を与えられる。
夜の山、朝の海、立て続けに現れる自然との対話でココまでやってきた。
週末のツーリングとは違い普段とは違う場面の連続だったが、意外と慌てる事もなくむしろ感覚を“取り戻す”感じを味わいながら進んできた。“不穏”とはいわないが“不自然”な懐かしさを思いながら、まとわりつく風にコチラこそ“不穏”ともいえる心の中にまとわりついている“違和感”を考えていた。
夜中のエイドで澪さんと再会して仮眠を摂るように言われたまでは覚えている。
あの時、何故か急に眠気に襲われ次に目覚めた時は方子に起こされた。
自分でも“寝過ごした”と思ったが、折り返しの距離は過ぎ夜は明けようとしていた。
現実として、山越えをしたみたいだが俺自身に実感はない。
いや、この疲労感はむしろ仮眠を摂る前より積み重なっている。
やはり俺は歩いたらしい。
そういえば、リアルな長い夢をみていた気はする。
以前現場で澪さんとの思考実験のような“仮の兄妹ごっこ”をした?昔話を聞いた?夜中に何があり何をしたのか、何が現実で何が夢なのか⋯それを確かめたくて澪さんを探したが、あの場所に澪さんはいなかった。
そういえば、ゴールでなんとかと澪さんが言っていた気もする。
それとも、さっき方子が言っていた言葉と記憶が混ざってるのか?
頭も身体も何も教えてはくれないが、分かっているのは立ち止まっていても答えは出ずゴールに向かって“進む”しかないということだ。
海風と浜の香りに“答えは風に吹かれている”なんて、ノスタルジックな言葉が一瞬よぎったが、答えは自分の足でたどり着くしかないようだ。




