第58話 進む者、止まる者
近づく明るさに既視感を覚えたワシ。
この温かみ、実家の風景に似ている。
とはいっても、ココほど賑わいも活気もないのだが。
そういえば、この前コイツが帰った時はホントに懐かしくて初めてコイツに感謝したものだ。
そんな事を考えていたワシの横で、澪が突然妹モードから医療者の顔になる。
『ちょっとあの方、体調崩してるのに本人気づいてないみたいなので声かけてきます。夜明け前ですが、妹卒業です』
「そんなの気にせんでええから、早う行け!」
『ゴールで待ってます“お兄ちゃん”!』
言うなり澪は離れてゆく。
「辿り着いたらの。というか、辿り着かんかったら怒りそうじゃの」
突然の兄妹の別れとともに、一方的な約束させられた気がしてワシは苦笑いした。
改めて周りを見る。
ココは70km過ぎだろうか、残り三分の一を過ぎているが思ったより多くの人だかりで賑わっている。
しかし、それもいくつかに分けられてる気がした。
ひとつは、完歩に向け英気を養う者。
仮眠を代わりに横になったり、装備などをチェックしたりしている。
そんな中に澪を見つけた。
一人の参加者とアドバイスじゃろうか、話し込んでいる。
他に目を向けると、リタイア組だろうかバスに乗り込む一団があった。
あれでゴール近くの最寄り駅まで送ってもらえるのじゃが、簡易休憩所を兼ねているのでまだ始発には間があるからそちらの意味あいが強いのじゃろう。
また、別のところでは一際賑やかな笑いが溢れている。
『いや〜、もう足が棒のようでコレを杖にして歩こうと思います。って足を杖に歩いてもそのままなんですけど』
あれは確かスタートすぐくらいでラジオに出てた芸人じゃな、のぼりもん・タカじゃったか。
ココまで来とるとは思ったより体力あるんじゃな。
とはいえ、言葉通りヘロヘロじゃから実際はココでリタイアで賑やかしの営業代わりか?
まあ、下手にズルして完歩装うよりもマジメな奴なのかもしれん。
そんな事を思っていると、不意に声をかけられた。
『会えないと思ってたんですが、辿り着いたんですね!』
振り返ると、馴染みのある顔が近づいてきた。
恒一のアパートの住人、方子じゃったか?




