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第52話 届かんままの手
恒一は昔っからそうだ。普段は何事にも動じん顔をしとるくせに、小さな躓きには大げさに反応する。
本人は否定するだろうが、体裁ばかり気にしとるように見える。
“こうしたい”より、“こうあるべき”を優先して、
流されてしまう。
ワシも、あいつの母親の文も、年を取ってからの子どもやった。
大事にしすぎたんかもしれん。
それに応えなならん、思わせてしもうたんかもしれん。
その上、大家族同士のワシら二人で長女の文と末っ子のワシだから、独りっ子の扱い方がわからんで、十分に可愛がってやれんかった。
そのせいで、人との距離の取り方も、
うまいこと教えてやれんかった。
だから、アイツが危なかった時に欠けた部分を助けてやりたいと宿ったんじゃが、結局何もしてやれんかった。
いつもはあいつがどうにもならん時だけ少しだけ手ぇ出しとったが、さっきは思わず干渉してしまった。
頑固なやつじゃけぇ、
無茶してでも最後まで行こうとするじゃろう。
ワシの出番もまだありそうじゃな。
今もアイツが自分で思っとる以上マイッとるから、少し休ませるか。
この前みたいな失敗せんように気をつけんとな。
あいつに気付かれたら、何を言われるかわからん。
……まあ、言われるくらいが、ちょうどええんかもしれん。




