第51話 見えない声
暗さと不安で、足探りのように一歩ずつ進む。
道は整っているはずなのに、
奥へ踏み込んでいくような錯覚に陥る。
このあたりから暫く、勾配がひどくなり丘超えというよりちょっとした登りに変わっていたのが“挑む”感覚になっているのかもしれない。
このペースでいいのか?荷物の背負い方は負担にならないか?下がってきた気温も相まって、背中とふくらはぎが、妙に強張り不自然な動きにしか感じられない。
すると、不意に足を引っ張られる。
恐怖と驚きに鼓動が早くなり、ヘッドライトで足元を恐る恐る照らす。
靴の片方の紐がほどけて、もう片方で踏んでいただけだった。
「脅かすなよ!」と、ブサイクな自作自演にツッコミを入れ、靴の紐を結び直す。
どこかでフクロウの鳴き声がし、嘲笑っているような誘っているような感じだ。
靴紐を直している間に、前の集団と少し離れた。
前方のヘッドライトを頼りに少しペースを上げた。
しかし、何故かライトは離れてゆく。
焦る俺は一度振り返り、足元や周辺を照らしてみる。
後方少し離れたところに小さな立て看板があった。
距離はないので急いで戻る。
『100kmウォーク順路』そこは二股に分かれた地点で先程までの道と逆を指していた。
コースはなだらかにカーブし、光の列に続いている。
危うくコースアウトするところだった。
さっきと同じくらい鼓動が早くなり、追いつかないとという強迫観念に囚われた俺は小走りに急いだ。
イベントルール上、走る事は禁止されているのだが、そんな事を考えている余裕はなかった。
もし、気づいていても目的のためなら細かいことは気にしなかっただろう。
【冷静になれ!まだ早い】
誰かが耳元で囁いた気がした。
魔法から解けたかのように立ち止まる俺。
我に返りあたりを見回した。
まだ、集団からは距離があり声が聞こえるはずもなかった。
同時に足に軽いしびれがはしった。
上り坂で急に走ったものだから、軽くだがふくらはぎがつったようだった。
もしあの“声”がしなかったら、痙攣を起こしていたかもしれない。
あの声は、なんだったんだろう。
答えは出ないまま、
俺はまた歩き出した。




