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第50話 静かな崩れ

少し歩くと、20km地点の標識が見えてきた。

空も、ゆっくりと夜の色に変わっていく。

まるで、見えない境界を越えたみたいに、

ヘッドライトが、あちこちで灯り始める。

俺はそれを、なぜか懐かしく感じていた。

どこかで見た光だと思った。

——そうだ。

昔、テレビで夢中になって見ていたレース。

夜に入るとき、こんなふうにライトが点いていった。

今は俺も、その中にいる。

期待と不安が入り混じるまま、スイッチを入れる。

前方に、点々と続く光。

飛行場の誘導灯みたいだと、場違いな感想が浮かんだ。

夢見心地は、すぐに現実に引き戻された。

躓いて転びかけた。

前のめりになっただけで済んだが、さっきまでは一度もなかった。

ここから先は、昼とは別の道になる。

そのせいではないだろうが、途端に全体のペースが落ちたのが光の流れが、ゆっくりになっているのが分かる。

さっきまでと変わらない道、しかし牙を剥いているのではないかと不安にさせる道。

俺にしてもさっきの躓きのせいか、足裏に意識が集まる。

路面の凸凹が、やけに分かる気がした。

ライトに照らされて、こんなに荒れていたのかと気づき、知らずのうちに下ばかり見がちになる。

結果、前傾姿勢で重みが増したように感じるリュックを少しでも軽くしたい衝動で俺は上着を取り出した。

季節は秋口で日が落ちると途端に気温が下がり、ここでも新たなるエリアへの突入を意識させられる。

着るか?まだ早いか?少し悩んだ俺だったが手に持つ煩わしさに負けて、羽織って腕まくりをすることにした。

思いのほか暖かみを感じホッとする一方で、腕に、小さな擦り傷がいくつもあることに気づく。

いつの間にか、こんなに。

痛みはない。

だが、こういうものが積み重なるのかもしれない。

先はまだ長いのだ、塵積で最後の最後であと一息を削りかねない。

そんな事を考え始めると、身体中が普通じゃないのではと疑い始める。

今更ながら、普通の状態ってと我ながら笑いが込み上げてくる。

不意に“身体が教えてくれる”

その言葉を思い出す。

——いや。

これは、教えているんじゃない。

疑わせているだけだ。

そんなことを考えながら、歩き続ける。

記念すべき50話目。

お付き合いありがとうございます!

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