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第49話 少しだけ整えて

歩幅も、ペースも、正解かは分からない。

それでも、“無理のない”形が、少しだけ分かってきた気がする。

山の麓を歩き続けるうちに、道は少しずつ広くなっていた。

ところどころにスペースがあり、車を停めた人たちが応援している。

『パパ頑張って〜』

参加者の子どもだろうか、小さな子が母親らしき人と一緒に手を振っている。

俺のすぐ後ろにいた、さっきまで疲れが見えていた父親らしき参加者は、満面の笑顔で応えていた。

ガラにもなく、少し羨ましいと思った。

『兄ちゃんも頑張って歩いて、カッコいいとこ見せて、誰かのハート射止めんね!』

途端に、周りから声が上がる。

『兄ちゃん頑張れ〜!』

『そうだそうだ!』

『ゴールで待っとるけんね!』

無責任な声に一段と沸く。

俺は恥ずかしさもあって、手を挙げるだけで足早に通り過ぎた。

少し先に、テントと人だかりが見えてきた。

湯気が、夕暮れの空気に溶けている。

まさにオアシスと呼ぶにふさわしいそれは、“寄っていかんね”と囁いているようだった。

近づくにつれ、大鍋やオニギリ、飲み物など誘惑に満ちた品々が見えてきた。

『お疲れ様です。どうぞ』

手渡された紙コップは思いのほか熱く、できたてをという情熱がトッピングされているかのようだ。

それは豚汁だった。

歩きながらでも飲みやすいように、具は小さく刻まれている。

それでも、ちゃんと食感は残っていた。

一口飲むと、程よい塩味が温かさと一緒に身体の隅々まで染み渡る気持ちになった。

その隣にはバナナの輪切り、一口サイズで剥きやすいように斜め切りになっている。これも一口、口に入れる。少しだけ身体が落ち着く。

横に置かれているオニギリは、友人の実家でごちそうになった時のように色んな具があって迷いそうだ。

かといって、これ以上食べたら満足しすぎて足が止まってしまいそうなので、高菜オニギリをひとつとりそのままポケットに入れた。

少し先は救護エリアらしく、躓いたりした人だろうか手当を受けていた。

澪さんがいるかなと思ったが、姿は見えなかった。

まあ、会える時には会えるしタイミングだなと思いつつ進むと、湧き水の汲み場があった。

この先はつぎのエイドまで自販機も店舗もない道中が続く。

水分補給のため自前の容器に補充する人の姿もあった。

俺はまだ充分残っていたので、素通りしたがこれが吉と出るか凶とでるかは、山の神のみぞ知る。

エイドの最後には“もうすぐ20km、準備はOK?”と書いたプラカードを持ったスタッフの人が

『ファイトです。上着とライトは忘れずに』

声を背中で受けながら、歩き出す。

 

空は、もう昼の色ではなかった。

 

——ここから先は、夜になる。

 

踏み出す一歩に、自然と力が入った。

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