第42話 同じ質問
『あと、1週間だな』
『仕事に影響ないくらいにしとけよ』
『最初のチェックポイントくらいはクリアしろよ』
みんな口々に好きな事言っていた。
なんか、変なプレッシャーを与えられた気もするが、まあボチボチやるさ。
とはいえ、なんでも途中で辞めるのは嫌いだから、成り行きであっても完歩はしたい。
何かアドバイスないか、プロの意見聞きたくて澪さんに連絡してみた時の事だった。
『あなたも出られるんですね。実は私も医療スタッフ兼ねて参加するんですよ。参加者皆さんの体調不良とかに迅速に対応できるように、参加して実際に歩くんです』
「医療スタッフ?」
『ええ』
「山田さんも安心ですね」
沈黙。
『……出られなくなりました』
「えっ」
『でも、散歩は続けてますよ』
『歩ける距離で』
『歩けるうちに、歩いた方がいいですよ』
通話が終わったあと、しばらく画面を見ていた。
山田さんの番号を開きかけて、閉じた。
今さら何を言う。
出られない人に、出ますと言うのも違う。
俺はスマホをポケットに戻した。
歩けるうちに、歩く。
それくらいしか、できることはなかった。
そういえば、アドバイス貰うために電話したのに、山田さんの事の衝撃でその話をできてなかった。
改めて澪さんに電話する。
「何度もすみません。何かアドバイスとかもらえませんか?完歩は無理としても、迷惑はかけたくないんで」
『何か新しい事をこれから変えてもつけ焼き刃になるんで、基本的な事のチェックを』
「確かに」
『まず、靴は履き慣れたものを』
「新調しようかと」
『やめてください。確実に靴擦れします』
『それから、爪は短く』
「そこですか?」
『そこです』
『あと最初、飛ばさないでください』
「そんなに元気に見えます?」
『途中で無理する人ほど、最初は元気です』
『後半は足より、気持ちが先に折れます』
「気持ち?その時はどんな風に対策したらいいんですか?」
『そういう時のために“振る舞い”とかのエイドがあるんですよ。あれは単なる地域起こしとかPRの場じゃないんです。』
「給水とかはともかく、軽食とかはペースが乱れたりしてマイナスかと思ってました。」
『昭和らしい考え方ですね。全ては否定しませんが、“元気注入”ができます。誰かとの触れ合いは心の栄養補給です。』
「ありがとうございます。なんか足場が固まった気がします。」
『そういえば』
そこで、澪さんは言葉を切った。
『山田さんにも、同じこと聞かれました』
それを、今さら聞き返すことはできなかった。




