表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/65

第31話 収まりの悪さ

あの日の“収まりの良さ”。

まだ、その正体を判りかねている日々。

いっそ気のせいにしてしまうか?

だが、それをすると“違和感”からも逃げてしまうようでできない。

あの“収まりの良さ”のせいで、日頃のすべてが“収まりが悪い”ように思われていつもと変わらないのに落ち着かない。

そんな中、現れた澪さんは突然告げた。

『おはようございます』

「おはようございます」

『この前の件ですが⋯』

何故か一瞬躊躇った。問題があったのか?

「何かありましたか?」

『いえ、問題ありません』

『でも“演じた”瞬間、あなたは変わりました。』

「そりゃそうでしょう。“演じた”んですから。」

『そうなんですが、そうじゃないんです。』

「それは?」

『演じるなら、迷いがあるはずです。でも、あなたは迷わなかった。』

「それは仕事だから⋯」

『行動自体ではなく、“身体が反応した”事が演技ではない気がするんです。』

分かるような分からないような、でも澪さんははぐらかしている風ではない。

『まだ、私自身上手く説明できないんで、“固定”すなわち演技をお願いするのではなく、“観察”してみる事でデータを増やしたいと思うんです。』

「“固定”ではないという事は、俺は普段通りで過ごすって事ですか?」

『そうなります。普段のあなたの“中”にデータを見いだしたい』

最近の“収まりの悪さ”を抱えたまま、観察される。 それは、あまり気分のいいものではない。

「そんな事しても、何も変わらないんじゃ?」

『変わらないなら、それが答えです』

澪さんはあっさり言う。

『あなたは“変わらない”人だと』

それは、少し違う。

「……別に、変わる必要はないでしょう」

声が低い。

自分でもわかる。

澪さんは、逃がさない。

『必要の話ではありません』


『あなたは、変わらないと困る顔をしていました』

一瞬、言葉に詰まる。

「困ってません」

即答だった。

速すぎる。

『そうですか』

否定も肯定もせず、ただ観察する目。

それが、腹立たしい。

 

俺は歩道と車道の境界を確認する。

無意識に。

『ほら』

小さく言う。

『もう、背負っています』

「……仕事です」

少し強く言い切る。

言い切ったのに、収まりが悪い。

『あなたは、“収まりがいい”側に戻りたいんですよね』

「戻りたいというのはどういう意味で?」

澪さんは何も言わない。

ただ、観察している。

それが一番、収まりが悪い。

澪さんが去った後。

歩道と車道の境界を確認する。

無意識。

迷うな。

判断は早い方がいい。

昔、聞いた声がした。

……だから何だ。

仕事だ。

それで済ませるつもりだった。

なのに、収まりが悪い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ