第25話 瞬きだけの返事
『私を同じみたいに言うのやめてくれます?でも、私も会社に飼われてるイヌみたいなものだから違わないか⋯。でも間違いなく部屋から出してもらえない室内犬』
「会社勤めがみんな犬だったら、日本はイヌ大国ですね。良かったな、お仲間いっぱいで」
いつの間にか、足元にいたイヌの頭を撫でながら言った。
『詳しくないってホントなんですか?妙に扱い慣れてません?まるで兄弟みたい』
「確かに“会社のイヌ”って言いましたが、それはちょっと⋯。
ホントにイヌ飼った事ないですよ。」
うちはずっと団地暮らしで、ペット禁止だった。
だから飼いたい飼いたくない以前の問題だ。
でも、待てよ。
何か引っかかるものが⋯。
そうだ、いつか田舎のばあちゃんが親父が小さい時に兄弟みたいに育ったイヌがいたって言ってたな。
一番下だった親父が弟のように接してたと⋯。
“あの子は、何かある度にイヌと話してた。一度、二人して家出したこともあったんだよ”
直接会った事もないし、親父の法事の時に聞いた話のはずだ。
まあ、そんな事でイヌに慣れるわけもないが。
「さっきの会話を聞いてて、同じ“匂い”がしたとか?」
『そうなの?お前』
肯定なのか否定なのか、イヌは瞬きしただけだった。
俺は視線をいち早く外した。
『あっ、いけない。そろそろ私は“小屋”に戻ります。エサをもらえなくなっちゃう』
方子は自分の言葉に可笑しかったのか、小走りに去っていった。
「さて、俺も帰るかな?お前はどうする?」
言っておいて、返事も聞かずに立ち上がった。




