第24話 話盆明け
帰り道は、不思議なくらいスムーズだった。
とはいえ、夕方近くにはなったのだが、夏の夕方明るいうちに家に着いた。
『おかえりなさい』
バイクを停めてヘルメットを脱ぐと、方子に声をかけられた。
『エンジンの音が聞こえたんで、降りて来たんです。コレ』
方子の手にはブラックの缶コーヒーが握られていた。
『なかなかお礼渡す事できなくて⋯。何日かバイクなかったですが、何処か行ってたんですか?』
「見かけによらず律儀だね。お盆休みちょっと田舎にね。」
『見かけによらずって⋯律儀ついでにこれもどうぞ。』
と、小さな袋を手渡した。ワンポイントで犬のイラストが入っている。
『私もお盆に家族で神社に行ったんです。それで、その神社が犬が守り神らしくて、ふとあなたが思い浮かんで⋯だいぶ時間経ってたからコーヒーだけというのもと思ってお守りを』
「別に良かったのに、でもありがたく貰うよ」
そう言って、袋を開けたのだが、
「これを俺にどうしろと?」
入っていたのは“安産”のお守り。
『えっ?ゴメンなさい。コッチです。』
彼女はポケットから袋をもう一つ取り出した。
コチラは“家内安全”だ。
『そっちは巫女さんが“一番売れてます”って言ってたから買ったんです。』
(それにしても、“安産”?天然か⋯)
「改めてありがとう。お返し代わりじゃないが、コレ良かったら食べて。」
『逆に悪いです。でもありがとうございます。コレなんですか?』
「うちの田舎の郷土料理“けんちょう”っていうんだ」
『美味しそう!煮物とかあまり買わないから嬉しい』
「喜んでくれて良かった。でも、“買わない”?“作らない”じゃなくて?」
『それより、最近“あの子”見ました?』
あからさまに話題変えたな!
「いや、俺は暫くいなかったしな。」
『私も最近見てなくて、保健所に捕まってないといいんですけど心配で。』
「犬もお盆休みじゃない?」
『犬にもお盆休みあるんですか?でも、お盆休みおわっちゃいますよ』
そこに、“呼んだか?”とばかりに犬が通りかかる。
『ほら休み明け出勤。でも良かった。捕まってなかった。保護団体とかに連絡したほうがいいのかな?』
「保護されるのが幸せとは限らないよ」
『じゃあ、どうするのが幸せなんですかね?』
「俺に言われてもな」
気がつけば、犬がじっと見ている。
「お前はどう思う?」
返事代わりにあくびひとつ。
『無責任』
「こいつの幸せはこいつが決めるさ」
(そして、俺もな)
いつの間にか、蝉の声が遠くなっていた。




