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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
幕間
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【29話】幕間・ベルゼブブさんは予想通りの機械音痴

 


「ぷらぐ……? こんせん…と……? 訳わからない単語多すぎだよ本当、何語なの此れ、絶対セムとかヘブライじゃない……気がする、」



「最早滑稽ですね、ウケる」


「あのですねベルゼブブ様それは此処にこうするんですよ」


「ああ、へー……」



 執務室で機器に四苦八苦するのはベルゼブブ。

 それを甲斐甲斐しく手伝いをするタルキマチェに後ろで腕を組み笑っているのはフルーレティである。



「そもそも此の人古代の神ですから機械なんて発想がないんですよ。億超えの神は矢張りそういうのに疎いと……」


「事実だけど酷いよ? フルーレティ」



 そうベルゼブブは重ねた歳は億を超え此処近年で驚異的な発展を遂げた人間達の技術力に着いて行けず脳内では発展が黒電話止まりとなっている。


 ベルゼブブの右腕と左腕は幾度とも説明を繰り返したが凝り固まった自然を基礎とした常識という砦を崩すのは二人がかりでも困難であった。黒電話まで持っていけただけでかなりの美技(ファインプレー)であったのだ。



 今回ベルゼブブが頭、目を回しているのはフルーレティとタルキマチェの熱望により導入された―――


 ロボット掃除機、所謂ル◯バである。




「此れでもレトロ判定の家具ですけどね」


「まあ無いよりはマシでしょう、館の掃除するのレティですしレティが楽になるのならレトロでも何でも来いですよ」


手前(テメエ)は掃除しねえだろ。掃除すんのは悪霊達だ」


「総監督はレティですし大差ないでしょう? そんな細い所にまで指を突っ込んで……埃なんかでてこなぇよ?」


「アハハハ、くたばれ」


「アハハハ、御前がな」



「「アハハハハハハ」」



 ベルゼブブは二人に聞こえないように、



「相変わらず仲悪いなぁ」



 そう呟いた。


 続けてベルゼブブは云った。。



「それでこの子……ルン……バ? っていうの?」


「別に自分で名前つけて良いんですよこういうのは」



 タルキマチェがベルゼブブに向かって解く。

 成る程とベルゼブブは納得した。


 この館には電気系のインフラは流石に通している為電化製品の使用自体については全く文句はない。だが肝心のベルゼブブは使い方が分からない、生活に支障が出る可能性がある為に今まで投入されてなかった。



 故に今この瞬間が館内の歴史に残る瞬間ともいえる。



 円型の機械生命体は一人、そして確実に進行を始めた。



「おおーー、すご、動いた、動いた!」



 興奮気味に口を早めるベルゼブブに何処か誇らしい気持ちに成る彼の右腕と左腕。


 ベルゼブブは興味深そうに動く姿をしゃがみ込み眺める。



「自立して……動く……はぁ……すご、コシャルでもこういうの作れるのかな……? 出来そうだなぁコシャルなら」



 呟くベルゼブブは機動生命体を興味深そうに眺める。


 ベルゼブブの後ろで腕を組んいたフルーレティは云った。



「地獄ってやっぱり文明の進みが遅すぎる節有りますよねぇ。文明というか近代文明の取り入れが遅いんですね」


「ベルゼブブ様のご意思ならば文句はありませんよ(わたくし)は」


「最終的な決定権は全部私だしね。裏の支配者って感じでなんだか格好良いよねー」


「お気楽な脳内ですね実に微笑ましい」



 ベルゼブブは機動生命体を眺める。


 それを二人は眺める。



「……まあ数日すれば飽きますかね、」



 タルキマチェがそう呟いたのが引き金であった。


 実際間近で観察するのが初めてな機動生命体。幼い男児が見た事も無い未知の生物に熱狂し観察する。勿論―――



「へぇ……」



 ベルゼブブも例外では無い



 *



 館の料理長ニスロクは館内を歩いていた。


 待ち時間が暇でニスロクは調理室から出、毛足の長い絨毯の上を歩く。



 左右対称の黒焦げた様な色の翼、右目は白く左目は翼と同じく黒く細い瞳孔。短な金髪に厨房服(コックコート)と白の手袋。元は天使の現堕天使。


 現在は昼下がりで次の三時の間食の時間の為に下準備中。時間を置く必要があり何もすることが無いのでただ廊下を徘徊するニスロクは見慣れた館内を観察していた。



 キラリと輝く天井の照明は一級品。今足元にある絨毯も確か高いの。廊下の所々に配置されている小さめだが明らかに高いと判る小物達。偶に悪魔に関する絵画も飾られているが誰なのかはニスロクには判別しかねていたが。


 次に見えるのは館の主ベルゼブブ。



「ああ、やあニスロク御機嫌よう」



 正面から来たベルゼブブにニスロクは礼儀よく頭を下げ其の儘挨拶を続けた。



「御機嫌麗しゅうベルゼブブ様、館の端まで訪れられまするは珍しいですね」

【ベルゼブブの配下・料理長】ニスロク

 能力:味覚操作、探し物の探知、火を吐く、危機察知、食物輸送



「あはは其れもそうかも、基本は此方側には来ないからね。」



 ニスロクは突っ込もうか悩んでいた。笑顔の裏で盛大に悩んでいた。



 此れは突っ込むべきなのか、と。



 ニスロクの目に間違いがなければ今ベルゼブブ様はロボット掃除機の後を追ってきて此方に来た気がしたのだ。


 否、私の左目視力殆ど無いしただ見間違えただけかもしんない。流石に魔王であり地獄一に強く権力を持つ圧倒的な支配者がロボット掃除機を稚児が新しく与えられた玩具を喜んで遊ぶような顔で見ていた訳がない。私の見間違えだ。そうに違いない。


 私の葛藤を無視しあろう事か此の御方はロボット掃除機を持ち上げて見せてくる。



「見て見てロボット掃除機……? っていうんだって! 自分で動くなんて凄いよねぇ!」



 受け入れたくないという事実と何故掃除機の裏面の方を向けられているのだという疑問にそろそろ耐えられなくなる頃合いのため一旦引き上げることをニスロクは選んだ。


 出来るだけベルゼブブを傷つけないようにニスロクは自身の脳をフルに回転させ考えた。


 そして苦し紛れに思いついた案を実行することにした。時計を取り出し目線をやった。



「ああ、すみませんベルゼブブ様。間食に出す料理の焼きがそろそろ終わるのです。」


「そう? なら早く戻ったほうが良いか、引き止めて悪かったね」


「いえいえ滅法も御座いません。それでは失礼いたします」



 一礼しベルゼブブ様の横を通り抜ける。


 やったやってやった、此の良くわからない空間からの脱却してせたぞ流石私度胸だけはしっかりとしてる。

 此処で与太話だが私の零落原因は完全に自業自得の罰としての零落である。零落原因の大方は自業自得がほぼであり他人の所為というベルゼブブ様の原因のほうが珍しいのだ。


 まあ其れは良い。


 廊下の曲がり角を左に曲がろうと体を曲げた。



 目があった。



 同じ館に住み着いて働くベルゼブブ直属の配下左腕と右腕の二名。

 壁に身を預けしゃがみ込むタルキマチェとフルーレティとニスロクは目があった。


 無言だった。誰も何も語らずその場に漂う空気で了承の意を示していた。


 ニスロクは無言で二人のそばに近寄り合わせてか彼女自身もしゃがむ。



「……何してんすかアンタ等」



 一応声を抑えて問い掛けた其れにタルキマチェは応える



「あれ?解りませんか?」


「意外と理解しやすいかと思われますが」


「ああ今回はフルーレティさんもそちら側と、」



 正直何をしているのかニスロクには測りかねていた。というより考えたくなかった。


 金属バット片手に微笑む二人の行動原理とか考えたくない。



「それで……一体何を…?」



「「あの糞ロボットをブッ壊しに行くんですよ」」



「それまた何故……ロボット導入で一番喜んでたの貴方達じゃないですか」



 私の呟きを聞こえないふりして二人が話し出す。


 普段超絶仲悪いのにこういうところ(ベルゼブブ様関連)だけは気が合って仲いいんだよね君達。知ってたけどさ。



「最近見て分かる通りベルゼブブ様が掃除機ばかりに構うようになったので…」


「だから破壊という強硬手段!?」


「レティは…………仕事はするんですけど……なんかムカつくので」


「こっちは此方で理不尽!?」



 此れ、どうしたら良いんだろ私。


 見逃したほうがいいのかなにか言ったほうがいいのか。でもベルゼブブ様が付けられてる二人組に気づかないわけもない。だがわかっていて放置しているとも思えない。


 ベルゼブブ様は普段から底が見えない御方だ。真意を掴もうと数多くの悪魔たちが画策しているが其れに成功させたものはいない。



「取り敢えずベルゼブブ様は電化製品など電気の流れるものは目が見えずとも感知することが出来ます。ベルゼブブ様自身は元々雷をも司る嵐と慈雨の神で在られましたから。故に電気系統への察知能力は非常に高い」


「だからさっきあらかたの電子機器おいて出てきただろう。電気に反応しそうなもの腕時計とか全部」


「まあな、加えベルゼブブ様はああいう緊張感が抜けたときな顔が時は隙です」


「大概の奴がそうだろ」



 フルーレティがもっともな発言を繰り出し次にタルキマチェに提案してみせた。



「眼の前で破壊するなんて考えるなよ、隙を見て破壊するんだぞ。だがその後確実に拗ねるから好物でも用意しておいたら大丈夫だろ」


「ああそうだね、丁度間食の時間だ。誰かがタイミングよくレタスをふんだんに使用した一品でも提供してくれれば話は軽やかに進むのだがな」



 最後のタルキマチェの一言を吐き終えた後に急に二人が此方を見てくる。



「いや、あの、なんで見てくるんですか二人」←料理長だから



「理由は一つですよ料理長さん」


「レティ達の手の届かないところお願いしますね、よしじゃあそれでいきましょう」


「おい待て待て待て餓鬼共」



 私をこういう企みに巻き込んで頂くのは大変に辞めてほしい。

 というか勝手に仲間判定してくるのもやめなさい。同じベルゼブブ様の部下としての仲間ということは認めるが今現状の関わり合いでの仲間は絶対に私は認めない。


 此の中では一番歳上な私はきちんと年下を諭し考えを正す方向へと舵を切り替えた。



「よく聞いてね二人共。まず挑む相手が悪すぎるよ、悪魔の中でも一番で神々の中でも一番だったときすらあるほどの実力持ち。単純に考えて叶うはずない此れで終わりわかった?君等」



「「ああ、解った。突撃だな」」



「莫迦だよね君等」



 私はこれ以上巻き込まれる訳にもいかない。


 立ち上がりズレた手袋の位置を直す。



「勝手にしなよ餓鬼共。私先に戻っとくから」



「ええお気をつけて、ああ例のお願いしますよ」


「フルーレティ君も言うね……私が君たちの仲間前提なのが解せないけど」



 まあ彼たちならなんとかやるだろうが……



 彼ら二人を背に歩みを始めた。


 あの二人は中が極端に良い時と悪い時がある。良い時は大概ベルゼブブ様が関わることであり其れは二人とも根本の気持ちは同じだからと考えられる。


 ただ仲が悪いときのほうがめっぽう多く殴り合いの喧嘩でも始めようものならば此の館内で止められるのはベルゼブブ様だけになるほどの規模に発展する。


 原因は大方予想はついている。

 あれがキッカケでありその後に続いた不遜な態度で彼が不満を我慢出来なくなったのが理由だろう。


 私は元々エデンの園の禁断の樹を守護していた天使階級七番目権天使。

 今のサタン様の侵入を許してしまったことによる責任追及で今私は此処にいる。だが其れも別に良かったと今の私は考える。

 好きなことが出来て好きなように過ごせる、此処は私にとってはあの方たちが形容する地獄ではないと考えた。



 恐らくベルゼブブ様も同じ考えである、その事を願って私はレタスの調理法(レシピ)を考える。



 *



「何で二人して壊すかな!?」


「「…………」」



 ニスロクは間食に出す料理を抱えベルゼブブと部下二人が待つ部屋へと赴く。



 其処にはシャンデリアの灯りの下に照らされつつ椅子に腰掛けるベルゼブブの後ろにベルゼブブが見えないことを良いことにしてやったりの表情をするタルキマチェとフルーレティ。


 ベルゼブブは何処か不満げに口を尖らせ不満を吐く。



 二人は部屋に入ったニスロクの抱える盆の料理を見て二人して親指を立てて此方を見て微笑んだ。



 一応私は仲間の一人らしいので親指を建て返してあげた。



「君達三人してなにか企んでたわけ…?」



 ベルゼブブ様が眉を顰めて問い掛けてくるので作戦通り盆の料理をベルゼブブ様の眼の前に差し出し、



「まあまあ、どうぞベルゼブブ様。貴方様の好物のレタスをあしらえたものでございますよ」



 ニスロクは朗らかな笑みを浮かべ盆で微笑む顔を隠した。



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