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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
幽鬼揺々参道通行
23/28

【22話】幽鬼揺々参道通行Ⅷ

 



 死には此の世の誰も逆らえない


 神だろうが悪魔だろうが天使だろうが妖怪だろうが人間だろうが


 どんな者でも其れには逆らえない



 人間なんて以ての外



 時は酒呑童子討伐直後の夜明け頃



 *



 意気阻喪と云った具合だろうか場の空気は重い



(当たり前だ、常に喋ってた文殊が死んだんだ、でも其れ以上に…)



 土蜘蛛に相対する前に文殊が病人として隔離されてた部屋。


 其の部屋に瓢は一人。


 顔を彩るのは絶望唯一つ。



 武将源頼光は酒呑童子討伐の際に身を一つにして奮闘。其の結果死亡。


 一度は源頼光が酒呑童子の首を斬ったが生首に成っても酒呑童子は死ぬ事は無く最後の足掻きでか頼光の首に噛みつき其の儘神経や欠陥ごと首を噛み千切った。


 首には大事な神経等が集中しており頸動脈等の脳に繋がる血管が噛み千切られ治療の甲斐なく其の儘事切れたらしい。



 僕は其の場に立ち会うことすら出来なかった。



 酒呑童子の討伐は天皇直々の任務であった。故に表向きでは源頼光の従者の一人である僕は参加することは許されなかった。

 別に大丈夫だろうと思った今回も、



 でも訪れた結果は―――死


 神すらも抗えない超常現象



 何時か訪れる最終終着点。



「……其処に居たか瓢」


「…御前か卜部(うらべ)



 障子に体重を預け真面目な顔で此方を見る。

 普段の卜部からでは先ず考えられない表情だ。



「今後について話す客間に来い」



 冷酷に、目の前にある天の啓示を感情を殺して読み上げているに等しかった。



「いや、」


「来い」



 食い下がった瓢にも卜部は何時にも増して強気で、

 変貌の仕様に瓢は目を見開ける。


 卜部の押しに引かず瓢は動かない。



「話す事なんかあるのかよ…!」


「あるそれに緊急を要するものだ早く来い」



 卜部が瓢の手を無理やり引く。



「おい…! 引っ張んなよ!」



 吠えても卜部は引かない。

 顔を硬直させた儘腕を引く卜部に流石に異変を感じたのか瓢は押し黙り黙して卜部に連れて行かれた。



 *



 客間に集まったのは頼光四天王の卜部、渡辺、碓井に坂田。そして何か言いたげな顔を浮かべている瓢の計五名である。


 皆客間の畳に円を描くよう座っている。


 畳の匂いが今日はよくする。周りが静まっているからか微風の音も人の息遣いも良く聞こえる。



「…議題に関してだが…御前の事だ瓢」



 渡辺が低い声で瓢に向けて声を出した。



「……僕か、」


「此れからどうする積もりだ、御前は妖怪で我々は人間だ。価値観も違うし性質も違う辿ってきた歴史も違う。御前の隣に居た源頼光はもう居ない」


「………」


「瓢、君には十分な能力も才もある、どう使うかは自分次第だ」



 坂田にかけた言葉に、瓢は色々考えている素振りを見せた。


 視線を左右に顔を俯かせ黙する。

 彼にとってそれがどんなに重要な問題か、周りの人間には手に取るように判っていた。彼はまだ物の分別がつかない幼子。

 其れを導くのは大人の役割でもあるが時には自分で選ばせる事も重要だ。



「………妖怪の事より…人間の事の方が今は理解がある、人間と過ごす選択肢も………良いと思うけど、一度ぐらい…同じ種族の、妖怪と……接してみたい」



 誰も、瓢の声を一言取り漏らす事無く耳を傾ける。



「其れで……我儘かもしれないけど…偶に御前等と逢う…とか、妖怪の方には顔見知りが居ない訳だし……見て安心できる顔が有った方が良いな……って思ったり」



 普段言わないことに対する羞恥心か瓢が顔を下に向けた。

 其れは瓢の強がりにも見えた。まだ頼光が亡くなったことを受け入れられていないのか、其れを隠したいのか


 周りの皆は不思議な顔をしていて、普段からツンデレ気味な瓢のデレは見たことのないものが多かったからなのかそれとも別の理由があるからなのか。


 渡辺が語ろうと口を開いた所、卜部がそれを静止。渡辺に変わって卜部が語り始める。


 この話によって瓢がどう出るかはわからなかったでも話さなければならない事は誰もが承知していたから。



「瓢、お前は妖怪をどう思っている」



 先ずは何かを挟まなければ、他愛のない、でも次に繋がる話を


 瓢は先程までの話からの内容の突拍子の無さに驚いた顔を浮かべていた。少し考えたあと、口を開いた。



「お前らが知ってるとおり僕も妖怪だ、先程話した通り、同種の妖怪にも興味がある。どう思ってるかの問いにはまだなんとも言えない、でも」



 瓢の脳裏にあるのは土蜘蛛退治に頼光と話した事



「僕は妖怪に手をかけられなかった。同じ種族だ、そう簡単に手をかけるなんて事、僕には出来なかった。僕の中でハッキリしている僕以外の妖怪の思いはこうだ」


「そうだな、お前ならそういう」



 卜部は納得したように頷いた。

 そして何かを語る決意をした。



「瓢。酒呑童子討伐後、天皇や周りの貴族達は妖怪を明確な悪だと判断した旨の事が公表された。」



 卜部が一拍置く。瓢の顔は見れなかった。



「だが実際それは酒呑童子が暴れている時の事だった。我々が酒呑童子の討伐に身命を賭していた間に天皇が束ねた軍が妖怪達の住んでたとされる里を襲撃した。妖怪なら子供も大人も皆殺し、見境のない虐殺だったと聞いている。」




「…は?」



 言葉を発した後同時に瓢は立ち上がり卜部に胸倉を掴んだ。


 然しその事を予感していたのか他の皆が抜刀、刃を人体における急所に触れるくらいで止めた。



「おい、僕は御前らがそんなに莫迦だとは思わなかったぞ、僕には物理攻撃は効かない。其れを知っていてのこれか? なら生温過ぎるぞ」



「一応の牽制っていうやつだよ瓢」



 碓井が皆の代わりに言葉を投げかけた。

 勿論全員が瓢が刀による攻撃が効かない事については熟知していた。物理攻撃無効は皆からは周知の事実だった。



「取り敢えず話を最後まで聞け瓢」



 瓢に胸ぐらをつかまれていた卜部は何処か達観した目で語った。



「俺は最初に言っただろう、御前の今後について話す急を急ぐ用だったと。俺達も其の事について聞かされたのは夜が明ける数刻前だ。使者に云われたよ"貴方がたの陽動があったおかげで此方は難なく仕事を終えられました"だとさ、妖怪の総大将だった酒呑童子が襲撃された衝撃で注意が散漫になってたみたいな事も事細かに聞かされたよ。」



 卜部に映る瓢の顔は一言では表せられない。


 怒り、裏切られたという絶望、哀しみ其の全てが集結された顔であった。



「僕をどうしたいんだお前等は貴様らが敬愛して止まない天皇陛下の判断通り僕を悪だと判断してまたそに刃を僕に向けるか」



 悲痛な顔で放ったそれは稚児の拒絶だった。

 誰かに道を指し示してほしくてのたうち回っている子供に等しかった。


 卜部は云った。



「天皇に仕える陰陽師の中に安倍晴明と蘆屋道満っつうやり手が居る。御前の存在が認知されるのも時間の問題だ。命が惜しければ此処を直ぐに発て、そして二度と近づくな。」



 拒絶には拒絶で返すのが一番未練がなく一番後悔が大きい。


 瓢は卜部のことを投げ捨てるように手放し荒々しい音を立てながら客間の襖に手をかけた。



「判った。お前等に合うのも顔を見せるのも声をかけるのもこれで最後だ、だから一言云わせてもらう」



 ――――――



 言葉は宙を漂い続けていたが襖が閉まる音で言葉は地面へと音もなく落ちた。



「子供だな」



 誰かが言った。



 ―――お前等と一緒に過ごした時は、悪くなかった




 *



 瓢は気持ちを片付けられないまま飛び出してきてしまった。


 何も考えが纏まらないまま歩いていた。



 心の中は雑音ばかりで、でも頭の中は自然と澄んでいた。



 同じ種族が持つ特有のナニカに充てられたのか、瓢が無意識のうちに辿り着いたのは卜部が話していた妖怪の里だった場所、その惨状も一言では表せられない。


 様々な色の血痕が飛び交い生々しい肉が彩り目玉が此方をジロリと睨んでいる気がした。



 更に奥へ進む



 軍は一時撤退したのか人影は見えなかった。

 里の奥にはまだ片付けられていない妖怪達の死体。


 のっぺらぼうが顔もないのに痛みに耐えてそのまま事切れた様子が手に取るように判った。親の轆轤(ろくろ)首が子供を守るように覆い被さっていたが子供もろとも弓によって射抜かれていた。百々目鬼の持つ目が辺りに散らばっていた。



 気持ち悪かった。


 だから吐いた。

 ぬらりひょんは人間味あふれる妖怪だ吐く行為も出来る。



 吐瀉物はこの惨状を彩る色や飾りにすら成れなかった。



 瓢は呆然とした気持ちで足を動かした。




 次に着いたのは酒呑童子の気配が漂う洞穴。


 でも洞穴は木の檻により穴は閉じられいたるところに呪符が貼られている。



「何だコレ……封印か?」



 貼られている呪符をよくよく観察する。


 何か字が書かれているのが判る。目を凝らした。



「急々如律令、陰陽師に連中が使う呪いか。其れに五芒星…」



 酒呑童子討伐に呪術師が関わっているとは知っていたが、



「此れは討伐と云うより封印か…?」



 感じる妖力は邪悪で重々しい。

 もう一つ感じたのは圧倒的な戦闘能力、僕じゃ到底かわないような



 否、今は其れはどうでもいいか、



 洞穴近くには紅い血が周囲を彩っていた。その一部に地面に巨大な紅が彩られていた。


 その中央に刺されている太刀を確認し瓢は急いで近寄った。


 太刀に結ばれている紙を取り広げた



 ――童子切、未来を迷う稚児へ



 童子切、とはこの太刀の事だ。文殊が愛用していたのは近くで見ていてた僕は知っている。


 刀の振り方は、前の持ち主が護衛にと教えてくれた。



 瓢は決意する、刀を地面から抜き刃に決意を込める。



「決めた、僕は妖怪達を統率する。貴様酒呑童子よりも良い大将になり二度と人間が我々を襲う口実を造らせ無いよう貴様より上手くやってやる」



 刃の指す先は封印場の奥の奥、酒呑童子。



「そして何時しか貴様が目覚めた時には僕が貴様を穿つ。利用できるだけ利用し尽くしその後首でも噛みちぎってやるさ。待ってろよ酒に溺れた童子(ガキ)が」



 妖力は感情によっても乱れる。妖力の乱れは無かった、でも其れでいい。相手が己を舐めているほど不意が付きやすい。



 先ずは出生を隠そう。人間に育てられた妖怪など信用されない。


 生まれた年代すらも隠せば不審に思うやつは居ない。その時には知り合いは全て死んでいる。どうせ人間なんか五十年程度しか生きられないのだから其れでいい。


 嘘に嘘で塗り固めればどれが嘘かなんてわからなくなる



 *



「その性格も直しな瓢、喧嘩っ早い性格は周りに溶け込めないよ?」



 *



 聞こえないはずの彼奴の幻聴の助言(アドバイス)は素直に聞き入れる。言っている人物は気に入らないが内容は最もだからだ。



 全部終わるときまで全部隠し続ける出来るか?、僕なら出来るやってみせるさ



 最早そこには迷っていた幼子は居ない。


 此処に居るのは全ての運命を受け入れ抗う決意をした妖怪だった。



 *



 瓢は思い出す。


 深呼吸をし前を見る。己の宿敵酒呑童子は此方には目もくれない。だが其れでいい、意識されないほうが不意を突きやすい。


 千年前、僕は悩んでいた。


 同種殺し


 土蜘蛛退治の際に文殊と僕は語り合った。同種殺しが出来るやつはどんなやつか、その3つ目。

 僕はこれに当てはまるだろう、



 戦場の中、瓢は一息ついた。腰に差した太刀に手をかけた。


 瓢がその時出した答え



 ――答えは



 ぬらりひょんが出来るのは瞬間移動、物理攻撃無効、それと己の浮き沈み。要は宙を漂うことも出来るのだ。


 瓢は乱戦の中、静かに歩き浮遊した。


 瞬間移動は移動する場所が今と同じ高度でなければならない。

 山の頂上に瞬間移動しようとしたらその頂上と同じくらいの高度に浮遊してからでなければならないのだ。



 そして瞬間移動。



 場所は、酒呑童子の首の直ぐそこ。首だけで樹齢数百年の木の大木を思わせたものだったがそれでも今は構わない。


 太刀を構え振り上げ力一杯に斬り付けた。


 血が舞った。頸動脈あたりを狙って斬り裂いた。引いて斬る、刃の真骨頂は其処にある。



「何時の間に…ッ!」



 酒呑童子が大変に悔しそうな顔を浮かべていたので瓢は顔を歪め言葉を吐き出した。



「漸く此方を見たな、安心しろ僕は貴様を使いに使い倒してからきちんと殺してやるよクソ童子(ガキ)



 ―――答えは、



 信念を持って殺す奴だ






主人公でてこないし何なら瓢のほうが主人公してる、


しょうがないんだよベルゼブブ強すぎて直ぐに戦い終わっちゃうんだし、



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