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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
幽鬼揺々参道通行
21/28

【20話】幽鬼揺々参道通行Ⅶ

 



 大江山の酒呑童子討伐伝説。


 其の中心


 源頼光。幼名を文殊丸。


 彼との出会いは所謂(いわゆる)僕の不法侵入からだった。



 *



「……」


「……おや、」



 幼きぬらりひょん瓢と部屋に立ち寄った人間と目が合う。


 瓢の手には茶と菓子。頬に菓子を詰め、来た人間をマジマジと観察している。


 当時では然程珍しくも無い貴族の着る服に黒の髪。端正な顔立ちをした男で済んだ青色の眼をしている。そして此方をジッと眺めている。



 当時の僕は身寄りもなく余りにもお腹が減った僕が能力によって家への不法侵入を繰り返し食い繋いでいた時期だった。

 …………今考えると凄い恥ずかしいが、



「少年、妖か…何処から入って来た?」


「⋯⋯⋯⋯、」



 人間が瓢を摘み上げる。


 無言で瓢が人間を睨む。



 昼の穏やかな斜陽が畳の匂いを際立たせた。障子が光を和らげ小さな机の上には菓子の無残な姿を強調させた。



「腹が減っての不法侵入か? 餓鬼」


「誰が餓鬼だッ!!!」



 瓢が吠える。


 摘まんでいる人間。

 訓練終わりなのか矢筒を背負い弓をもう片手に持っている。

 黒い髪に澄んだ水色の瞳。端正な顔立ちの男だった。



「良いか!!?五十位しか生きられない人間共が僕には指図なんて―――」


「はいはい、御託は良いさ。ふむ、」



 人間は辺りを見回す


 居間には食べ掛けの宋から輸入された菓子が無残に食い荒らされ食べ(かす)

 瓢の口元には同じ食べ滓。


 人間は興味深そうに瓢を眺めた



「……そろそろ降ろせよッ!!」


「すまないね。でも不法侵入者を野放しにするのもねぇ、宋の菓子もそれ、高いんだよ?」


「はッ知るかよ!良いから離せ!」


「ああそうだ君名前は?」


「聞けよ!!?」



 ぬらりひょんには瞬間移動の能力があるが其れは自身の触れている対象も共に転送される事に成る。


 一度手を離されてから瞬間移動してとんずらをこく必要があった。



「じゃあ先ず俺からだな」



 先ずは人の話聞けよ此奴、


 瓢は人間を幼いながらも冷めた目で見ていた。



源頼光(みなもとのよりみつ)と申す者だ。さて君は?少年」

【正四位下、春宮権大進、美濃守、備前守】源頼光

 能力:無し



 馬鹿正直に名乗る―――源頼光と申した者を幾分か観察た。観察が終わると頼光の顔を見て瓢が嘲笑った。



「名前を教えたから僕の名前も教えろと?馬鹿げた事云ってるんじゃねえよ態々教える義理なんか一つもねえんだよ!」


「ふむ、確かにそうだね」



 頼光は思案するように目を閉じ頭を左右させる。


 其の間も瓢は何とかこの手から逃れられまいか体を前後ろ左右に動かしてみるが全然動かない。

 次第に疲れて来たのか瓢の可動範囲が狭まる。



「でも君の身なりを見るに宋の菓子を支払える様な物は持っていない様に見えるね」



 黒の蓬髪(ほうはつ)に目尻が上がった赤い瞳。

 継ぎ接ぎの衣はみすぼらしさを表していた。



「当たり前だろ、じゃねえと盗み食いなんてしねえぞ」


「君大人にそんな言葉遣いかい?」


「あ?俺は背が伸びにくいだけでもう立派な大人に近いんだぞ」



 勿論口から出た出まかせだ。


 妖怪と人間は年の取り方が違う。此れ位誤魔化せる。

 実際は十にも満たない幼子だ。



「成る程。では此れからは誠心誠意大人同士として君と接しよう。」


「………なんか企んでんだろ」



 先程よりも明らかに目を細め先程よりも明らかに悪そうな顔をする頼光に瓢は呆れた顔を浮かべた。


 今思い返してみれば短時間なのに此処迄打ち解けられた相手は後にも先にも此奴だけだった。



「では大人として、アレの責任取ってよ」



 頼光は先程の菓子の無残な跡を指さした。


 瓢の顔に色は無くなる。目は水泳を始め見事な泳ぎっぷりを見せていた。



「お・と・な、でしょ?」


「………いやぁ…少し僕等(妖怪)御前等(人間)ではオトナとしての価値観が違うと云うか…」


「いやいや真逆〜大方同じでしょ、ど〜せさ〜」


「いや…えっと……その、あーっと…」


「ほらほら大人として責任取るんでしょ、いやー俺の屋敷の手伝いが一人増えるなんて喜ばしい事だね」



 待て、明らかに聞き逃がせない言葉が出てきたぞ



「おい、なんで話し進んでるんだよ!」


「じゃあ先ずは身なりを整える処から始めようか仮にも俺の部下なんだ、見窄らしい格好で居られちゃ困る」



 頼光は瓢を掴んだ儘居間から移動しようと体の向きを変えた。


 流石にヤバいと察した瓢が再び吠える



「待て待て!仮にじゃねえだろ!誰が人間なんかの部下に…! おい待てって話を聞け!」



 幾ら騒ごうとも頼光が乱れる様子は無い。

 瓢の睨みはより一層強くなる…ではなく諦めの入った顔色を浮かべていた。


 其れを確認した頼光は再度目の前の妖の少年に問いかけた



「して、君の名前は?」






「…………(ふくべ)…」

【幼き日のぬらりひょん】瓢

 能力:瞬間移動、物理攻撃無効、己の浮き沈み



 此れが妖怪伝説を数多く持つ源頼光と(のち)に妖怪総大将と成る瓢との出逢い――――



 *



「んで………何してんの?」


「いやぁ……参っちゃうよね本当」


「参っちゃうのは僕の方な?」


「俺も参ってるんだよ~割とね」



 あははと笑っているが此れは笑い事では無い。

 瓢の掌は冷汗が滲み其れを隠すので必死であった。


 頼光の寝床であった部屋の一角は何か巨大な怪物が暴れたのかと疑う程に乱れている。

 この厄災の渦中にいる頼光は自身が使っていた布団の上で正座をし瓢からのお説教を有難く受けている。


 此の頃の瓢と成ると子供特有の成長力で身長はぐんと伸び今では百六十近い背丈へと成っていた。



「妖の気配と物音がしたから急いで来てみれば此の荒れよう……説明しろ文殊」


「いや~」



 文殊の莫迦は身振り手振りを混ぜつつ説明し始めた


 文殊は今(マラリア)を患っている。熱が酷い為数日床につかせていた。

 看病には文殊に従える四天王も名を挙げたが―――



 *



「いいよ、お前達は。修行に身を置いてよ寝てれば直ぐだしこんなの」



 文殊は微笑んでいるが周りは内心焦りまくっている。

 床についている文殊の額に瓢は濡れた布を優しく置く。



「熱って……俺の知ってる限り病気知らずの頼光が……? そんな阿呆な……熱出した事あるんですか? 真逆」

【頼光四天王】卜部季武(うらべのすえたけ)

 能力:なし


(われ)の知ってる範囲だと一回もないと思うが…吾だって困惑してるんだぞ」

【頼光四天王】渡辺綱(わたなべのつな)

 能力:なし



 二人の男が頼光の枕元で囁き合う。


 二人が困惑していることは最もであった。風邪知らず疲れ知らず、鋼の体を持っていると頼光の近しい人物達は彼の事をそう評価していた。



「いいよーいいよー瓢に面倒見さすから君達は俺に構わなくていいよ」


「僕を手足の様に使うのお前は、」


「まあ瓢なら大丈夫だわな」



 膝を立てた状態の瓢に男の一人は体を折り首に腕を巻き付け弾けた笑顔を浮かべる、



「おい貞光、無責任だぞ!」



 吼える瓢を何時も通りだと云った風に貞光と呼ばれた男はあしらった。


 瓢は妖、妖怪が悪とされる平安時代の中期に人間の中にとても馴染んでいた。妖怪は欲望に従い己の力を振るうのが共通認識である。

 だが幼い頃から人間社会で育った瓢に欲望の儘力を振るうと云う考えは根付いて居なかった。


 だからなのか妖怪討伐伝説を持っている皆でもぬらりひょんである瓢の事は危険視していなかった。

 抑々此の時代ではぬらりひょんは攻撃も出来ない弱小妖怪と認定されていた事も或る



「否? 君が信用に足る人物だと心の底から思ってるからこその無責任ささ」

【頼光四天王】碓井貞光(うすいさだみつ)

 能力:なし


「無責任は思ってんのかよ!」


「まーま。落ち着けよ瓢そんなんじゃ何時まで経っても子供扱いされるぞ」

【頼光四天王】坂田金時(さかたのきんとき)

 能力:なし



 犬歯を剥き出しに怪訝な顔を見せる瓢を宥める坂田金時。実はあの金太郎の成人した姿である。


 瓢は嫌がりながらも素直に頼光の世話を甲斐甲斐しく焼いていた。瞬間移動が使える為一寸した御使いや雑用なんかに適している――――と頼光が云っていた。

 因みにしっかりと瓢にシバかれていた



 *



 という上記のふか〜〜〜〜い理由によって瓢が看病する自体へと成ったのだ。



「其れで、怪僧が文殊の首を縄で絞めに掛かったと?」


「そうそう、焦って近くにあった膝丸で切りつけてー、身長が七尺(約2.1メートル)位だったかな。」


「文殊の不調を狙っての暗殺未遂…偶然とは思えねぇ」


「全く同じ意見だよ。」


「逃げていった方向は?」


「血痕が残っている、ほら」



 頼光はそう云って部屋の障子の奥、縁側を指差した。

 たしかに其処には白の血痕らしき後が噂の怪僧が逃げていった道を教える道標になっていた。



「明日にでも乗り込もうよ、ね? 瓢」


「無理」


「え?何でよ」



 驚いた顔で問い掛けられたが当たり前の事だ。

 病人は床につき安静に、それぐらいの考えは瓢も持っていた。



「当たり前だろ、莫迦か、阿呆か其れとも能無しか?」


「瓢が酷い泣く。後、熱はさっきの軽い戦闘で下がったから大丈夫」



 頼光の言葉をよく考える


 考えて、考えて―――



「はい?熱、下がった?」



 急いで額を中てて確認するが確かに熱が下がっている。そんな軽い戦闘で下熱するだなんて聞いていない。コイツ僕より妖怪だろ、

 僕が出来る事は精々瞬間移動と浮遊、物理攻撃無効だけだぞ



「うわ、マジだ……キモッ」



 吐き捨て悪態をつく。



「という事で卜部と渡辺、碓井に坂田で乗り込む。殺されかけたんだから其れぐらいしないと俺の気が収まらない。それでさ」



 僕の態度を伺う様に頼光が問い掛けた



「妖怪・ぬらりひょん瓢様絡みて今回の事態をどう見る?」



 瓢は考えた。

 室内を見渡し残された血痕を見る。そして一つの結論を出す。



「十中八九妖怪の仕業だな。妖怪の俺が云うんだから間違いない、加えて云うと残った血痕に付着した妖力を見るに【土蜘蛛】辺りだろうな、又聞きの話だが京の都では度々空飛ぶ髑髏が確認されてる。其れに文殊の体調不良…彼奴が居ると断定するには十分な材料だ。」


「よし、じゃあ明日にでも乗り込もうよ!血痕切れてたとしても瓢が妖力の跡を追えるでしょ?」


「………出来ない事は無いが、」


「此方で皆に声掛けとくね〜」



 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………



 マジか。



「急展開が過ぎるぞおい」



「過去編は短くしないと評判悪くなるから展開が急に成るのは仕方が無いよ」


「おい辞めろ」






名前とか能力とかの表記

【】

の中は主に役職とかそう呼ばれてる肩書等を入れています

今回の瓢は余りにも書くものが思いつかなかったのでアレはみっともない足掻きです



本編の貯蔵の関係により次回からは予告無しの投稿となります、大変申し訳ございません。


そして活動報告の記述を始めてみました。初めてなので書いたときの当時の感想や小ネタみたいなのを書いてます。是非一回ご閲覧を


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