【18話】幽鬼揺々参道通行Ⅴ
太陽が昇る
太陽神が顔を出し世界を明るく照らす
「ベルゼブブ様。御早う御座います、」
「ん……ああ、うん…御早う……」
地上には長居出来ないベルゼブブだが一夜明かす位であれば問題無い。事実ベルゼブブが一度くらい宿泊施設で夜を明かしたいと公言したからでもある。
「やー人間界での起床は久しぶりだねぇ…」
「ですね。着替えますので布団から」
「はいはーいマチェ君」
眠気眼の主に対し出際良くタルキマチェがベルゼブブの着替えを完了させる。
「妖怪総大将の瓢殿から招集を受けています。予定時刻までまだ時間はありますが如何為されますか?」
タルキマチェとフルーレティの違いがあるとするのならば主の接し方。此れに限るだろう。
「残ってた雑務片付けるよ。用意して」
「承知致しました」
一礼しタルキマチェはベルゼブブが宿泊していた部屋から立ち去る。
ベルゼブブの部屋には一応の為に持ってきた未完成の書類を置いていない、部下のタルキマチェに携帯させていたからおそらく自分の部屋まで取りに行っているのだろう。
天を仰ぐ。ベルゼブブは思う。此処は良い処だ
バアルは豊穣神である、だからか現代の科学文明社会よりも此方のほうが肌に合っている妖怪の里は山奥に点在する妖怪の集落だ。手の届く所に自然があり神からの恵みがある。バアルにとってはこの上なく最高の立地だった
ベルゼブブは天井へと手を伸ばす。
「酒呑童子……酒呑みかぁ、…酒と云えば…神だよねぇ。今の身体じゃ満足にお酒も楽しめないからなあ、」
欠伸を一つ。
此の地上の出来事を大半バアルは理解する事が出来る、だから、総て知ったからこそ
「一度事情を知ったら協力しないわけにはいかないけど…生憎私は損得を一番に見るからね。必ず私の利益に成るように働き掛けさせてもらうよ」
酒呑童子は平安の世の時代に存在した妖怪を纏め上げた初代の妖怪総大将だ。今のぬらりひょんの瓢は二代目妖怪総大将という事になる
妖怪総大将になった事でおいたが過ぎ安倍晴明公の占いにより場所の特定。源頼光と配下の頼光四天王が酒呑童子に取り込み毒の入った神変奇特酒を使い弱らせた処、首を切り落とした。
そう云う話が現代に伝わっている。
事実は少し違うが私の口から語るまでもないだろう
「あはは、意外に面白くなりそうだね。」
サタン王の命で嫌々来ていたが割と楽しめそうだ。
*
「面白い事を考えたよ」
安倍晴明公がそう云った。
皆で里内で百鬼夜行に参加する者達を目録化した物を眺めていた時のことだった。
アガリアレプトとサタナキアは興味無いと吐き捨て日本の観光をしてる。妖怪の里は人の住む場から遠い位置に点在している。
二人は瞬間移動などの能力は持たないがサタナキアの能力により移動能力のある妖怪を引っ掛けそそくさと行ってしまった(サタナキアの能力は【凡百女性を意の儘に操る】により女性の妖怪を引っ掛けたのだと思われる)
「酒呑童子居るじゃないか」
「居るね」
ベルゼブブの返答を確認し晴明公が身振り手振りを混ぜ説明を続ける
「約千年前だったかな大江山に私と源頼光にその四天王と共に封印けど封印はかなり弱まっているし実際封印は酒呑童子が自力で解いてしまう程弱まっていたんだよね」
「…、だね。点検行かなかったの?何時封印解いた酒呑童子が暴れ出しても可笑しくないよ」
「隠居生活だったからねえ。其れに私達人間と妖怪の間には溝があるから、封印してそれっきりさ。勝手に封印弄っても怒られるかなと」
「それで封印解かれちゃったから立つ瀬がないね」
「全くそうだね」
現場皆は勿論云いたい事、突っ込みたい事が山のように積もっていく。だがそんな周囲を置いていくように二人は会話を続ける。
「思いついた事って?」
「ザ・鬼って感じの妖怪を招き入れたいと云っていたじゃないか丁度封印が解けた酒呑童子が居るから其奴を従わせて仲間に入れるのはどうかな?」
指を立て提案する晴明公。中々に衝撃的な提案だがベルゼブブは名案と言わんばかりに承認した。
「良いねぇ面白そう、奇遇な事に此処には鬼を従えた伝説を持った呪術師も居る」
視線は自然と役小角へと移る。白眼を細め内容を理解した様に微笑んだ。
「ほほう、此れは又飛んだ奇策を思いついたものじゃな。確かに試してみる価値はある。心底其れに楽しそうじゃ」
呵々と笑い本人も受諾した。
「じゃが儂は飛鳥生まれじゃ、老いぼれにはちと大役が過ぎるぞ。」
「なら私も協力するよ。」
即座に晴明公が協力を申し出た。
「私も十二天将を従えた。何かを従えるのに関しては心得がある、其れに酒呑童子を封印したのは私だからね」
それもそうだと役氏とベルゼブブが頷いた。この先の指針が固まりつつある場タルキマチェがベルゼブブに耳打ちをしている。
場の中百鬼夜行の主催者である瓢は苦々しい顔から切り替え微笑みを浮かべ場に一次的な終止符を打った。
「では直ぐ様に行動を開始した方が良さそうですね朧車を手配しますのでまだ此の場にて少々お待ち下さい」
瓢が椅子から立ち上がり戸の把手を捻り部屋から立つ
閉じた扉の前で瓢は何もない宙を睨む。
睨んでいるのは過去だ。
まるで不愉快だとでも云う様に舌打ちをしたのち瓢は歩き出す。
*
現在から数刻前。瓢はアガリアレプトに呼出されていた。
其処は妖怪の里の敷地内の滝前。
然程広くも無い滝だ。周りは幼児位の大きさの岩が点在し木々に囲まれている。秘密の話場にはうってつけの場所である。
水の音が会話の音を消し緑に彩られた木々が姿を隠す。
水打つ音が耳に響く呼び出された瓢には用件がある程度掴めていた。
ぬらりと呼び出された場所に現れ岩に腰かけていたアガリアレプトに普段と寸毫違わぬ様子を装い声を掛けた。
「どうされましたかアガリアレプト殿…?」
「……知ってるくせに」
普段細め閉じられている瞳が瓢を正面から捉える。
岩に腰掛けていたアガリアレプトが立ち上がり瓢との間合いを一気に詰める
「あんた嘘付いてんだろ」
「……」
「まあ、あんたもあんたで俺に隠し通せるとか思って無いだろうけどな。」
【将軍・司令官】アガリアレプト
能力:凡百謎や機密事項の解明
「………」
瓢は観念した様に緊張で張り詰めていた肩を降ろした。
次に諦めた様に微笑みアガリアレプトを見る
「その様子じゃ全部知ってるんだね。能力聞いた時から僕の付いた嘘が解明されるのは必然、だな」
「でも君は悪事を企てている訳じゃない。その動機は何処にでも、神の世界でも天使の世界でも悪魔の世界でも人間の世界でも、勿論妖怪の世界でも有り得る動機だ。」
腕を組み仁王立ちをし瓢はアガリアレプトの話を聞く
「だが、俺は上の狗だ。報告はするぞ」
「それは、当たり前の事態では有るが…ふむどうにかして黙っていて呉ないか?」
「其れはお前が平安の世から生きている事か?其れとも酒呑童子がお前の友の仇だから協力なんてさせず生首にしたい事か?」
アガリアレプトが自身の首に銃に見立てた指を立てる。
瓢は睨む。
だが其れはアガリアレプトに向けられた視線ではない。瓢は苦々しい己の過去を見ている。
「……何でも見通すとは聞いていたが、協力?僕達が?ああ成る程確かに彼奴は人間が思い描く【鬼の像】に一致している。其処から誰かが協力を申し出ると?…馬鹿馬鹿しいと跳ねのけたいですが、事実なのでしょうね」
「感情、欲望で動くのが妖怪の性だ。其れを攻める気は甚だ無いさ」
「其れは如何も。で、矢張り如何にかして黙っていて呉れませんか?アガリアレプト殿」
首を傾げて問う。だが返ってくる答えは当たり前のもので
「無理」
「無理かぁ〜」
「悪いが何を言おうがここだけは揺らがねえぞ……」
瓢はアガリアレプトに無言で差し出していた。
アガリアレプトの眼前に広がったのは妖怪たちお手製の和菓子。
アガリアレプトが驚きで固まる。が内心の整理をする間に和菓子が五感で伝えてくる。
あんこの匂いがアガリアレプトの鼻を刺激し濃密みたらしの匂いがアガリアレプトの鼻を刺激し淡い色が眼前に広がりアガリアレプトの視覚を刺激する
「…………」
「アガリアレプト殿、此処迄の貴方を観て判りましたが貴方は大の甘い物好きだ」
「…………」
「加え地獄では碌に甘いものは食べられなかっただろう。それを除いてもあなた方の住む地獄は西洋寄りでしょう。久しぶりの日本の和菓子は五感に良く刺激する筈です」
「………」
「僕の秘密を守ってくれるのであれば此れを授けましょう。」
「………」
「さてはて、どうされますか?」
「………」
アガリアレプトはうーんやあぁ、う゛あ、等々の意味の分からない声を上げた後
無言で和菓子を受け取り
「………今回だけだぞ…」
とだけ云った
一方瓢は
チョロい此奴
とアガリアレプトの評価に判を押していた。
どうせ何時かは露見する事。
だがまだ、まだだ
もう少し位だけ秘密を保守せねば。
君が無事無念なく成仏出来る迄、自分を殺して上手く合理的に立ち回るまでさ。
ね、文殊
今更ですが皆の身長です。
瓢:168,4cn
役小角:177,9cm
安倍晴明公:189,4cm
アガリアレプト:175,3cm
サタナキア:156,7cm
です
すいません完全に飛ばしてました、誠に申し訳ございません…




