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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
幽鬼揺々参道通行
18/28

【17話】幽鬼揺々参道通行Ⅳ



キリが良いのでとても短いです

 


 大江山と妖怪の里は程遠いけして近くはない。だがぬらりひょんであり瞬間移動の能力持ちの(ふくべ)に対しては距離は在って無い様な物。


 忽然と東雲の()にぬらりと瓢は現れた。


 場所の名は大江山。嘗て安倍晴明公や源頼光、頼光四天王達が己が力を結集させ封印した平安の世の妖怪の頂点、妖怪酒呑童子


 其奴の妖気に中てられて周りの木々は生命活動すら行えず最低は緑に囲まれた大江山でも異色の気配を放っていた。目の前にある洞穴は多くの平安時代最強の陰陽師特製の呪符がふんだんに(あしら)われており木製の檻で出口を塞ぐ。


 だが約千三十年だ。其れだけの長い間雨風に晒され風化阻止の術を掛けられていたと云えど多少のガタは付くものだ



「矢張り…もう起きたか、酒呑童子」



 声は返ってこない。返ってくるものだと瓢も考えていなかった為か凛とした気配を保ったままだった

 腰に(ひさ)げていた童子切をすぐに抜刀できるよう構える。



「…………」



 此れでも剣術は一流の武士に叩き込まれていた



 *



「お前はひょろいから少しぐらい刀振れるようになっとけよ瓢」



 *



 そうだな文殊。僕は昔から争いごとは苦手だったし喧嘩となるともっと苦手だった。でもね君に教えられて少々此の刀に見合うほどには一太刀振れるようになったんだ。教えてもらった君の顔に泥を塗らせない為に死に際に君が授けてくれた此の刀に見合うように



「…………無理だねこれは」



 幾分集中した後諦めた様に太刀を下げる。僕一人の対一(サシ)で勝てれるものなら文殊が既にもう一度生首にしている事だろうから


 酒呑童子を封印していた封印はもう解かれようとしている。此れほどまで封印が弱まっていたのならもう彼自身の力でいつ封印が解かれてもおかしくはない。



「諦めて助けを(こいねが)うか、」



 封印した張本人である晴明公が居るのだ。無理に勝てない勝負に挑んで傷つくのは御免(こうむ)

 洞穴、封印場所に背を向け能力を発動し始める。



「出来れば僕でかたを付けたかったけど、此の諦めの悪さも君から学んだものなんだから文句は言わないでよね文殊」



 瓢はぬらりとその場から立ち去り、あとには何も残らなかった



 *



 ま、何時も通りの憎たらしい文句を吐いても君から僕に届くことは二度とないんだけどね



 *


 タルキマチェは彼誰時(かはたれどき)に目を覚ます。あ、脳を覚ますかとは云わない


 明け方ではあるがまだ薄暗く向こうにいる人の判別も困難な時間帯、タルキマチェは黙して燕尾服(テールコート)に着替え髪を整え身なりを整える。


 寝癖よし、着こなしよし、乱れなし


 ベルゼブブ様の前でも胸を張って躍り出られる。あの人は私の格好など微塵も気にしないであろうが私は気になるのだ


 ベルゼブブ様は繊細な人で部屋に勝手に入ろうものなら気配を察知し起きてしまう。眠りが浅いのかはてや危機察知能力が異常に高いのか、恐らく何方もだろう。


 所定の時間に成るまで座して待つ。


 タルキマチェはベルゼブブのは以下のなかでも特に従順で付き従っている。ベルゼブブの命令となれば尻尾を振りつつこなし命令が無い時は尻尾を振りつつ何時間でも何日でも何年でも大人しく待ってみせる忠実ぶりを見せていた。


 タルキマチェが微笑む。


 妖怪総大将瓢は明らかに何かを隠している。タルキマチェはフルーレティやベルゼブブに比べ多くの悪魔や悪霊、妖怪を相手に仕事をしている。

 相手の顔色を観察し機嫌を窺うのは特技と云って善い程である。


 一つは年齢を語った時。

 平安の世は生きていないと断言していたが不自然に眉が動いていた。嘘、とまでは行かないまでも何かを隠している事は確実だ。


 二つは先日の話し合いの場。

 明らかに酒呑童子の名が出た途端取り囲む空気が変わった。過去に何かの所以が有ったのだろう事は容易に想像がつく。


 どれに関しても長年警戒すべき者と相対していたタルキマチェでなくても気が付く事の出来る些だ。根が真面目なのだろう嘘を付くのが下手だ。



「酒呑童子の話も出したがらなかった、元妖怪総大将と現妖怪総大将に所以が有る事自体は不思議ではありませんが。明らかに怪訝な顔を浮かべ安倍晴明公には他とは違う視線を送っていた、」



 調べる価値有りですねと零し薄暗い闇が完全に払われるのをタルキマチェは待っていた。





次の投稿は4/8です



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