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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
幕間
13/28

【12話】幕間・ベルゼブブさんは意外とずっと気に成っていた



すいません投稿ガチの勝ちのガチで忘れてました

 


 ベルゼブブは長い事悪魔として生きて来た。


 年月を数えれば優に三千年を超える。


 ベルゼブブは暴食の悪魔で在り暴食を司る。此処のそう【暴食】の部分。

 現代の人間界を眺め、知りベルゼブブは疑問を持った



 あれ、暴食の範囲広すぎやしねえ?


 と



 *



 執務室でベルゼブブは思案していた。


 タルキマチェやフルーレティから偶に聞く人間の話だ。

 主に政治や経済状況、発展等を聞かされるのだが他にも人間の創作物の事についても偶に聞かされる。創作物内での【暴食】の捉え方。其れがベルゼブブが気に成っていた事であった。


 創作物の多くでは【食】という行為を行う事によって新の能力を得られる展開が度々有る。


 え?食べるってそんな感じだっけ?暴食ってそんな感じなの?初めて知ったんだけど?


 とベルゼブブは成った。

 そして考え着いた一つの案。



 一回試してみたい!!



 能力の在るナニカを食べて新しい能力を得るとか恰好善い。


 世の中には言霊と云うのが有る。其れは実際に存在するもので皆がそう信じ考えている事すらも言霊に当て嵌まる。ならば実現化して居るかも知れない。

 加え暴食を司る悪魔が暴食について一番詳しくなければならない、だから此れは其の確認作業なのだ。決して私情では無い、私情では無いのだ。


 と云う事で



「フルーレティ【地獄の門】の点検行こうよ」


「………はい?何故急に?」


「ふふっ試したい事が有ってね」



 不審がるフルーレティに微笑みを向けベルゼブブは提案し続けた。



「どうせならマチェ君も連れて行こうか仕事も一区切りついた事だし」


「………貴方がそう云うのなら…」



 そう云いフルーレティは渋々了承した。解せないという顔色を浮かべてはいる物の基本的にフルーレティはベルゼブブの命令に逆らう事は無い。上下関係がかなりきちんとしているからである。


 却説(さて)、では行くとするか勿論仕事をしに。

 私情等は全くないぞうん、全くない全くない


 全くないと私が云えば無いのだ



 *



【地獄の門】

 此の解説を為さなければ今後の進行に支障が出るであろう。


 地獄の門とは其の名の通り地獄に存在する複数の門の事である。

 此処とは違う地獄、人間界に繋がっており次元の垣根を超える扉の存在は神々であり地上の王バアル(ベルゼブブ)の能力の一つである【世界改変】により成り立っているのだ。


 其の中の一つ人間界へと繋がる複数の門は常に少しだけ扉が開かれている。他の扉は数(ミリ)すら開ける事無く固く閉ざされていると云うのに。

 何故か。


 理由は一つ。ベルゼブブの零落前の姿バアルが豊穣神だからである。


 豊穣神バアルは其処に居るだけで己が持つ神力により地上の人間界の皆々に豊穣を(もたら)す。

 だが一つ条件が違えば豊穣神バアルによる人間界への豊穣の力は断たれる事と成る。条件はたった一つ。


 バアルが人間とは無関係の異界へ行く。其れだけ。


 其れだけで人間界の総ての恵みは断たれ人間は滅びの一途を辿る事と成る。何せ生命に必要な食物、自然の恵みが完全に断たれる。

 農作物は育たない。農作物を食し育つ動物は育たない。海産物は育たない。海産物を食し育つ魚介類は育たない。


 だから少しだけ地獄の門を開けておく。

 地獄の底の底に住まうバアルの神力は地獄の少しだけ空いた門を通り人間界へと恵みを与える。最高神で在り神々の王でもある豊穣神バアルには其れだけで十分。生まれ持つ膨大な神力は此れ程距離が離れていようが異界であろうが届く。

 此れでも全盛期よりは神力は何倍も廃れてはいるが



 地獄の門は良く余所(異界)へ行こうとする悪魔・悪霊が居る。其の為地獄の門は警備が厳重だ。

 そして人間界に繋がっている地獄の門は少しばかり開かれている。


 詰まり云いたいのは本当は悪魔悪霊が人間界へと行ってしまわぬように門を厳重に閉めたい所をベルゼブブの口利きで開けている為地獄の門の監督はベルゼブブが請け負っているのだ。



却説(さて)、却説、却説却説却説久しぶりだな【地獄の門】!」



「点検したの五十年前でしょうに、普通二百年周期で善いのでしょう?」



 着いて来て居たフルーレティが言葉を零した。


 門番の悪魔達に皆会釈し門の前に佇む。

 個々の空気は独特で在り地獄の乾いた空気と人間界の湿気の多い空気が混じり肌に嫌な感覚が張り詰める。だが爽やかな緑の匂いは此処でないと感じられない。


 後ろに立っていたタルキマチェも発言した。



「其れに態々ベルゼブブ様が赴かなくても良いのでは?其れ位(わたくし)めが行きますよ」


「う~ん異界と地獄(ここ)を繋げてるのは私だし私が確認するのが一番だよ。」



 ベルゼブブ―――バアルの能力の一つ【世界改変】


 地上の王であるバアルは地上を統べれる力がある。

 地上の定義は曖昧であり字とすれば、地の上。詰まりバアルが立っている場こそ【地の上】彼が統べるべき場所なのである。


 地上を統べる王は地上の理すらも操る。地上を統べる、神々を統べる王は其処に在るだけで良い。


 地獄と人間界の理の淡いを弄り神々が持つ力【次元渡航】を使わずして異界へと渡る事が可能となった。地獄の門の出現により人間界へは悪霊や悪魔の噂や姿絵が出回る様になった。信じる力は此の世の何者でもない力の源となる。

 悪魔の力は人間界へと渡り言霊の力を得る事で更に強まって行った。


 今の悪魔の力や社会体制が在るのはベルゼブブの御蔭と云っても他ならない。



「成る程……変わりなしかな…少し時空の乱れが起きてるな。小さな乱れが大きな乱れを引き起こさないとも限らないし…少しだけ修正するかな」



 地獄の門を観察する。少し開けた扉に手を置き手触りで相当善い鉄を使っていると分かる。設計したのは私だが、使っている材質迄は聞いた事が無かったのかもしれない。


 では此処で私の考えの一つを供述しよう。


 地獄の門では絶えず此の地獄を脱出しようと門を襲撃する奴等が日々絶えない。

 門を襲い無理に不法出界しようとした者は即刻処刑だと云い渡されている。厳しいと思う者も居るかも知れないが今の時代では悪魔は容易に人間界へと出てはいけない条例が妖怪との間で結ばれている。


 詰まり此処に張り込めば幾ら喰っても文句を言われない能力持ちの悪魔が出てくるやもしれない。

 下等な悪魔には能力持ちは早々居ないが地獄を出ようとする知能を持った悪魔は下等という枠組みでは収まらない。必ずしも現れる。


 然し此れには一つの欠点がある。

 何時も地獄から逃走を考える莫迦が現れる訳ではない。勿論失敗すれば処刑なのは常識であるしそれでも出ようとする者は只の阿呆か欲深い阿呆かの二択だ。


 だが今現れると彼は確信する、


 そしてそれは現実と成る


 地獄の門、其の正面から聞こえる多くの足音と威勢の良い猛獣の如き叫び声



 理由を述べるとするならば――――



「さあ反乱者だよ!今此処に居る我々が条約に則り、」



 ―――――彼が



「全員討ってしまおうか!!」



 生粋の神の中の神に愛された主人公気質であるからであろうか



 *



 最初に来たのは驚き。


 次に戸惑い次に焦り。



 遣って来たのは地獄の門に突撃してくる悪魔の軍団。

 地獄の門では度々悪魔が一塊に成り門を潜ろうとする莫迦共が出てくるのは聞いていたが此処迄とはタルキマチェには想像が着いて居なかった。


 基本的に外を飛び回る仕事の多いタルキマチェは荒事には慣れていたが其れは軍団に対する物では無く個々に対する者。

 戦争の様な団体での争いは多く経験してこなかった。


 タルキマチェとフルーレティは共にベルゼブブより一歩前へ出、攻撃の構えを取る。

 前に出た二人は互いに視線を交わらせる。


 思って居る事は同じだ。



「其処の者共!!此の反乱は此処に在らせられる魔王ベルゼブブ様の眼中に入っておられる!今ならまだ処刑は免除して遣る!即刻立ち去るが善い!」



 声を上げるのは久しぶりで喉が少々痛む。

 フルーレティと視線を合わせ目で会話をする。フルーレティは心得たの意義を証明する為に頷いて見せた。


 襲来してきた悪魔達の姿を観察する。

 衣装の系統から見て地獄の西方の者だろうか、全員合わせて二十名余り。個々の武力は其れ迄でもない。自分とフルーレティだけで裁ける。加え地獄の門の守護者達は地獄きっての精鋭だ、負ける事は在り得ない。

 ベルゼブブ様が手を出せば終わりだろうがあのお方の手を煩わせる程ではない。


 フルーレティとタルキマチェの圧倒的な違い。

 其れは自らが主君ベルゼブブに対する尊敬の意の示し方の違いに在った。


 それ故に大きな仲違いを起こし今では一触即発の関係に成っているが今更そんな事を云っていれば寛容なベルゼブブの気に障ると二名とも理解して居たからだ。



「おおそうか魔王ベルゼブブが其処に居るのか、」



 悪魔の集団を率いていたであろう親玉が声を上げた。

 武器を携え何処かの流派の構えをしている、自分は武道の流派にはどうも疎い。


 奥に居るベルゼブブ様に目を向ける。何やら若干何時も黒ずんでいる瞳が輝いている様に見えるが見間違いだろう。突然の襲来で思ったより動転していたらしい。

 先程声を上げた自分は少しばかり下がり代わりにフルーレティが一歩前へ出た。



「知っての通り其処から一歩でも動いてみろ!さすればレティ達に反逆、いいや魔王がベルゼブブ様への反逆だと捉えさせてもらう」



 悪魔の棟梁らしき者がベルゼブブ様に目を向けた。頭のてっぺんから爪先、爪の間や睫毛の間隔迄全て見ているのでは無いかと思う程じっくりと眺めそして云ってしまった。


 此の地獄では最も発言してはいけない其の言葉を。



(ゼブブ)如きが俺の手を煩わせるな、なあ蠅の王(ベルゼブブ)さんよ」



 悪意のある言葉遣いは此処に居る者ならば誰でも理解できる。

 其れがイケなかった。其れでは無くてもイケなかった。


 タルキマチェとフルーレティ絶望の表情で顔を彩っていた。顔面には色が無くなり真っ青を超えて燃え尽きた灰の様に真っ白になっていた。


 此の地獄には暗黙の原則(ルール)と云うのが幾つかある。

 此の悪魔は其の一つに並ぶ愚行を行ってしまったのだ。


 最早地獄の門へ進軍したから処刑等の水準(レベル)では無い。此の者達の末路は決まったも同然。



 配下である二人は恐れながらゆっくりと首を後ろに動かし後方を確認した。言うなれば後方ではない、自らが主君ベルゼブブの確認であった。

 当のベルゼブブはと云うと――――


 顔面の温度はタルキマチェ達とは別の方向で消え去り虚無が顔に広がっていた。

 普段は何時でも朗らかな笑顔を浮かべているベルゼブブからは考えられない事。其の姿に配下二名は現在の状況を正しく判断した。


 最速でベルゼブブの後ろに下がり膝を付き頭を下げた。

 そして二名とも思った

 死ぬほど怖い、と。


 そしてベルゼブブは冷血な怒りの感情で顔を彩った。



「俺が……(ゼブブ)…? そうかそうか貴様もそう法螺(ほら)吹くのだな。俺の前で俺を侮辱した事、死ぬ気で悔いよ下等生物共」


「あ?誰を下等生物だとッ」



 悪魔の棟梁は吼えたが最早それはベルゼブブに対しては威嚇にはならない。

 理性を取っ払ってしまったベルゼブブは何者の手にも負えない。


 ベルゼブブは冷静に激怒する(タイプ)であった。



「創造主によって造られた全ての源の糧となるが善い」




 ――――――【暴食(ゼリルート)



「あ?」



 其れが最後の言葉と成った。

 空間が歪曲し大きな牙と成って悪魔の集団を襲った。対応する間もなく空間の歪曲によって悪魔達は飲まれ其の場から消失してしまった。


 其の場には静けさが戻る。

 何時も通りの何の代わり映えの内静けさ、だが其の静けさが場を支配する一つの力と成りあがっていた。皆ベルゼブブの発現を待ちベルゼブブが行動を起こすまでは身動ぎ一つしてはいけない事を此の場に居る皆々は了承していた。


 ベルゼブブは瞼をゆっくりと閉じ深呼吸をし此方側を振り返った。

 開いた口から出た言葉は予想が出来ない者であった



「あ、試す前に空気達に食べさせちゃった……」



 タルキマチェは心の中で拍手喝采を起こした。何時も通りのベルゼブブ様だ。

 立ち上がりタルキマチェは腰を低くしたままベルゼブブに問い掛けた。



「ベルゼブブ様、其れで御用事は終わりましたでしょうか」


「……なーんだ気付いてたんだね。」


「お気遣いは不足かと思いますが気に成ったもので」


「いいよ。用事は……う~ん結局失敗したし、遣りたい事も在るからもう上がろうか」



 其の言葉を聞き場は緊張していた空気から脱する事が出来多くの者は安堵の溜息をついていた。

 フルーレティも立ち上がりタルキマチェと同じくベルゼブブの三歩後ろを付き歩く。



 歩きの道中でベルゼブブは話した。



「ずっと気に成っててね~創作物とかでは暴食とかは食して相手の能力を自分に転用するッていうのが多くて私試して見たくなってね~地獄の門辺りなら試しても文句を云われないと思ってね。でも結局悪魔の集団は怒りに任せて空気達に食べさせちゃって検証できなかったな~」



 残念がるベルゼブブの背に思った思いは常に意見が食い違い仲違いを起こしている二名にしては大変に珍しく意見が一致した瞬間であった



((さっきのベルゼブブ様死ぬ程…怖かったぁ……))






長ったらしくバアル(ベルゼブブ)が地上に居ないと人間は生きていけないと語りましたが先日のバアルがモトの冥府に立ち寄ったときはほんの少しだったので余り影響は無かったらしいですね

所詮は数十分の出来事ですし


加え高天原も人間界に繋がっているので高天原に居る最中でも豊穣神パワーは発揮します



後なんか事件思ったより深刻な奴に成っちゃった、

こんな筈じゃなかったのに……



次投稿は3/29です


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