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すっくと立ち上がって地面の泥を払い、敦也は家に帰って手紙を認めた。
『拝啓 香名椎菜さま
こんな風に改まって手紙を書くのは初めてなもので、ちょっと緊張する。どんなことを書けばいいかとか、そんなことを思ってるけど、思ったことを書くな。カッコイイこと言うのとか無理だしさ。歩んできた人生も立派なもんじゃないし。お前にはやっぱ勝てない。お前の言う通り勝てない……。
お前の人生は二十年の割に濃かったよ。
俺はお前がいなくなってから、多分死んだような顔をしてたんだと思う。陽太にも怒られて殴られたからな。今も腫れてるし、マジいてえ。でも、あいつがいなきゃ、俺は立ち直れなかったと思う。陽太はいい奴だよ。俺よりもずっと、人間できてる。あいつはきっと選挙受かるぜ。俺が絶対に選挙受からせてやろうと思う。あいつは結婚もできる。俺よりも早く結婚して俺よりも一歩先を行くんだろうな。でも……それでもいい。俺はあいつにはいつも世話になってて、あいつにも勝てなくていい。みんなより遅いスタートでも構いやしないんだ。俺は自分の力で歩いていくから、ちょっとくらい遅くったって、いいんだ。俺は俺なんだろ? 俺にしかできないことがあるんだよな? なあ……椎菜。
お前がいつか、言ってくれたよな。俺は凄い人になるって。それ信じていいんだよな? 俺はお前の夢を叶えてやれる? お前は俺を見守っていてくれるか?
お前の教え子で、本当に良かった。お前の恋人になれて、本当に良かった。
これからはお前の教え子として、お前の恋人としてお前のできなかったことをやれるように頑張る。俺があのとき言った言葉、覚えてるか?
お前の分まで生きるって。お前の分まで生きて、お前の夢も叶えてみせる。
俺に夢を託してくれてありがとう。
俺に希望をくれてありがとう。
俺を助けてくれてありがとう。
お前は紛うことなき、俺の救世主だよ。俺の元に舞い降りてきてくれた天使だ。
天国から、見守っていてくれ。
俺が死んで生まれ変わっても、お前のことを愛すると誓う。
敬具』




