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「お前……そんなの考えてたのかよ。ガキの思いつく遊びじゃねえか」
「よくわかってないなあ。みんなの前でやったら、相手の人も断りにくいんだよ」
「あいつが断れないタマかよ」
「敦也が香名さんソウルに響かせれば……あるいは」
「日本語英語にすんなって。ダサいから」
「たまにはおふざけもいいよねと思って。僕らって、あんまりふざけた話しないし。真面目一直線の優秀な学生だしさ。香名さんと敦也のことを応援してるからね」
「陽太、お前……香名が好きなんじゃないのか」
「だから前に言ったじゃないか。香名さんは結婚相手にはできないって。香名さんを結婚相手に考えてるのは、敦也くらいだよ。近いけど遠すぎる存在だから、僕には無理だ。あの人は住む世界が違いすぎるんだよ。僕みたいな凡人は、近づくことすら恐れ多いんだからな」
否定はしていない。暗に、陽太は香名のことが今でも好きだと言っているようなものだ。口にしないのは敦也の背中を押すためだろう。陽太は自身の想いを敦也に託している。
――選挙と同じ……か。
陽太は法被を脱いで、法被とメガホンを敦也の手に乗せて、発破をかけた。
「香名さんを変えられるとしたら、お前しかいないよ」
敦也は陽太の熱情に感謝し、感激する。晴れているのに、雨がしとしとと降り始めた。
「僕じゃダメなんだよ……。僕じゃ……お前じゃなきゃ」
陽太の顔を隠すように、雨が大地に降り注いだ。大きな雨粒が、茫然とする敦也の顔を叩く。
――ああ……、そうか……お前は。
敦也は香名に会いに行く。宛てはない。香名がどこにいるかわからないので、校舎中をくまなく捜す。催し物を一時停止して片づけている学生達と肩がぶつかった。謝りもせず、怒鳴られても敦也は知らぬ存ぜぬふりをした。
会いたい気持ちが先行して、他人と言葉を交わす時間が惜しい。後でちゃんと謝れば許してくれるだろう。走ると、水たまりの水が撥ねる。大雨が身体を冷やす。傘も差さず、脇目も振らず、ただひたすらに彼女の匂いを貪るように追い求めた。香名椎菜はどこにいる。どこで誰と一緒にいる。お前の隣にいていいのは、俺だけだ――。
敦也は校舎内の廊下で手すりに掴まり突っ立ったまま、動くのをやめた。息を荒げて、肩で息をする。このところ、ずっとインドアな生活を送っていたから身体が鈍ってしまったのだ。
くしゃみを連発させた。冷え切った身体だ。身震いも止まらない。
「何してるのよ。バカね」
背後から声がかかる。呆れたような、心配したような、愛おしそうな感情が入り混じった声。
敦也は振り向いて、声の主の名を呼ぶ。




