表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの救世主  作者: 社容尊悟
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/99

 敦也の部屋にまで眩しい朝が来る。目を潰すような目映まばゆい日差しが、冷めていた敦也の心を燃やす。血をたぎらせ、神経を研ぎ澄ませと大脳が命令を下す。香名の声が、覚醒を促す。敦也は伸びをして、布団から起き上がる。

 ――今日は……五日目。

 終盤に差しかかる折り返し地点に到達した。ラストスパートにはまだ早いが、みんな最初の頃と比べて対応に慣れてきた。新入生達が接客のノウハウを学んだかのように、てきぱきと動いている。相手の要望を予測して行動に移せるのは、一流の接客業を学んだ学生だからだ。なので、敦也はこうして寝坊して休んでも許される身分になれた。

 みんなに任せても、大丈夫だ。自分一人が頑張らなくても、大丈夫だ。

 ……それに、もう誰も自分のことを役立たずとは言わないだろう。

「敦也! 早く起きて。お布団干さないと、でしょう」

 目をつり上げた香名が敦也の部屋にやって来て、母親のように叱った。

 敦也は頭をがしがしとかいて欠伸をすると、香名は機嫌を損ねた。

「もう起きてるよ」

「今何時だと思ってるの? もう十時過ぎてるわよ。誰かに何も頼まれてないの?」

「ああ……うん」

 生返事をする敦也の頬を引っ叩き、香名は布団を持つ。唸って目をこすり続ける敦也を見た。

「あなたが夜中に汗をぐっしょりかいているせいで、湿気るから。洗濯は朝早いうちにやらないとダメなの。洗い物も残しておいてはダメ。掃除も毎日しなくてはダメ。家事の基本よ」

「俺、家事できねえし……」

「私がいなくなったときのために、家事のなんたるかを教えてあげないとダメね。来なさい」

 掠れた声を出す敦也を見下ろして、香名は敦也の手を取った。面倒見の良さはピカイチだ。

 小一時間ほど説教を食らわせ、香名は敦也に厳しく家事のノウハウを叩き込んだ。

 覚えるまで朝飯は抜きだと言えば、敦也も本気になると思ってのことだろう。実際、朝飯抜きがいやな敦也は、必死に家事の知識を叩き込んでいた。呪文のように唱えては、実践を交えて覚えていった。すべてを覚えるのに、たったの一時間しかかからなかった。

 吸収力が段違いになった教え子を見て、香名は口元に笑みを刻んだ。

 厨房で敦也に朝飯を作らせ、香名は後ろで腕を組んで監視している。

「やっぱ椎菜は鬼だよな……」

「再確認するほどのこと? 私は最初から厳しかったじゃない」

「マジマジ。すげーお前ってキツイ女。敵に回したらダメなタイプ」

 敦也は茶化すように言う。薔薇のように美しく、般若のように恐ろしい女性が香名だ。

「あなたの敵になることはないわよ。味方である方が私は厳しいの」

 香名は敦也に笑いかけた。敦也は言葉に詰まって、口をへの字に曲げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ