⑦
「私も小学生の頃はドイツ語の本を読んでいたわ。絵本を読んでいても楽しくなくて。学術書を読んでいるときがとても楽しくてわくわくした。峯くんもそういうところがあったのね。私と話が合いそうね」
「お前ら二人、めちゃくちゃ変な奴だな」
「ふふ。あなたは今になって変な人になったけど。あなたの両親がああでなかったら、あなたも今頃、世界で非凡な才能を持つ一人に数えられていたかもしれないわ」
「俺に才能なんかないだろ。ないから勉強するしかねえんだよ」
「誰もが欲しい才能よ。あなたは持っている。努力する才能。才能なんていうものは、持っていても磨かなければ無駄なのよ。宝の持ち腐れという言葉があるでしょう」
「ああ……。俺でもそういう才能があったんだな。一番なんか取っても、たいしたことないんだって思ってた」
「それ、あなたの親による洗脳でしょ。一番を取れるだけで凄いのよ。凡人には一番なんて取れないんだもの。あなたは私も認める天才なのだから。これからもあなたの類稀なる才能は開花していくから。あなたは世界に羽ばたける」
話が脱線したが、香名に煽てられて敦也は悦に入る。香名に褒められることは幾度となくあった。でも、今日はいつもの褒め言葉とは違う。なんとなく。敦也は違和感を覚えながらも、陽太との思い出話を楽しげに語った。それはもう、何年という月日の経過を語った。小さい頃からの話を、好きな相手に聞いてもらえる最上の歓びを胸に抱く。敦也が語り草を終えると、香名から衝撃的な一言が待っていた。まるで、雷にでも撃たれたような衝撃が、敦也を襲う。
「大文祭を最後に」




