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あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第九章

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「お帰りなさい」

 敦也が帰ったのを察知して、香名は大広間から敦也を呼びかけた。

「ただいま」

 大広間は香名の親戚が集まる場所であり、香名の両親や歴代当主の遺影が鴨居に飾られている場だ。豪奢な仏壇もあり、他の部屋とは一風変わっている。ところどころ、日本人の格式張った荘厳そうごんな住居という印象を受ける。掛軸も壺も水墨画で描かれたふすまも、その道の名手が作成したものなのだろう。お供え物と花瓶を差し出した香名は敦也に場所を譲り、座布団に正座した。敦也も座布団に正座して、香名の両親に一礼した。

「椎菜の義父さま、義母さま。お世話になっています。いつも椎菜には良くしてもらっていて、かける言葉が見つかりません。お……僕は、あなたがたのように椎菜を指導することはできませんが、椎菜の期待に沿えるような男になりたいと思っています。医者にも、きっとなってみせます。どうか、僕達を見守っていてください」

 敦也はしっかり口に出していた。クスクスと笑う香名を見て、敦也は赤面した。

「いいと思うわよ。あなたらしくて」

「からかうなよ……」

「もう正座崩していいから、峯くんとのお話、して」

 敦也はお言葉に甘えて、正座を崩して胡坐をかいた。

 香名は正座も姿勢も崩さない。他人は甘やかし、自分には厳しくする香名だ。足が痺れても、正座を続けるのだろう。香名はやせ我慢していそうだが、ポーカーフェイスで心意を悟らせない。強そうに見えて案外儚い人なので、表情だけでは心のうちを読み取れないのかもしれない。

「あいつとは小学校からの付き合いだっけな。二年から」

「もう十年以上にもなるのね。それでこの間親友になっただなんて、聞いて呆れるわ。彼に感謝しないといけないんじゃない? 足を向けては寝られないでしょう」

「そうだな。俺は腐れ縁的なもんかと思ってたけどな」

 私だったらとっくに見捨てていると香名は言った。陽太も女だったら見捨てていると言ったので、同性で幼馴染みのよしみが免罪符の代わりとなっていたのだろうか。放っておきたいが放っておけない、捨てられた仔犬みたいだとたとえられた。

 陽太の懐の深さに、敦也も多大に感謝している。だから陽太の力になりたいと思う。せめてもの償いに。何事にも無関心で、彼を振り回していたことに対しての恩返しと贖罪がしたい。

「陽太は俺とは違って、昔っから知的好奇心旺盛な奴でさ。俺がカブトムシ取るのに夢中になってた頃、あいつ本なんか読んでたんだぜ? なんて本だったか忘れたけど、宇宙の不思議みたいな本。つまんなそうな本読んでたのに、喜々として語るんだ。変わってるよなあ」

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