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あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第八章

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「今日だけは特別」

 香名に手を引かれ、敦也はベンチから立ち上がる。

 敦也は周囲に恨まれ、睨まれ、足を踏まれたり押されたりした。香名が悪さをする客をキッと睨みつけて、敦也を庇った。男前な言動に、惚れる人も後を絶たない。

「私の大切な人に、手を出さないで。この私が許さないわよ」

 敦也に危害を加えていた輩が、勝ち目なしと判断し退散していく。

「……ち……。行くぞ」

「はいっ、親分!」

 目の敵にされている敦也が何を言っても相手は聞く気がないので、香名が言ってくれて助かったと敦也は安堵の息を吐いた。香名は勇敢な女性で、手を出す相手に制裁を加えることも考えていたようだ。正義感の強い香名らしいといえばそうだが、あまり無茶しないで欲しい。

 男が女を守るのは、いつの時代もそうだろう。男は女を守りたいのだ。守って、頼りにしてもらって、女の心を鷲掴みにしたいと思うのが男心だ。頼りになると思ってもらいたい。頼りにしてもらいたい。たとえ、相手がどれほどの地位や名誉を持っていても、そう思うのだ。

 ――お前を守れるような男になりたい。

 香名は敦也の手を握り、敦也を励ました。

「いやな人たちね。あんなの、気にしない方がいいわ。どうせろくに彼女もできたことがないのでしょうし。さ、気を取り直して。わたがし食べましょ」

「こどもっぽいな……。それだけでいいのか?」

「あらそう? 屋台って、手洗い場がないじゃない。熱いものを扱うところは、作り手の汗が入っているかもしれないでしょう。特に粉もの。不潔よ」

「そう言うなよ……。せっかく祭りに来たのに、える」

「まあ! しわがれた敦也ね。好きなもの買えばいいじゃないの」

 プクッと頬を膨らませて香名は拗ねた。祭りに常識や分析を持ち込めば、楽しめなくなる。こういうところは雰囲気が大事なのだ。屋台をやっているのが気質かたぎの者でないとしても、楽しんだ者勝ちだ。楽しまなければ損で、思い出を作らなければ大損だ。こどもも大人も楽しめて、童心に返れる場所、それが祭り会場なのだ。縁日はこどもも大人もやりまくる。夏の思い出、一時をみんなで楽しみたい。思いが込められて、作られたのが祭りという文化なのだ。

 敦也が行列に並んで、たこ焼きやりんご飴を買っていると、香名はヨーヨー釣りやスーパーボールすくいなどの縁日を楽しんでいた。長時間やっていたようだ。香名はきらきらした目で敦也に戦利品を見せた。ぬいぐるみやフィギュアなどを袋に詰めて両手に持っている。

「敦也。聞いて驚きなさい。百六十個取ったわよ。射的も百発百中。射的のおじさんに美人でも出禁と言われてしまったわ」

「ねーちゃん、すげぇな。スーパーボールすくいの大会で優勝できんじゃないか?」

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