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外国語を話させても、香名はネイティブな発音で、日常会話からビジネス会話まで完璧にマスターしている。英語だけでなく、他の言語までマスターしているらしい。十八カ国語を話せるのだとか。皆を圧倒し、羨望の眼差しを送らせていた。教授の発音の指導もできるほどで、尊敬せずにはいられない。
文系の頭、理系の頭、両方を持ち、更にすべてにおいて人並み以上の力を発揮する。神に愛された人だと敦也は感じている。人からも神からもこんなにも愛されているのに、罪の意識に苛まれて自分を愛せない可哀想な人なのだ。
――……同情しているわけじゃないんだけどな……。
できることなら、彼女を死なせたくない。願わくは、彼女の罪を消し去る方法を、誰か教えてくれないだろうか。彼女が自分と共に生きる道を選んでくれればいいのにと切に願う。笑顔で熱心に教えてくれる彼女の顔を見つめながら、敦也はそう心に誓った。説得して、籍を入れて、本当の家族になれれば、どれだけ幸せなことか。今の自分では役不足かもしれないが、いつかきっと彼女に相応しい人間になってみせる。敦也は一度決めたら何がなんでも止まらない、根性のある男だ。
「いつもありがとな」
「……え? いつもありがとうって、これで何度目?」
「ありがとうって言われて嬉しくない奴、いるのかよ」
「場面を違えたら、嬉しくないと思うわ。……あなた、いつも言ってるじゃない。お世話かけてるなんて、思わなくてもいいの。私が好きでやっていることなのだから、気にしないでいいのよ。こちらこそいつもありがとう、よ。私の話し相手になってくれて」
「そうか。だな。どういたしまして」
敦也は照れ笑いしてから、香名の頭をポンポンと触った。香名が目を見開き硬直していた。
「私の過去を話したのは、あなたが初めてよ」
「……それって、俺が特別ってことか?」
「そうね。敦也は特別。他の人とは違う」
愛情深き真剣な言葉とは裏腹に、香名の物凄い剣幕に、敦也は訝しげに問うた。
「何怒ってんだよ」
「べつに……怒ってないわ。……嬉しかっただけ」
「ホントに? マジで怒ってねえの? すっげえ顔つきだったけど」
香名の頬が桜色に染まる。目を逸らして、ぽつりと呟いた。プクと頬が膨らむ。
「人に頭撫でられたの、初めてだったんだもの」
「もっとやんなきゃな」
敦也はニパッと笑って、心の闇を少しでも取り払えるようにと念じながら、頭をソフトタッチで撫でた。香名は顔を綻ばせ、見たこともない和やかな顔をしていた。幸福な一時だと感じてくれていれば、敦也は喜色満面になる。
「昔ね、父が私を褒めてくれたことがあって。でもいつも私は母にぶたれていたから、手を伸ばされるのが怖かった。さっきも、ちょっとだけびっくりしたのよ」




