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才能がないことを知った妹は家に戻って来て、香名は喜んで迎え入れたが両親は既に他界しており、妹は寂寥感と悲壮感の入り混じった顔をした。認めて欲しかった相手が死んだことを知った妹は、香名の制止の声も振り切って、また家を出た。そして人知れずのたれ死んだ。遺体が発見されるまで大分月日が経っていたため、死因が何かはわからなかったが、恐らく自殺と推定されている。
香名の両親は交通事故で亡くなったが、妹は自殺した。妹はきっと、姉である私を憎々しげに思い、悲しみに暮れながら死んでいったのだろうと香名は涙ながらに語った。
「だから私は……あの子のためにも、死んだ方がいいの。あの子を殺したのは私。私が家督を継ぐ前から、あの子にプレッシャーを知らずのうちに与えていた。私なんかよりも、あの子が生きていれば良かったのに。私のどうでもいい才能なんかより、あの子の才能の方が世界を変えられる。あの子の方が、私より世界の役に立てる。どうして神は私を生かそうとするの。私みたいな奴がいるから、努力している人が救われない、報われないのよ。私みたいな奴がいるから、みんなが不幸になってしまう」
「……椎菜……、」
「私は大バカよ。どうしてあの子をみすみす死なせてしまったの。あんなに可愛くて、私よりも魅力的な女の子だったのに。努力しないでも勉学ならなんでもできてしまう私なんかより、のうのうと生きてきた私なんかより、あの子の方がみんなを幸せにできる。みんなに勇気と希望と笑顔を与えてくれるのに。私があの子の身代わりになれば……」
敦也は自身を責め続ける香名の手を握り締める。
香名の言葉は、いつも悲しくて苦しくて切なくて、心に突き刺さる呪いの言葉だ。
「私なんかとか、そんなこと言うなよ。俺が出会った香名椎菜は、公正で尊大で素敵な人だ。なんでもできてむかつくほどの完璧超人だよ。妹を死なせてしまった、それがどうした。お前が殺したんじゃないだろ。殺したのはお前等の親だろうが。悪いのは、妹を認めなかった親だろ。お前は悪くない。でもそれは……もう終わってしまったことなんだよ。俺の親父だって、無様に死んだよ。最期は酷い死に様だった。死んだ人間のことをいつまでも考えてたら、前に進めないんだろ。お前は生きてる。お前が生きてるんだ。生きてるのは、お前の妹じゃない。妹は死にたいと思って実行に移した。お前はまだ実行に移してはいない。それは少なからず、意味のあることなんじゃないか?」
金縛りにあったように、香名は敦也の瞳をじっと見つめる。
「私としたことが……酷く取り乱してしまったわね。ごめんなさい」
香名は謝って、作り笑いを浮かべた。香名の一挙手一投足すべてが、心を鷲掴んで離さない。彼女を見ていると、心が苦しくなる。出会ってしまって良かったと思うこともあれば、そうでもなかったと思うこともある。こんなにも胸を締めつけ、抱き締めたいと思った女性は、香名椎菜が初めてだから。




