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「そうね。難関国立大学の医学部を受験したら? まあ……私にとってはあの程度のレベル、難関でもなんでもないのだけど。私の頭なら、世界一の大学に入学して首席を取ることなんて、造作もないわ。私が留学した先はそこよりもレベルが下だったけれど、ずっとトップを取り続けたわよ。みんな、たいしたことないのね。世界で二番目の大学といわれていたのに、簡単だったわ。私立はお金の問題もあるから、国立を目指して。今の勉強は疎かにしていい。なんなら……大学中退してもいいと思うけれど。医学部に入るつもりなら、今の大学をやめていいのよ。まずはセンター試験対策……かしらね」
グレードポイントアベレージ4.0の首席にして、すべてが満点の香名のレベルならば、どの大学でもトップを取るのは容易いことかもしれない。そういう要領のいい奴は、どこにでもいるものだが、香名は他の人間とは文字通りレベルが違う。雲泥の差、天と地ほどの差だ。他人と香名とを比較するのは失礼に当たる。彼女は神に愛された頭脳の持ち主。香名の話が自慢にしか聞こえない敦也は、ぶすっと膨れっ面になった。
「勉強、教えてあげるわ」
「……天才って、教えるの下手なんじゃないのか?」
「安心して。私は教えるのも天才よ。誰よりもね。あなたのレベルも、他の人のレベルも、私はすべてを瞬時に理解して、誰でも高見に上らせることができるもの。やる気のない人だって、私が教えるだけで努力家になれる。やる気を引き出してあげられるもの。誰一人として途中で投げ出さないわ。私には、その自信があるし、それらを実現させられる力がある。絶対的な信頼もある」
香名は胸に手を当てて、真剣な顔つきで言った。
凛々しく美しい香名の言動に、魅了されずにはいられない。かなり惹かれていて嫁にもらいたいと思っているのに、香名はもうすぐこの世と別れたいと言った。それほどまでに才能に恵まれていて、完璧とも言える完成度で、どうしてそんなにも自身を憎み、死を選ぶのか。
敦也は死が怖かった。死にたいと思っていたのに、死ねなかった。死が近づくと絶望感に苛まれる。まだ生きたいと思う。香名はこの世界に絶望して、己の人生に絶望している。いつか、彼女の過去の話を、詳らかに聞きたいと思った。
そのときは多分、別れのときなのではないだろうか。




