②
長話が得意なのは、年配の女性の井戸端会議を例に挙げれば、最もわかりやすいだろう。同じ話題を長々と話し込んでいるというよりかは、たくさんの話をしている。一つの話を長々と続けられなくても、女の人は大概空気の重くなる沈黙を嫌い、話を続けようとするから。心配性で気配りができる――つまり、空気を読んで行動できるのは、女性らしさの現れ。男性よりも女性の方が、心理的な状況の把握が得意なのではないだろうか。だから女性は接客などで重宝される。
同じ話題でない方が一時間、二時間と話し続けられるのだ。そういう脳のつくり。
逆に、男の人は長々と一つの話を続けられる傾向を持っている。俗にいう、オタク気質というもの。または研究者気質。纏まった話をする男の人は、話のオチを求め、自らも話のオチをつけようと考える。漫談が上手い。だから男性は営業などで重宝される。
女性は空気を読み、男性は先を読み行動に結びつける傾向。
「降りるって? まだ着いてないぞ」
「ドロップアウトの方よ。この世界とさよならしたいの」
「そうか……まだお前は、そういうこと言うのか」
楽しそうにする祖父母がいるというのに。彼等に聞こえているのではないだろうかと敦也は内心ひやひやしている。だが、祖父母は談笑していて、こちらに耳を傾けてはいなかった。香名は知っていて、そんなくだらないことを言い出す。
「がっかりしてるの? ここまではシナリオ通りなのに」
「俺が事故に遭うことも知ってたのか?」
敦也が顔を顰めて香名に問うた。すると、香名は仏頂面になって、口を尖らせた。
「それはわからなかった……。わかっていたら、デートなんてしなかった」
「そうか、ごめん」
「謝らなくてもいいけど。あなたは酷い目に遭ったんだし。謝るのは私の方よ。危険な目に遭わせて、ごめんなさい」
敦也は頬をぽりぽりとかいて、俯いた。
「いいよ、お前が悪いんじゃないし……。でも、赤信号なのに飛び出した俺も悪い。こどもを助けるためだったとはいえ、ちょっとアレだったよな。轢き逃げしていった奴は反省したし、何も不満はない。俺の人生狂ってないし、寧ろ頭を冷やすのにちょうど良かったんじゃないかと思う」
「事故に遭って良かったなんて……よく言えるわね」
「ああ、マジであり得ないよな。前までの俺だったら、あり得ねーって笑うし。犯人絶対赦さないって激昂してたかもな。俺もちょっとは成長したんだよ」




