表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/99


 退院した敦也は、早速香名の家に連れて行かれた。病み上がりの心身には、少々酷な気がする黒塗りの車に乗せられ、病院を出立しゅったつ

 退院前に容疑者が病室に来訪してくれたので裁判は開かれず、示談金を受け取って事なきを得た。彼は怖くて逃げ出したと供述し、深く詫びた。敦也は全く怒ってはいない。

 こういう車に乗ったことがなく、運転手つきの車というのも驚きでいっぱいだった。世の中には、こんなブルジョワな生活をしている人がいるのかと敦也は驚嘆きょうたんする。義理の祖父母はゆったりと寛ぎつつ、カクテルをたしなんでいた。老い先短いと感じたのが嘘のようだ。けれど、余生を楽しむために、無理をして明るく振る舞っているのかもしれない。香名は顔に似合わず、生ビールをがぶ飲みしていた。

「……どう? 私の車」

 満面の笑みを浮かべて感想を促す香名。敦也は渋い顔で唸る。

「感想を求めるなよ……。身体に響く心地の悪さだよ」

「乗ったことないでしょう。広々としていて快適だと思うけど」

「どんな金持ち……」

「私の親が遺してくれた物よ。立派でしょう。私が死んだら、全部あなたにあげるわ。家も土地も財産も。好きなように使っていいわよ」

「それはお前の祖父母のもんなんじゃ……」

「違う。全部私の親が持っていた物。あの人達もお金は持っているけど。何を勘違いしているのか、知らないけど。それから私のことは、椎菜って呼んで」

「は? 何言い出すかと思えば」

「香名家の養子――いいえ居候になるんだから、あなたは形の上では香名敦也になるの。紙の上では大守敦也でも……あなたが一人前になるまではこちらが引き取ると決めたから、あなたは香名敦也なのよ。同じ屋根の下で暮らす者同士、苗字呼びは不便でしょう。家族になった気がしないもの。私もあなたのこと、敦也って呼ぶから。いい?」

 同じ年頃の女の子に下の名前で呼ばれたことがなかったので、敦也はどぎまぎする。

「お、おう……」

「じゃあ、敦也」

「なんだよ、か……椎菜」

「私、そろそろ降りようと思ってるから」

 香名は神妙な面持ちで、そう告げた。唐突だったので、なんの話かわからなかった。

 女の人は、いきなり話が変わる。歳を取ると特にそれが顕著けんちょになっているような気がする。いつも唐突に、話題が切り替わって、ついていくのが大変だ。女の人の話がやたらと長いのは、話をどんどん切り替えて風呂敷を広げるだけ広げて畳まずに、すぐに結論をいわないからだそう。だから、女性は話し出すと止まらないのだが、簡潔な話をするのが苦手な人が多い。順序立てて話をしないからだ。勿論、女性にも理論派がおり、話をするのが上手な人もいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ