表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/99

 敦也と陽太はバカみたいに笑って、バカみたいな話をした。

「その人達に迷惑をかけたくないのなら、ちゃんとお医者さんになったらいいと思うよ。その人達にお金を出してもらって、後で稼いで返す。それを借金にしたらいい。お前への投資ということにしてもらったらいいんじゃない? 使えるものは使わなきゃ。せっかくお前のためにと色々考えてくれてるんだからさ。有効活用しちゃえばいいんだよ」

 陽太は暢気のんきに、軽い口調で言った。政治家になりたい彼は世間ずれしていて、割と狡賢ずるがしこく、卑怯な手段も取る。敦也は言葉を額面通りに受け取って、悪い方向に考えてしまった。

「そんな、利用する真似……」

 陽太は顎に手を当てて考え込んだ。それからぱっと思いついたことを言う。

「うーん。そうか……敦也は真面目だね。恩返しがしたいから、そのためにお金を貸して欲しいって言えば? さっき言ったけど、それは全部敦也の借金だよ。施しを受けたわけじゃない。貸しを作って、しっかりと後で何十倍にして返すんだ。本気でやれば、叶えられない夢じゃないと思う。お前ならできる。僕が保証するよ」

 陽太はニッと笑って、拳を突き出した。こどもの頃にやった、拳を当てる男同士の誓いの遊びを思い出して、敦也は噴き出した。拳を握り、敦也も陽太の拳に向かって拳を突き出す。

「絶対、叶えてみせる」

「その意気だよ」

 ゴツンと拳を合わせて、笑い合った。駆け抜けた青春が走馬灯のように思い起こされた。泣いた日々、辛かった日々、心に響いた言葉、心を動かされた誰そ彼の真摯しんしな姿、色々な思い出に浸る。全部がかけがえのないもので、出会った人々もかけがえのないものだった。自分を支えてくれた人々。自分をしいたげた人々。それらすべてにも感謝できる日が、きっと来る。自分を成長させてくれた人たちへの感謝の気持ちが、力となって敦也の心を激しく躍らせる。

 敦也はふと顔を動かし、窓の方を指差した。

「ほら、見ろよ……」

 暗くどんよりとしていた惨憺さんたんたる景色だった空が晴れ渡り、美しいコバルトブルーに変わっていた。蒼海のような空色が、心に深く浸透していく。あの美しい空は、敦也のこれからの未来を、キャンバスを描くのだろうか。白いキャンバスでなくても、筆があれば描いていける。

 そう。希望さえ持ち続ければ、未来は自分の色に染められる。

「綺麗な青だ」

「あの空に続く景色を、みんなで見たいね」

「もっと遠くに行きたいよな。日本だけじゃなくて、海外も飛び回りたいよな」

「世界一周したら、次は宇宙一周だね」

「夢はでかいな」

「大きい方がいいんだよ。叶えたい夢はいくつあってもいいと思うんだ。だって、素敵じゃない。僕らは夢を追えるんだよ。夢を持っていない人に羨ましがられちゃうんだからさ」

 ――素敵……か。

「そうだな。俺も羨ましがられるな。あの頃と大違いだ」

「夢を叶えられたら、次はどうしたい?」

「そうだな……。次は……」

 敦也は天井を仰ぎ見て、長々と夢を語った。陽太とこういう話ができるとは思っていなかった。陽太との仲を腐れ縁のように思っていた敦也だ。人生の話や夢の話、自らのことを掘り下げる話ができると、夢にも思わなかった。大人になったものだと敦也は切々(せつせつ)と思う。

 先の話をすれば、生きる希望を持ち続けられるようになる。それを実現させようと必死にもがいてあがくようになる。病気や怪我と戦える。心の持ちようで変わることだって、世の中にはあるのだ。病は気からなれば、健康も気からなのだ。健やかなる心でいれば、自然と健やかな身体へと変貌を遂げるだろう。人間の脳も身体も、そうなるようにできている。

 だから、敦也は生きる希望を忘れない。一筋の光が差せば、それに向かって走り出すのだ。

 ――走り出したら、止まらない。

 大守敦也は、今日から新生。まだ見ぬ遙かな高みへと、全速力で駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ